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想い出  作者: 鎹 連
1/5

前編


風の声も


蝉時雨の五月蝿さも


太陽の赤色も


夏の大空に抱いた夢も


何度も心に誓ったのに


今となっては思い出の一つに過ぎない


それでもたった一つ


思い出にならない


心に決めた想いがある











これは俺が体験した一夏の、不思議な体験だ


蝉が五月蝿くなる頃、一人息子の俺は父の仕事の関係で、田舎の知り合いの所へ預けられる事になった。


「すまんなぁ、急に忙しくなってしまったから、しばらく親戚の所へ行ってもらうよ」


俺は唖然とした


夏の親父は、いつも仕事で家を留守にしていたが、夏休みの間ずっとということは今年が初めてだ。


いくらなんでも急すぎだろ、と思わず突っ込みたくなるような出来事、いままでこんな出来事は無かった


「別に親父がいないのは、いつもの事だしわざわざ田舎に行かなくてもいいだろ」


「せっかくの夏休みだ、いつまでも引き篭もってないでたまには外に出てみろ、田舎はとても広いし未知の世界だ、きっとわくわくするような冒険ができるさ」


そんな子供だましのような言い分に呆れながらも、それでもいきたくないと子供のように駄々をこねた


「全く、そんなだらけた姿を見たら母さんは泣いちゃうぞ」

と親父が少し不満そうに言う


俺の母さんは、俺が生まれてすぐに、病気で亡くなっている。唯一の母さんとの思い出は生まれた時に、撮った写真1枚と形見の鈴だけだ


鈴は古ぼけていて、もう音はならない。

でも、なくさないように毎日大事にしている。


その写真には、母さんと生まれたばかりの俺を抱いている様子が写されている。親父が撮ったらしい。

でも、肝心な母さんの顔はピントが合わなくて、顔が良く見えなかった。


おいおい、なにやってんだとツッコミを入れても

「その日はカメラの調子が悪くてね、一枚撮ったら写真が撮れなくなってしまったんだ、でもいい写真だろう」とわけのわからない言い訳をする


他にも、日の出を見ようと言い出しては山頂でカメラを忘れたと言い出す始末。


結局俺の携帯電話のカメラ機能で撮らされたのを思い出す


親父はいつもそうだ。肝心なところでヘマをかく、それが俺の親父だ。


そんなことを考えていたら色々馬鹿馬鹿しく思えてきたので考えるのはやめよう、と自分に言い聞かせた


「まぁ、ここにいてもやることないしな...」

と、ぼそっと呟いた。


「お、行く気になったかい?」

少し馬鹿にした様子で言葉を投げる


「親父の事考えてたらいろいろ馬鹿らしくなったよ」とかなり馬鹿にした様子で言葉を

投げ返す


「よし、じゃあ父さんはもう仕事に行かないといけないから先に家を出るよ、地図と交通費はバックに入れといたからね、忘れ物はするなよ」


そう言い残して親父は家をあとにした


子供扱いするなよ何歳だと思ってるんだ、もう高校生になるんだぞ、と言ってもどうせ笑われるだろう、あぁ本当に馬鹿馬鹿しい。


蒸し暑い部屋の中、扇風機の風の音と騒ぐ蝉の音が響き渡る。


いつまでも、駄々をこねるわけにはいかないので、荷物を準備する。


必要なもの、必要の無い物を仕分ける

とても単純で面白みのない作業だ。


これから出発するというのに、家でダラダラしていたいという気持ちがあるのは、誰もが一度は思ったことがあるだろう。


そんな事を思い浮かべていたら、いつの間にか作業が終わっていた。不思議なものだ


溜息をついて、重い体を無理やり立ち上げさせて玄関へ少しずつ、少しずつ、歩いて行く


玄関の外に出れば騒がしい蝉の音と共に太陽が焼きつけてくる。

この暑さがより一層俺の足を重くする


幸い、最寄り駅には家から5分程度で着く。不幸中の幸いというものだろうか、いや違うなこれは


そんな下らないことを考えてる内に駅についた


が、重大な問題を発見した。


行き方が分からない


地図を見ればいいと言ってもその地図が読めないのだ。


なんてことだ、ちゃんと勉強しておけば良かった。と考えてもどうにもならないのであまり人とは関わりたくなかったけれど、

仕方なく駅員さんに聞いた


なんとか駅員さんに、行き先を、あれこれ地図を見せながら聞いて、電車を乗り継ぎ、

なんとかたどり着くことが出来た。


なんとかなるものなんだな


そんな、下らないことを考えた

処女作です

読んでいただき、本当にありがとうございます

不慣れな表現や描写で、うまく伝えられなかったかもしれないですが、できる限り努力したつもりなので、どうか暖かい目で見てやってください

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