表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夜明けの星の黙示録【R15】  作者: アレクサンドル・スケベスキ
第七章 スタルディア星王国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

139/139

第132話 本物の脅威

■地図:ドラコニス山脈(中継地点)

挿絵(By みてみん)


春の霧が薄く漂うドラコニス山脈の表層。

そこに、50程のウェアドッグが群れを成していた。


岩肌に身を伏せ、風の匂いを読み取りながら、

静かに周囲を見張っている。そのすぐ下には、

冒険者パーティ:アルゲンテアのキャンプがあった。


アルゲンテアは本来、

配送や護衛を専門とする穏健なパーティなのだが、

戦時下の今、キャンプ周辺の哨戒任務に就いていた。


とはいっても、北にはラエルノア魔法教団の援軍、

"恐るべきウッドエルフ達"が根を張っており、

東では、"黒狼の牙"が敵の最前線を担っている。


アルゲンテアの役目は、この二つの戦力と

ガルフ・バウの町を繋ぐことであった。


物資の調達と伝令。

山岳戦力の中継地点として彼らの存在は欠かせない。


だが、この任務に就いた当初、

アルゲンテアのリーダー、

ムシフは早期撤退を覚悟した。


朝だというのに、太陽の光は木々に遮られ、

視界は霧に溶けてしまう。

山は常に薄暗く、まるで昼と夜の境目のよう。


風が吹けば枝葉がざわめき、

耳障りな演奏会が勝手に始まる。

山にいる限り、聴覚は休まることがない。


定期的に響く鳥のさえずりでさえ、

"お前を狙っているぞ"と語りかけて来るようだ。


ただそこにいるだけで疲弊していくドラコニス山脈。


そこに、突発的に魔獣が現れては、

牙を剥いて襲いかかってくるのだから、

この任務がいかに厳しいか思い知らされるばかり。


だが、一週間もすればさすがに慣れて来た。

初日こそ多くの負傷者を抱え、

撤退の危機に陥ったアルゲンテアだが、

何とかキャンプの維持に成功中。


むしろこの任務は、パーティを一段上のステージへ

押し上げてくれたように思える。


そんな、厳しい環境に適応し始めた頃だった。

………事態は一変したのは。


見張りの叫びが響き、全員が一斉に視線を向ける。

霧の向こうから姿を現したのは、

ボアの群れであった。


―――――――――――――――――――

・猪(中位種):ワイルドボア Lv.35

・猪(下位種):ボア Lv.18

・猪(下位種):ボア Lv.17

・猪(下位種):ボア Lv.16

―――――――――――――――――――


パーティのメンバーは、

"肉が向こうからやって来た"と笑い声を上げる。

もはや日常の一幕だ。


しかし、このパーティ唯一の

☆☆☆「ゴールド」級冒険者ムシフだけは

群れの動きに微かな違和を感じ取っていた。


通常、嗅覚の鋭いボアたちは、

土の匂いを追いながら餌を求めるため、

首を上下に振りつつ移動を行う。


だが、目に入ったボアたちは違った。

首を振ることもなく、

ただ一直線にこちらへ向かって突っ込んで来る。


――何かに追われて逃げてきたのか?


そんな疑念がムシフの脳裏をかすめた。

その瞬間、何処からともなく男の声が響く。


「ここにも居やがったか」


驚きと共に声の方へ振り向くと、

僅か10m先、木の陰から人間族の男が姿を現した。


(――敵!? いつの間に)


同時に飛んでくる無数の矢。

ムシフは雄叫びを上げるのが精一杯だった。


「敵だ!逃げろっ!!」


山では、先に獲物を見つけた者が圧倒的優位に立つ。


先に補足されたアルゲンテアは、

敵の総数、位置も把握できておらず、

完全に後手に回っていた。


「ハハハっ!逃げろ、逃げろ!

 牡牛座(ステラ・グランデ)騎士団(・タウルス)の1,000の狩人が来たと、

 町に伝えておけ!」


一方的な狩場と化したキャンプを見下ろし、

騎士隊長のケルヴィンは高らかに笑った。


―――――――――――――――――――

・ケルヴィン

 └人間族:ケルティア人:♂:29歳

 └ケルヴィン山岳隊:隊長

―――――――――――――――――――


「ケルヴィン隊長、飛ばし過ぎっすよ」


興奮気味のケルヴィンに対して、

部下からの諫めの言葉が飛ぶ。


これまで受け続けて来た襲撃の鬱憤が、

相当溜まっていたのだろう。


手始めに"黒狼の牙"の前線を叩き潰し、

逃亡する者も執拗に追いかけて全滅させてしまった。

だが、それでは敵を引き付ける役目を果たせないので

今回はわざと何人か逃がしてやることにしたのだ。


おかげで、隊列は随分伸びてしまった。


「まぁそうだな。

 矢も少なくなってきた事だし、

 ここで補充しながら後続を待つか」


――そう言って、木にもたれ掛かったその瞬間。

突如ケルヴィンの首元に不可視の力が食い込んだ。


「!?」


抵抗する間もなく、身体がふわりと浮き上がる。

気づけば、木の枝へと吊り上げられる形になっていた。


「カッ……カハ……ッ!」


「ケルヴィン隊長!!」


部下たちが駆け寄るが、

何が起きているのかすら掴めない。

右往左往するうちに、ケルヴィンの声は細くなっていく。


不可視の力に対し、誰も成す術がなかった。


山では――

"先に獲物を見つけた者が圧倒的優位に立つ"


「タリオン隊長、いつでも行けます」


霧の中では、五十の影がすでに包囲を完成させていた。


――タリオン山岳部隊。

ラエルノア魔法教団が誇る、山の殺戮者たち。


彼らは精霊の囁きを聞き、

霧の中からでも敵を補足する。


タリオンが鳥の鳴き声を模した合図を上げると、

四方八方から一斉に矢が降り注いだ。


「敵襲だと!?」


狩る側として山を掛けていたケルヴィン山岳隊は、

一瞬の内に狩られる側へと回った。


逃げ惑い、射線を切ることだけに必死な兵士たち。

その足元を、不可視の“糸”が音も無く絡め取る。


「~~~っ!!」


糸の操者は、遥か500m先…尾根の向こう側にいた。


――ラエルノア魔法教団・第六席

封糸(ふうし)”のセリューネ。


■“封糸”のセリューネ

挿絵(By みてみん)


彼女が操る3種の"糸の魔法"が、

静かに戦場を蹂躙していく。


だが、彼女自身に遠距離の敵を把握する能力はない。

その隣に、索敵を担う盲目の少女が控えていた。


――ラエルノア魔法教団・第七席

千里眼(せんりがん)”のユミル。


■“千里眼”のユミル

挿絵(By みてみん)


「はふぅー!はふぅー!」


ユミルは"第三の目"と上位の"探知魔法"を併用し、

山の地形すら透かして敵の位置を正確に捉えていた。


朧げな視界の中で、自分の隊が壊滅していく

様を見届けるケルヴィン。


やがてその視界もブラックアウトしていく。


意識が途切れ、力の抜けた身体が地面へ落ちると、

ドラコニス山脈は再び静寂を取り戻した。


「タリオン隊長…」

「ああ…」


タリオン山岳部隊は死体を一瞥しただけで、

既に東の気配へと注意を移していた。


精霊達が怯えている。

その戦慄が、風よりも早く伝わって来る。


日々、生存競争を繰り広げる自然界の脅威達でさえ、

今は争いなど忘れたかのように道を開けていく。


まもなく、ここにやって来るのは"本物の脅威"。

――射手座騎士隊(ステラ・サジタリウス)


タリオンは敵を侮ってもいないし、

大戦果を夢見るほど慢心もしていない。

冷静に状況を見極め、正しく敵を把握していた。


勝てる見込みが薄いのであれば、

こちら側の"怪物"をぶつけるまでだ。


そう判断したタリオンは、静かに命じた。


「……ペンドラゴンを呼べ」

ブクマ・評価いただけると大変助かります(>ㅅ<)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ