負けヒロインと偶然
「はい、ポカ◯どうぞ」
水瀬は自販機で自分の分と俺の分を手速く買ってくると、すぐに俺がいる場所まで戻ってきてポカリを手渡してきた。
「ッツ!あぁ、ありがとう」
俺は筋肉痛の痛みを堪えながらもポカリを受け取ろうとしたタイミングで差し出されていたペットボトルが少し高い位置に行く。
「おい、水瀬俺は人参を目の前に吊るされたロバじゃないんだ。俺で遊ぶのは辞めてくれマジで筋肉痛やばいんだからな」
「ははっ、ごめんごめん。ついね?今度こそどうぞ」
水瀬はそう言って俺の手にペットボトルを置くと俺の隣に腰掛け、彼女が持っている微炭酸のマッ◯をあけるとほんの少しだけ飲む。
俺もそれに倣うように水瀬から貰ったポカ◯をあけ、かなりの量を飲み、口を離したタイミングでふぅと息をこぼす。やはりスポーツドリンクはポカ◯だな。めっちゃ美味え、アクエ◯派が周りに多いけど断然俺はこっちの方が好きだ。
「そういえば、水瀬マッ◯選んだんだな。しかもエナドリみたいな味がする方。女子ってグレープフルーツの奴が好きなイメージがあったから何か意外だな」
「確かに他の女の子はそういう味の方が好きみたいだけど、なんて言うか私口が子供舌なんだよね。だから、皆んなが好きだって言ってる物よりも男の子が好きな味の方が合うんだ」
「ヘェ〜、俺も子供舌だから苦味があるとダメなんだよ。このままだとビールが飲めるようになる気がしないな」
俺は前世から、子供舌なのは変わらずで大学の飲み会とかに参加してもカルアミルクとかカシスオレンジとか甘めの奴ばかり飲んでいた。ビールは二十歳になってすぐに手を出したが生憎俺には早かったらしくあまりの苦味に缶一つも飲みきれなかった。その後ちょくちょく試しに飲んだけど、美味しいと思うことは一度もなく、二十一になってからは飲むことはなくなった。
それ以降味覚の変化が起こる訳でもなく、死ぬまで子供舌だった。それはこっちの俺にも言えることで、ステーキよりハンバーグ、ラーメンと言ったら豚骨と相変わらずだった。まぁ、正直豚骨とかハンバーグが旨すぎるのが悪い。
「私も、ビールは駄目なんだよね。他のお酒なら何とかって感じだけど、すぐに酔っちゃうから一杯しか飲めないんだ。体に回るの早くて眠くなっちゃうから」
「あー俺も同じ、何故かアルコールが回ると眠くなるんだよな」
「泣き出したり、発狂したりする人よりはマシだけどね」
「確かに、まぁ最近は未成年に無理やり飲ませたりするような人はいないだろうから大学入って暫くは大丈夫だろ」
「うん、そうだね。そういえば湊川君はどこの大学に行くの?」
と水瀬は何故か少し寂しげな声色で俺に質問してきた。
「俺は、隣の県にある〇〇大学だ。だ「そうなの!?」うぉお、急にどうした」
俺が大学の名前を出した瞬間水瀬は声を弾ませた。
「私も〇〇大学なんだ!湊川君がいてくれて良かったー……………///って、これは、そのアレだよアレ」
「おっ、おう、取り敢えず落ち着けよ。水瀬の言いたいことは分かる知り合いが殆どいない状態だったから、俺がいると知って少し安心したんだろ?」
分かる分かる、確かに俺たちが進学する大学は偏差値が高めで県外なのもあって高校の友達がこの大学を選ぶことはほぼない。そんな中で知り合いがいると分かったら嬉しいよな。
「そう!それだよ。それ。いや〜嬉しくって言葉が急に出なかったよ。本当に凄い偶然だね県外の大学で一緒になるなんて」
「………うー、湊川君だったから嬉しいなんて///もう、完璧に……」
水瀬は、最後にポツリと何かを呟いていたが生憎こちらは疲労困憊なので小さな声など聞こえない。普段なら聞こえていると思うのでそろそろ帰って体を休めないと不味い。
「なら、これからもこうして遊べるな」
「うん、あっちに行ってもこうやって遊ぼ」
俺は無理矢理話を締めくくると、鉛のような体に鞭を打ち立ち上がり、ペットポトルに残っていたポカ◯を全部飲み干しリュックを背負いゴミ箱に向かった。
水瀬は飲みかけのペットポトルをリュックに入れ背負うと、俺の隣に並んだ。
俺達はそのままスポーツセンターを出てある程度歩くとお互いの家に向かうため別れた。
「またな」
「またね、今度はクラス会で」
だが、この時の俺は思いもしなかった。クラス会の当日あんなことになるなんて……
割と意味深な感じで終わらせましたけど、ここからは当分ほのぼのタイムなので話が暗くなることはありませんのでご安心を




