負けヒロインと引越し1日目
「あんなに昨日は騒がしかったのに、今日はこんなに静かなのは慣れないな」
奏は、両親達が今日の朝帰ったため自分一人になってしまった部屋の中でポツリと呟いた。
一人で住むには明らかに広すぎるリビングで、カチカチと秒針を刻む音だけが響く。
前世で一人暮らしは体験しているが時計の秒針の音だけが部屋に響いているこの状態は慣れない。自分が一人何だと思わされなんていうか空虚な気持ちになる。
何か身体を動かして誤魔化そうにも、今朝のうちに家電製品は全て届いて配置済みですることがないため奏はリビングのマットに寝転びスマホを弄る。メッセージを見ると、加藤と有馬から部屋はどんな感じなのかとか、今度遊びに行くというメッセージが届いていたので、昨日のうちに撮った自室の写真を送り、遊びに来る時は夏休みとかにしてくれよと伝えておいた。
そして、残りの友人からのメッセージを返信していき、暇になったのでツイッ◯ーでトレンドを見てみると、有名声優二人が結婚したというものや性格診断みたいなものしかなく平和だなと思う。その後はフォローしているゲームの公式アカウントや声優の公式アカウント、実況者、イラストレーターさんのツイートを眺めていると、小鳥からメッセージが届いた。
小鳥『今から、そっちに行っていいかな?昨日あんなに騒がしかったから部屋で一人だと静かすぎて寂しいんだ』
奏は小鳥のメッセージを読んで、自分と同じことを考えてるんだなと思い、特に断る理由もないのでokと送っておいた。
小鳥『じゃあ、今から行くね』
小鳥がそのメッセージを送った数分後、チャイムが鳴ったので奏は身体を起こし、玄関に向かった。
「いらっしゃい、小鳥」
奏は玄関の鍵を開け扉を開けると、花柄の白と桃色のワンピースの小鳥が居た。
「急にこんなこと言ってごめん、お邪魔するね」
そう言って小鳥は手を合わせ奏に謝りながら玄関に入る。
「気にしなくてもいい、ちょうど俺もそう思ってたところだし」
奏は自身も同じことを考えていたことを頰を掻きながら打ち明け、小鳥をリビングに案内した。
「うわぁ、色々増えてるね。冷蔵庫あれ最新の機種でしょ?真空チルドに製氷機能、野菜室しかも大容量。私の家に入りきらなかったらこっちにいれちゃおうかな」
「それは構わないが、日の短いものは止めろよ?消費期限が切れたまま放置とか笑えないからな」
「ふふっ、大丈夫大丈夫そんなに買うことはないから。もし仮に入れるとしてもジュースくらいだよ」
「そん時は、俺に飲まれても文句言うなよ?」
小鳥が奏のリビングがかなり様変わりしていて、冷蔵庫だけでなくその後も洗濯機や電子レンジ、炊飯器なども色々見ていた。
「こんなに良いものが揃ってるなら私こっちに住みたいな〜」
という冗談を口にしていたが、小鳥が自分に好意を抱いているのは分かっているので何と対応するのが正解か分からず奏は苦笑いを浮かべるしかなかった。
「そういえば、お昼はもう食べた?」
小鳥が一頻り奏の家を探検し尽くした後、二人はお茶を飲みながら談笑をしていると、小鳥が時計を見ながら奏に尋ねてきた。時間は午後1時20分なため小鳥の質問はちょうど良い時間帯だ。
「いや、まだだな。そもそも家に食料品が無いから買い物に行かないと行けない」
奏は、冷蔵庫を指差しながらまだ買い出しに行ってないと伝える。
「私もまだなんだ。なら、一緒にスーパーに行って昼ご飯を考えよう!私ここの調理器具使って料理してみたい」
「それ、小鳥の家の調理器具達が聞いたら泣くぞ?」
小鳥は奏の返答を聞いて、笑顔になり奏の手を引き買い出しに行こうと催促する。
奏は苦笑いを浮かべながら、
「準備するから、少し待ってくれ」
と言って財布などを取りに自分の部屋に向かった。




