母を信じた少女の記憶 前編1
周囲一面が青々とし、道はレンガが均一に並べられた丘を運び屋はカッカッと音を鳴らしながら歩いていく。
身体の芯がブレない運び屋に一羽の鳥が止まるも、一切気にするそぶりがなく、ただひたすらに一軒の家に向かって歩いていく。
十分稼いでいると思われる、大きく、庭の広い家の前で運び屋は足を止める。
チャイムを鳴らしてすぐにドアが開かれた。
その勢いで鳥は運び屋の頬をはためく翼で撫でながら飛び去っていった。
現れた齢十にも満たないであろう、緑髪に緑色の目をした小さな少女が運び屋を見て目を輝かせている。
「はじめまして、ホップ・ハート様より依頼を受けました──」
「本当に来た! 本当に来てくれたのね! さあ、中に入って! お話ししましょう!」
運び屋は口をつぐみ、少女の案内の元、ぬいぐるみや花で可愛らしく着飾られた少女の部屋に招かれる。
少女は向かい合わせにされた二つの背の低い椅子の一つに座る。
運び屋はキャスケットを脱ぎ、胸元に添え、一礼をする。
「はじめまして。ホップ・ハート様より依頼を受けました運び屋です。ホップ・ハート様で間違いありませんね。どのような要件をご所望でしょうか」
「そうよ。あたしが依頼したの。あなたも座っていいのよ。その為に用意したのだから」
運び屋はゆっくりと椅子に座り、ホップ・ハートの方を真っ直ぐ見る。
「こんなに早く来てくれてとっても嬉しい! あたしのお願いはね、仕事で忙しくて中々会えないお母さんに、あたしは元気に過ごしているから、心配しないでお仕事頑張ってって、あたしの記憶で伝えてほしいの!」
運び屋は鞄から契約書とペンを出し、机がない為、鞄を机代わりにする。
「どのくらいの期間でしょうか」
「そうね。記憶は必要なところだけぎゅってできるの?」
「可能です」
「だったら、一ヶ月あれば十分ね!」
運び屋はペンを走らせ、ホップ・ハートに契約書を渡す。
「こちらの内容にご納得いただけましたら、ご署名をお願いします。そうすれば契約完了です」
「ごしょめいって何かしら?」
「ご自身のお名前を書いてください」
「分かったわ!」
ホップ・ハートは顔を顰め、真剣に契約書を読んだ。
「ふふ、意外と安かったのね。とっても良心的な金額ね。凄く高いと思っていたから、あたしずっとずっと我慢してお小遣いを貯めていたの。でも、こんなに安かったのならもっと早くお願いすれば良かったわ。そしたらお母さんも、もっと早く安心できたでしょうね」
ホップ・ハートは拙いながらも自身の名を書いた。
「契約成立です。では、改めまして。今からあなたはある記憶を一ヶ月分失います。私と手が触れた瞬間に記憶を失いはじめ、手が離れた段階で完全にあなたの該当記憶は私に移っています。依頼遂行後、記憶に関する質問は一切受け付けません。ご質問はございますか?」
「その記憶はちゃんとお母さんにいくのよね⁉︎」
「はい。しかしお母様次第では不可能になるかもしれません。あなたの記憶を受け取った後、あなたのお母様を探し、お母様の優先順位の低い、数多ある記憶の中で不要な一ヶ月分の記憶と引き換えに、あなたの記憶をお母様にお渡しします。もしお母様がその条件を飲めなかった際は、ホップ・ハート様に記憶を返します。依頼金も不要です」
少女は興奮気味に運び屋に寄った。
「そのお母さんの記憶、あたしにくれないかしら⁉︎ 不要な記憶だとしても、お母さんのことが知れる機会だもの。あたし、ずっとお母さんと離れていて、お母さんが忙しくしていることくらいしかあまり知らないから。だからもっと、お母さんのこと理解したい」
「かしこまりました。記憶の譲渡の際、あなたから受け取る記憶はありませんので、今回の半額で問題ありません」
「ありがとう、運び屋さん! そうだ、これ、お母さんから送られてくるお金の封筒。お母さん探しに役立ててください!」
「ありがとうございます。では、そろそろ始めさせていただきます」
「ええ! お願いするわ!」
運び屋は革手袋を外し、ホップ・ハートの小さな手と手を合わせる。ホップ・ハートの記憶が運び屋に流れ込む。
全四話です。
読まなくていいです。
なろうはあとがきがあるのがいいですね。
この作品オムニバスじゃないですか。だから続けようと思ったら一生連載できるんですよね。でもこの作品の最終回自体はもうあるんですよ。つまり一生連載したらその最終回出せないんですよね。そこがオムニバス形式の欠点ですね。一応この作品カクヨムでも連載しているので、ネタ切れかこの作品そろそろ終わらせたいなって思ったら、PVとか評価悪い方を完結させて、もう一方を連載のままにしようかなって思っています。完結させるのがなろうなら、あとがきでカクヨムでは稀に新規話あげるかもしれませんって出せますが、カクヨムの場合は近況ノートかあらすじを見ない限りは知らずに終わるんでしょうねって思ってます。最終回知った後にこの作品見るとまたなんか見方変わって面白くなるかもしれないので、どっちかは必ずいつか完結させますね。




