第105話 与えねば返らぬ
■イーリア
初めて見る銀髪の髪…それに、絶世の美女だ。
俺は息子を惜しみ無くフル勃起させながら、
口をパクパクさせて硬直している女たちに近づいて行った。
すると、女は慌てた様子ですぐにフードを被り、
その素顔を隠してしまった。
(なんだ。やっぱり賊なのか?)
”解析”
■ステータス:イーリア
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名前:イーリア・アレオス・スタルディア Lv.47
HP:112 / 870 MP:316 / 520
種類:亜人類 種族:人間 種別:ノルド
性別:♀ 年齢:16歳 身長:160cm
ジョブ:
・◆『公爵』
・「軍師」 Lv.9
・学生 Lv.30
スキル:
・◆任命:『近衛騎士』(28)
・◆任命:男爵(10)
・◆任命:『侍従』(10)
・「号令」
・修得
称号:
・『王女』
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(ん?………王女?)
「た…助けてください!」
いきなり助けを求められてしまった。
そう言えば2人瀕死となっているんだったな。
というかこいつらフードで顔を隠しているが
全員女っぽいな。なんでこんな場所に…
色々聞きたいことがあるが、
後回しにするしかないようだ。
ひとまず、瀕死となっている2人の状態を確認する。
■ステータス:オリヴィア
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名前:オリヴィア Lv.59
HP:32 / 1290 MP:4 / 600
種類:亜人類 種族:人間 種別:ノルド
性別:♀ 年齢:17歳 身長:165cm
ジョブ:
・◆『近衛騎士』
・「ヴァルキリー」 Lv.25
・学生 Lv.28
スキル:
・◆任命:『従士』(5)
・「無縫」
・修得
称号:
・『剣豪』
・《魔輝眼》
状態:
・▽気絶
・▽呪い
・▽『出血:重度』
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■ステータス:フィーラ
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名前:フィーラ Lv.55
HP:28 / 800 MP:319 / 850
種類:亜人類 種族:人間 種別:ノルド
性別:♀ 年齢:16歳 身長:150cm
ジョブ:
・◆『近衛騎士』
・「ヴァルキリー」 Lv.5
・学生 Lv.30
スキル:
・◆任命:『従士』(5)
・「無縫」
・修得
称号:
・『導杖』
状態:
・▽気絶
・▽「呪い:上級」
・▽「出血:中度」
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だいぶまずい状況だが、まだ生きているな。
"近衛騎士"か…任命付きのジョブを持っている様だし、
こいつらも只者じゃなさそうだ。
「癒しの魔法」
俺は二重奏で癒しの魔法を両手に展開すると、
2人にかざした。
これで多少マシになるだろう。
しかし、重傷で呪いにも掛かっている。
俺の手には負えんかもしれん。
完治するにはイヴの力が必要だ。
癒しの魔法を掛けながら、チラッと馬車の方を見る。
馬はやられ、車輪も破損している様子。
馬車はここに捨てていくしかないな。
"収納"
空間に別の空間が現れる。
アイテムボックスへの接続口だ。
「移動するぞ。
動ける二人は必要なものをここに収納してくれ」
「これは…一体…」
2人が驚く。当然の反応だ。
だが、説明している時間が惜しい。
「早くしろ!」
つい強い口調になってしまった。
俺は今両手で"癒しの魔法"を掛けており、
さらに"空間魔法"まで展開している。
これで三重奏。これ以上魔法は展開できないのだ。
探知魔法を切って、
この場所で長居するのは俺でも厳しい。
説明不足なのは分かっている。許してくれ。
促されるままに、動ける2人は
馬車の荷台からアイテムボックスへ移し始めた。
暫くすると、フィーラの方が目を覚ます。
「…暖かい…?………あなたは?」
よし、1人は起きたな。
「俺はカナンのアレク。助けに来たぞ」
大嘘である。
全員やっちまおうとしていたことは内緒である。
"カナン"というワードに
イーリアとヨルの2人は一瞬だけ動きを止めた。
だが、すぐにアイテムの移動作業に戻る。
「あの…収納終わりました」
「よし」
”癒しの魔法”をかけ続けているが、
オリヴィアの方は大分ヤバい。
状態は▽「出血:中度」まで抑えたが、
これ以上良くならない。
イヴのスキル、"治療"が必要だ。
急いでイヴの元へ移動するか。
「こっちの女は俺では治せん。
移動するぞ」
"ワープ"
こうして俺は、オリヴィアを担ぎながら、
ラエルノア魔法教団へと繋がる空間を開いた。
「付いて来い」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「あの…ここは…?」
「ラエルノア魔法教団だ」
短く答え、3人とも驚く。
当然だ。その驚きはよくわかる。
だが、今は説明する時間が惜しいのだ。
「おーい!イヴ―!いるかー!!」
俺はイヴの名を叫びながら、
ラエルノアが住む城、
リュミエイル城へとズカズカと乗り込んでいった。
「なんじゃまた来よったか。
うっさいのぉー」
ラエルノアがダルそうに姿を現す。
その隣にはイヴの姿もあった。
「ちょっと緊急事態でな。治癒と解呪を頼む」
「…っ…はい!!」
イヴが巫女鈴を取り出す。これでもう安心。
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★ 巫女鈴 【聖鈴・神楽】
└外練+100 / 魔法+40 / ☆魔法(音)+80 / ★超回復+100
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オリヴィアをイヴに預けてしばらくすると、
彼女の指先が僅かに動き、ゆっくりと瞼が開く。
「ここは……ヴァルハラなのか…?」
その声を聞いた瞬間、イーリアたちは顔を見合わせ、
安堵と喜びが同時に弾けた。
そして興奮のまま、イヴへ礼を述べ始める。
そんな様子を横目に、ラエルノアが静かに問いかけて来た。
「ほいで、どうしたんじゃ、こ奴らは?」
チラッとイーリアの方を見る。
最初が肝心だ。
ここで運命的な出会いを演出すれば、
彼女との距離は一気に縮まるだろう。
俺はイーリアに聞こえるよう、
ちょっぴり大きい声で報告した。
「うむ。
胸騒ぎに導かれるまま森を彷徨っていたのだが…
そこで魔獣に襲われていた彼女達と
運命的な出会いを果たしちまってな。
…今思えば乙女の危機を感じ取っていたんだな」
「嘘つけ」
一瞬で看破されたか。さすがはラエルノアだ。
なんと広い視野、なんという深い洞察か。
すると、今度はイーリアの方からラエルノアへ問いかけた。
「あの………あなた様は…もしや、
【聖杖】"偉大なる"ラエルノア様でしょうか」
あ~っと!!イーリアさんこれは良くない。
無暗にラエルノアをおだてるのは悪手だ。
図に乗ってしまう。
「うむ。その通りじゃが?」
ラエルノアはドヤ顔で答える。
すごく偉そう。
「その銀の髪…もしやスタルディア王家の者か?」
「…っ!!」
そう返されたイーリアはとても驚いた様子で、
言葉が喉に詰まったように沈黙する。
仲間達と目配せをして、言葉のない会話をしているようだった。
そして覚悟を決めたのだろう。
全員がフードを取り、その素顔を露わにした。
■オリヴィア
■フィーラ
■ヨル
(おお、全員美人じゃないか)
「はい。
私の名はイーリア・アレオス・スタルディア。
スタルディア星王国の王女…でした。
実はお話したい事があるのです―――」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ティーカップの底が見える頃、
イーリアの話に一区切りついた。
そして俺達はスタルディアの政変を知った。
正直、歴史や人種間の敵対関係、
細かな政治の話は半分も理解できなかったのだが、
ブルスター家ってのがイーリア達の敵であることは掴めた。
これでカナンは、東だけでなく、
北にまで不安定な情勢に挟まれたことになる。
………はぁ。
東のロザリの難民の対応で手いっぱいなのに、
今度は北からも押し寄せるのか。
対処しきれるだろうか?正直頭が痛い。
それにしてもロザリの援軍か。
以前、ラエルノアが予想していた事が現実となったらしい。
【叡聖】ルシエン・バエルってやつは
これだけ金星を引っ搔き回して何がしたいんだ?
「それで…ラエルノア様、お願いがございます。
ブルスター家を討つため、
どうかお力をお貸しいただけないでしょうか」
おお、なるほど。
ラエルノアに頼むとは、実に賢い選択だ。
このバケモノがひと振り杖をかざすだけで、
一瞬で片がつきそうだ。
しかし、強大な相手にたった4人で挑むとは…
イーリア達は中々強気だな。
そんなイーリア達の姿勢に感心していると、
ラエルノアは紅茶をグイッと飲み干し、
静かに口を開いた。
「お願いする順序も相手も逆じゃろうが、小娘」
うわっ。
毒づいて突き放したよ。ひでぇ。
「お主に起こった事には同情するわい。
ほうじゃがのぅ、"与えねば返らぬ"
それがここのルールじゃ。例外はない」
ラエルノアだけは例外だろうな。
そうでなければタリオン先輩が報われない。
ああ、見ろ!なんてことだ!
イーリアの顔がどんどん暗くなっていく。
気にしないで!
ラエルノアはこういう奴だからっ!
「確かに…私たちは
魔法教団へ何も与えることが出来ません。
厚かましいお願いでした。申し訳ありません。
それでその…お願いする相手が逆だというのは、
一体どういうことなのでしょうか…?」
「何じゃ。アレクから聞いておらんのか?」
そう言って、ラエルノアは俺を見てニヤリと笑った。
「へ?」
「このアホ面……アレクはな、
ウチとカナンとの軍事同盟
―――カナン星約機構の盟主じゃ」
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