続 負けヒロインとデート
少し遅れやした
「次は何を見るって、……いつまでそうしてるつもりだ?水瀬」
「……出来ればずっと」
「ずっとは困るんだが……」
水瀬はさっきのやりとりからずっと俺の背中に抱きついてきたままなのでそろそろ離れて欲しいと思い声を掛けたのだが、返ってきた返事を聞くに相当恥ずかしい思いをしたようで立ち直っていないようだ。
「ほら、早く立ち直れ。次は水瀬の雑貨品を選びに行くぞ」
「……着いたら教えて」
本当に重症のようだ。
そんなわけで俺は水瀬に引っ付かれ若干歩きにくさを感じながらもお目当の雑貨店にやってきた。
「着いたぞ、そろそろ立ち直れ」
俺はそう言って水瀬の頭を優しく撫でてやる。こうすれば彼女が落ち着くのは卒業式の日に知っているので有効なのは確実だ。
「……ん」
頭を撫でたおかげか、水瀬はそう返事をするとようやく俺に回していた手を解き俺の隣に並んだ。
「で?何見る。雑貨品を見るとしか言われてないから俺は何を買うのかわかんないぞ」
「とりあえず、お皿と箸とか調理器具を買おうかな。その後は必要そうだと思ったものを買う感じでいこうと思うんだけどいい?」
「それでいいと思う。じゃあ皿とかのコーナーに向かうか」
「うん」
返事をした水瀬はしれっとまた手を組んできた。
本当に彼女は、俺を落とす気のようだ、しかも、それを俺は心地よく感じている。出来ればこのまま居たい、でも俺にはそんな資格はないそう思うと胸がチクリと痛んだ。
◇
「これなんかどうだ?枚数も3枚のセットで色のバリエーションもあるし良くないか」
「おお、良いね!それは買いにしようか、大皿も買ったし、そろそろ他のコーナーに行こう」
お互いに考え方が似ているのか、食器類は基本的に同じような物ばかり選んでいたので案外すんなりと決まった。
箸、大皿、中皿、小皿、お盆、丼ぶり、フォーク、スプーン、ナイフ、コップとマグカップ、等など色々と必要そうなものは粗方決まっているので、最後に俺たちは部屋の窓にかけるカーテンを買いに向かっている。
「結構買ったなー、親が出してくれるとは言えこんなに大量に買うなんて殆どないから楽しい」
「そうだね〜。まさかカート二台を出しても足りないなんて想定外だよ」
「これをまた納めたり、付けたりすることを考えると気が滅入るな」
「まぁ、そこはうちの家族も手伝うわけだしすぐ終わるよ。そしたら次は湊川君が私の家の方も手伝ってね?」
水瀬に言われなくても、ただ引越しの手伝いを一方的にされるつもりはなかったので俺はその言葉を了承した。
「あぁ、お互いの家がすぐ終わるように頑張ろうな」
だが、この時俺は気づかなかった水瀬の発言に含まれている違和感に。その違和感が後に俺を大いに驚かせることになるとは思いもしなかった。
「じゃあ、買い出しは皆さん終わったようですし移動しますか」
「お父さん、私湊川君の家の車に乗っていい?」
「私は構わないが、湊川夫妻は大丈夫ですか?」
「良いですよ。小鳥ちゃんに奏が学校でどんな感じだったとか聞きたいので」
「そうね。何でこんな可愛い女の子が奏にラブラブなのか気になってたので構いませんよ」
「ありがとうございます!お義父様、お義母様」
「おい、こんな可愛い子が私のことをお義父さんと呼んでくれるなんて!……母さん夢みたいだ」
「ええ、本当にこのまま家の家族になってほしいくらいだわ、さっ、乗りましょう義娘との親交を深めたいわアナタ」
あーれ?俺が発言する間も無く水瀬が自然と家の車に乗ることになってるんだけど。
「何ポケッーとしての?湊川君行くよ」
「あ、あぁ今行く!」
俺は水瀬に名前を呼ばれようやく頭の整理がついていないままではあるが意識を現実に戻し、彼女に言われるがまま車に乗った。
「えっと、湊川君の出会いですか?確か…………………………………………………………………………………………………………………………とにかく私は湊川君に沢山助けてもらって落ちたわけです」
「湊川君がそんなことするなんて信じらないですか?でも、さっき言ったことは本当ですよお義父様、お義母様。こんなに素敵な人に出会えて私はとても幸せです」
「何回でも言いますよ。私は湊川君のことが大好きだって!愛してるって!」
とまぁこんな感じで水瀬から褒めちぎられ、親にいじられた俺は逃げ場のない車内で一人、今日一番の羞恥に悶えていた。




