中編2/2
真夏の縁側で
目を閉じる
感じるのは
降り注ぐ炎天、蝉の鳴き声
鯉の泳ぐ音、木々のざわめき
そよ風が頬を撫でる
目を開く
次の日
佳と鈴と輝は、林間学校があるので俺は仕方なく、家の縁側で暇を潰していた
縁側の、池の鯉が泳ぐ度に水面がゆらゆらと揺れる。
とても綺麗だ
縁側がその情景をより一層引き立てる
こういうのを"粋"というのか、いや違うか。
そんな、下らないことを考えた。
そっと目を閉じた
俺はもしかしたら、下らないことを考えるのが好きなのかもしれない。
暇な時や、ぼーっとしている時に、考える。
それが楽しくて仕方が無いのだ。
何故か、無性に夢で見た場所へ、行ってみたくなった。
目を開き、広場へ向かった
太陽が睨む
時々、曖昧な夢を思い出し、場所を確認しながら進む。
あった
相変わらず、日差しは俺の細胞を痛めつけるが、そんなことを気にしてる場合ではない。
俺は森の中へと進んでいった。
森に入ってすぐは、特に何も無かったが、
好奇心でもう少し奥地に進んでみることにした。
少しずつ辺りが足場が悪くなっていのと同時に、辺りが少し暗くなる。少々の恐怖心はあったが、好奇心がそれを歪ませてしまった。
さらに進むと、木々で囲まれたトンネルのようなものがあった。
親父に言われた通り、大冒険になりそうだ。
トンネルの中へと入り、足場をしっかり確かめながら、歩いていく。
その先には、広場があった
家の近くの広場より少し小さいが
とても綺麗な広場だ、たくさんの自然がある。
その広場の一片に少し大きな湖がある
水は透き通っていて、とても綺麗だ。
その近くには、大きな木があった。
とても大きな木だ
種類はわからないが、よくインターネットで見るような、大きな木がある。
風が吹く度に音を立てて揺れる
しばらくの間、それを無言で眺めていた
風が吹く音と共に、意識を取り戻した。
なんだか体が重い、ここまで来るのに少し距離があったからか、頭がボーっとする
体を地面に倒す
炎天下、それを防ぐ大きな木。
蝉の音とともに、さわやかな風が吹く
ふと目が覚める
とりあえず今日はもう帰ろうと、立ち上がって広場の中央あたりに来た時に
おかしなことに気がついた
一人の女性が湖の近くで、黄昏ていた
20代前半くらいだろうか
長い黒髪で、とても綺麗な人だ
俺は思わず声をかけた
「あのー」
女性が振り返る
「はい」
「こんなところでどうしたのですか」
と、わけのわからないことを言う
「ふふっそれはこちらの台詞ですよ」
女性が微笑む
「あ...」
俺はここが森の奥地だということを思い出した
「どうしてこんな森の奥地にいるのかと聞きたげな顔ですね」
女性が続けていう
「私が子供の頃、よくここに来て遊んでた場所なんですよ。今日はお休みの日だから、久々に遊びに来たの」
夢で見た場所を、自分以外の人が知っている事に驚いた
俺はその女性といろいろなことを話した
名前は千鶴さんというらしい
どうやらその人は東京で高校教師をやっているらしく、
俺には到底及ばない存在だなと下らないことを考えた。
この人とは気が合う。なぜなら、自然と話したいことが沢山出てくるからだ
そして、ついに俺が勉強ができないことも、勉強しようともしないことが知られてしまった。
「鎹君、お勉強苦手なの?」
「あ...はい...」
「勉強ていうのはね、自分の可能性を広げるための道具になるの。だから将来、自分のやりたいことをやるために必要な道具を、増やすために勉強を頑張ってみてはどうかしら」
そして、続けて言った
「でもやりすぎは注意よ、目標と手段が入れ替わっちゃったら意味が無いもの」
と、彼女は微笑みながら言った
彼女の言葉は、何故かよく理解できる。
まるで、自分のことをわかっているかのように言葉を選んでくれる。
ずっと話しているうちに日が暮れてしまった。
彼女はもう少しいるというので、先に御暇させてもらった
明日も絶対こよう
そう思えた




