1−27/塗り固められたものは
何もかもが万全、とはいかないものです。
『オイオイ、どうしたどうした? 十二宮殺しはこんなもんか、なァ!』
武道場を背にして繰り広げられる、規格外同士の一騎打ち。
傭兵のような雰囲気を身にまとうその男が、心底楽しそうな声と共に銃弾を掃射する。離れた場所から放たれたはずのそれらは、しかし次の瞬間には坂本さんの周囲に着弾し、小規模なクレーターを作り上げていた。
およそ銃弾とは思えない威力のそれが直撃すれば、人間など粉微塵になることは疑いようもない。いくら坂本さんといえど、無事では済まされないことは誰の目にも明らかだ。
『そんなもんを名乗った覚えはない』
——が。
時間にして、およそ刹那にも満たない空白ののち。五体満足の坂本さんが、立ち込める砂煙を突っ切って現れる。
……いや、「現れていた」という表現の方が的確かもしれない。
姿が見えた時にはもう、坂本さんは襲撃者の男に蹴りを入れていたのだから。
決して届くはずのない距離からの蹴り。しかしそれは、武道場にて先輩へと放った拳と同じように、無色透明の衝撃波によって即席の飛び道具と化す。
直線上にあるものを吹き飛ばす、迫り来る壁がごとき不可視の一撃。それは男に反撃の暇を与えず、一瞬のうちに制圧を完了しているはずだった。
『おう、今のはよかったぜ。ここまで危なかったのは久しぶりだ。……でもな、まだまだ本気じゃねえんだろ、アンタ? 半端な気遣いなんかはいらねぇよ』
——だからこそ、この結果は不可解だ。
文字通り無傷のまま、画面の向こうでおどけたような口を利く男。悠然と佇むその姿を前に、坂本さんがぶらりと垂らした拳を握りこむ。
僕の知る限り、初見であの攻撃を躱せた者は数える程もいない。仮に誰かから情報を受け取っていたのだとしても、そう簡単に処理できるような攻撃ではないはずだ。
十二宮か、あるいはそれに比する能力か。いずれにせよ、坂本さんの一撃をいなした時点で、相当な実力者であることは疑いようもない。
『何もお前を気遣ってるわけじゃない。修繕費はこっちの負担になるんでな——それよりも、お前たちの目的は何だ? あんなものを持ち出してどうするつもりだ。何処から情報を得たのかは知らんが、悪いことは言わん、やめておけ。アレはパンドラの箱だ』
『……なるほどな。何を考えているのかと思えば、そんなくだらねぇことだったとは。十二宮殺しの名が泣くぞ?』
らしくない抽象的な言葉は、それが重要であるからこそのものか。
そこに秘された真意を悟ったように、男がニヤリと口元を釣り上げる。
動画だと分かっていても射竦められるほどの、猛禽類のごとき獰猛な眼光。小揺るぎもせずそれを跳ね返す坂本さんに、男は笑みをより深くする。
『こっちの目的を即座に見破るその眼は流石だが、オレの役目はあくまでアンタの足止めだ。ひっ捕らえようと拷問しようと、悪ぃがオレは役目以上の事は知らないんでね』
『……ほお。足止め用の駒が言う台詞とは思えんな。俺がお前を無視して走り出したらどうするつもりだ?』
『出来ないことは言うもんじゃねぇよ。アンタが今するべきはただ一つ、オレを速攻で倒して、うちのボスに話を聞くことだ。こんなことをしてる間にも、計画は抜かりなく進んでるぞ?』
「計画」の話を臆面もなく口に出すのは、そこに絶対の自信があるからなのか。
揺さぶりにも動じることなく、ニヤついた表情のまま坂本さんを煽り返す男。本気を引き出そうとする視線が、感情の見えない坂本さんのそれと交錯する。
『……いいだろう、頭脳労働は俺の担当じゃない。殴り合いの方がよっぽど有意義だ』
たった数秒。
呼吸さえ憚られるような静寂が、極限の緊張感を伴って画面の向こうから押し寄せる。息を吐き出した坂本さんが、諦めたように首をぐるりと回す。
——そして、その直後。
呟いた言葉すらも置き去りに、坂本さんが動いた。
カメラを振り切る速度で動いた坂本さんの通り道に、もうもうと砂煙が立ち上る。男が乱射する銃弾によって巻き上げられたそれらは、ただのひとつたりとも命中することなく、砂塵とクレーターだけを無尽蔵に増やしていく。
『……ッ』
何かに気づいたかのように、砂塵の向こうで悪態をつく男。微かに聞こえるその声は、己の失策を自覚したからこそか。
しかし、もう遅い。
瞬く間に出来上がったのは、接敵する二人と外界とを隔てる砂煙の壁。映像を一色に染め上げるほどに分厚い砂のカーテンは、音声以外の一切の情報を遮断する。
人為的に作り出された砂嵐の向こう側で、鋭い炸裂音が響く。一拍遅れて、男の銃がそれを突き破って飛び出してきた。
『——はァ!』
普段はまず聞くことのない、気迫に満ちた坂本さんの声。
銃声にも負けないほどの咆吼と繰り出される一撃が、立ち込める砂塵に穴を開ける。神速の格闘戦の末、そこから吹き飛ばされて姿を現す男は、今度こそ痛恨の一撃を貰ったことを示すかのように地を転がっていた。
追撃に備えるためか、多少ふらつきながらもすぐさま身体を起こす男。力なく垂れ下がるその右腕を見るに、かなり大きな一撃が入ったことは疑いようもない。
『は——ッ、ハハハハハハハ! そう、それでこそだ! イイねイイねぇ、もっと見せてくれ! オレにアンタの強さを教えてくれ! 』
——が。
痛打を受けたにも拘らず、否、それを待ち望んでいたかのように。
歓喜の表情を浮かべ、男はなおも片腕だけの拳を構える。瞳に宿る戦意はまったくもって衰えを見せず、ゆえにその姿は狂戦士と呼ぶ他にない。
徐々に晴れていく砂塵と、その中で睨み合う二人の男たち。限界まで高まった緊張感が再度爆発するまで、もう幾許も無い。
数秒か、あるいはそれより短い時間のうちに、彼らは再び激突する。それが前にも増して苛烈なものになることは、誰の目にも明らかだったはずだ。
……だからこそ。
事態の決着、その終わり方は拍子抜けそのものだった。
『……ハ。どうやら、アンタの軍は思ったより優秀らしいな。随分と速い仕事もあったもんだ』
今まさに、臨界点に達しようとしていた闘気。それが、たった一瞬にして泡と消える。
何らかの通信を受けたらしき男が、一転して分かりやすいほどの渋面を作る。恐ろしいほどに白けたような言葉は、今までの昂ぶりなど微塵も感じさせない、仕事人としての口調そのものだ。
『じゃあな。次があるなら、その時はお互いに手加減抜きだ』
冷え切った視線と、皮肉のこもった捨て台詞をこちらに向けて。
誰も彼もが、男の一挙手一投足に意識を尖らせる中。彼はあくまでなんともない態度を崩さぬまま、自身の腰に手を伸ばす。
『——伏せろ!』
響き渡る坂本さんの警告。身体の芯を大きく揺さぶるそれに、多くの生徒がわけも分からぬまま身を屈め——
直後。画面の向こうに広がる光景が、白一色に埋め尽くされる。
閃光と轟音が咲き乱れ、映像が地震でも起こったかのように揺れ動く。右も左も分からないような状況の中、それでもスマホを取り落とさなかったのは、紛れもなく撮影者の執念の賜物だと言っていい。
男が投げ放った、スタングレネードとでも呼ぶべき撤退用の道具。それによって齎された混乱が収束するころには、男の姿はとっくに消えたあとだった。
『……逃げ足の速さならお前の勝ちだよ、ったく』
苦り切った表情で、坂本さんが小さく呟く。
あれだけ所狭しと出現していた、幻影の兵士たち。一山いくらで居たはずのそれらは全て、男の撤退とともに消失していた。
混乱からようやく復帰した生徒たちが、困惑気味に周囲を見回す。中には気が動転したのか起き上がれない生徒もいるものの、暴動が起こっていないのはさすがと言うべきだろう。もう数分もしないうちに自分を取り戻すことは、こうして映像を見ている限りでも容易に推測できる。
……え、その後?
そのあとの映像はまあ、特に語るまでもない、というか。
立ち尽くしていた生徒たちに坂本さんが指示を出し、樋笠先輩が先頭に立って救護活動を開始。その様子がしばらく映されたのち、唐突に映像が切れる。
動かずに撮影を続けるくらいなら、自分も救護活動に加わったほうがいいと思ったんだろう。聞いた話では精力的に動いていたらしいし、実に彼女らしいと納得できる判断だ。
……というより、僕としては無理をしない程度にやってくれればよかったんだけど。まさかあの超次元戦闘を余すところなく映像に収めてくるなんて思いもしなかったというか、ここまでくればもう立派な資料のレベルだ。いや、無事だったから別によかったんだけどさ。
「そろそろかな」
集合時刻まで残り10分。いくら軍本部の中とはいえ、他に誰もいないこの部屋で煌々と輝くパソコンの画面は、見ようによっては少々不気味に映る。
もちろん、この状況でネットの世界に浸れるほど図太い神経はしていない。むしろ、事実としては真逆もいいところだ。
すべてはこれから待ち受ける困難を前にして、少しでも生存率を上げたいがため。なんとか突破口を作りたいがために、必死にカンニングに勤しんでいる最中なのである。
『奴らは最短の時間で最大の戦果を挙げている。となれば、必然的にこちらの手の内も読まれているだろう。俺のような目立つ戦力なら、完封する手立てを整えていても不思議じゃない』
実際に俺は何もできんわけだしな。記憶の中の坂本さんが、疲れた顔でそう漏らす。
その評価が間違いではないことは、僕も痛いほどに理解しているつもりだ。まさかこんな形で、坂本さんという大きな戦力が封じられることになるとは思いもしなかった。
仮に無理を押して出たとしても、それすら計算され、あっさりと攻略される可能性は非常に高い。その意識をこちらに植え付けた時点で、向こうは戦略的に絶大なアドバンテージを得られている。
したがって、今回の攻略法はひとつ。
彼らの知識に存在しない、その上何が起こっても対処できるだけの戦力を用意すること。この無理難題をクリアすることが、この事件における唯一の突破口、というわけだ。
「まあ、そんなに簡単にはいかないんだけど」
しかし。ここで、雨宮俊の存在がネックとなってくる。
襲撃者の男は、何故か彼に並々ならぬ関心を向けている。これほど迂遠な手段を取っていることも鑑みれば、彼に会おうとしている意思それ自体は嘘ではない、と考えていい。
でも、問題はそのあとだ。顔を合わせ、約束の物を渡して穏やかに解散、なんてことにはなるはずがない。
あの男の真の目的、それには俊との交戦も必ずや含まれているはずだ。その真意が何であれ、単なる小競り合い以上の戦闘になることは避けられない。そしてその場合、彼の戦闘能力が大きな足枷になってくる。
もはや周知の通り、彼と例の男の戦力差は勝てるか否かを議論できる次元ですらない。撤退すら難しい、そう捉えるのが最も自然だ。どれだけ彼に天賦の才があるとはいえ、5分持ったら奇跡だと考えるべきだろう。
「……だいたい、なんで俊も出て行こうとするんだか」
ひとりでに溢れた不満に遅れて気づき、慌てて口を閉ざす。
分かっている。いくらキーマンといえど、彼個人の意思でどうにかなるはずがない。
判断を下したのが俊自身であっても、ゴーサインを出したのは坂本さんなのだ。となれば、そこには確かな意味がある。
例えば情報。俊が出ていかないなら、あの男が相応の手を打ってくることは想像に難くない。
それがこちらの殲滅という強硬策か、待ち合わせ場所からの脱出という穏健な手段なのかは分からない。けれど、情報を引き出せる可能性が下がることは確実だ。
替え玉や誤魔化しといった手段も、幻術系統の強力な能力者が向こうにいる以上対策される可能性が高い。認めたくはないけど、俊本人をあの男と接触させるのが一番の策だ。
よって、結論そのいち。俊の参加は決定事項だ。そして彼の生存率を少しでも高めるためには、実力があり、なおかつ対策が立てられていない戦力を調達する必要がある。
……とまあ、ここまでつらつらと述べ立てたものの。
実のところ、この問題には既に決着がついているのである。本人と、あえて加えるならば坂本さんが納得している以上、そのほかの問題点など微々たるものだ。
最大のネックとなる助っ人も、とびきり頼りになる人を発注済みだ。僕の個人的な感情を除けば、問題点は比較的少ないといっていい。
——でも。
あの男と接触するにあたって、忘れてはいけない大きな壁がもうひとつ。
おそらくはあの謎の男の腹心レベルの立ち位置におり、なおかつ単体でも相当の戦闘力を有している男。何より僕が、こうして頭を悩ませているそもそもの元凶となる存在。
……もちろん、今更改めて言うまでもない。例のあの男、傭兵のような雰囲気を身にまとった戦闘狂のことだ。
能力的には例の男よりも危険度が高く、なおかつ好戦的で実力も高い。そのくせ任務はきっちり遂行するあたり、こちらからすれば厄介の塊のような存在だ。
ふざけた格好にふざけた言動、極め付けにふざけた戦闘能力。あれを相手に優位に立ち回れる人間など、どう見積もっても坂本さんくらいのものだろう。こんな人間と一対一で戦えというのだから、命がいくらあってもたまったもんじゃない。
…………あえて。敢えて、もう一度繰り返そう。
今回の任務において、他でもない僕が一対一で戦わなければならない相手。それが、あのバトルジャンキー氏なのである。
冷静に考えてみてほしい。どう考えても勝ち目ないよね、僕。なにこれバグ?
『奴は生粋の戦闘狂だ。放置すれば甚大な被害が出るが、戦闘中は一箇所に釘付けにできる。興味を引けて時間稼ぎもできる人員をぶつけるのが最適ってわけだな。つまり、お前だ』
平然と鬼のような指示を下した坂本さんの顔を、僕は永劫忘れることはないと断言できる。
確かに僕の能力なら、あの戦闘狂の興味を引くことは可能だ。時間稼ぎもやろうと思えば可能だろう。だけど、それを考慮に入れても、デメリットも勝算も絶望的すぎる。
なまじ殺すつもりでの戦いを知っているだけに、余計に実力差が肌でわかるのだからタチが悪い。この状況に比べれば、まだ俊の方が生温いと思えるくらいだ。
あるいは。そのデメリットを飲まなければならないほどの問題が、また別のところに存在しているのか。
「……まあ、仕方ないか」
半ば投げやりに呟きながら、モニタの電源を切って立ち上がる。
俊の参加がそうであるように、僕の役割も決まったことだ。いくら駄々を捏ねてもどうにもならないのだから、もはや何周かして諦めの境地に至ってしまうのも仕方がない。
僕の「お願い」通りに香純がスマホで撮影していたのは、昼間の戦闘の一部始終。それを滝川さんができる限り見易く調整したものが、今まで僕が見ていたこの映像だ。
本来なら監視カメラの類も全部ダメになっていたのだし、この映像があるだけでもアドバンテージには天地ほどの差がある。正直レベルが違いすぎて参考にならなかったけど、それでも何もないよりはマシなはずだ。
二人には後でお礼を言わなければならないだろう。敵と当たる上で、情報の有無は大きく生存率を左右する。か細い光明でも、実行に移せるなら選ばない手はない。
というわけで、結論そのに。あの戦闘狂を単騎で足止めすること、それが僕の役割だ。選択権も拒否権もないとか、無事に帰ってこれたら大金をせびっても許されるレベルだと思う。
「……うわ、時間」
考え事に意識を割かれている間にも、着実に残り時間は減少していた。約束までのタイムリミットは、もう残り8分を切っている。
装備を点検して部屋を飛び出し、依然として人通りの多いエントランスを駆け抜ける。充分に時間の余裕はあるとはいえ、重要な作戦である以上否が応にも気は焦ってしまう。
——だから、なのだろうか。
唐突に現れた彼女の姿に、直前まで気付くことができなかったのは。
「魚見くん、話があります」
「ごめん、今は急ぐんだ。話なら後で聞くよ」
僕を待ち伏せていたと思しき水無坂さんが、突然僕の行く手を塞ぐ。
あわや衝突というところを寸前で回避しても、彼女の能力を前に逃げ切れるはずもない。あっさりと正面に回り込んだ彼女が、決意を宿した瞳をこちらに向ける。
「私も同行させてください」
端的に、しかし断ることを許さないような強さで。
平静を装う僕に構うことなく、彼女の「お願い」が言い放たれる。それは何人たりとも立ち入れないような、強靭な意志を裡に秘めたものだ。
まっすぐに僕を射竦める、水無坂さんの澄みきった瞳。たとえ何を言われようと折れないであろう硬い意志が、そこには確かに内包されていた。
「ダメだ。今回は幾ら何でも危険すぎる。それに、これ以上君に迷惑はかけられない。あくまで学生の君を、こんなことに巻き込みたくないんだ」
だからこそ。僕はこの場で、はっきりと否定しなければならない。
氷のようなその眼を前にして、真正面からそう言い放つ。
本来守られるべき人間である彼女を、僕は既に一度危険に晒した。それがいくら最善手だったとはいえ、悔恨は消えずに残り続ける。
今回はうまくいった。でも、その次もうまくいくとは限らない。もしかしたら、あの成功が最初で最後の一回なのかもしれない。
もしものことがあったとすれば、僕は今度こそ、自分を許せなくなるだろう。ずっと後悔に苛まれ、下した判断を恨むだろう。タイムマシンでも存在しない限り、結果を書き換えることは不可能なのだから。
「なら、雨宮くんはどうなんですか? 樋笠さんは? 彼らは守られるべき学生ではない、そう言いたいんですか?」
「俊は事情が違う。今回に限って言えば、彼は参加する義務があるんだ。先輩にも、僕たちとは違う正当な理由がある」
「っ——でも、それなら」
痛いところを突かれ、とっさにそれらしい文言を捻り出す。その言葉に僅かに言い淀んだ隙を見逃さず、水無坂さんの脇をすり抜けた。
「……ごめん、水無坂さん。また後で」
こうして取り繕うのが上手くなったあたり、僕もそれなりの場数を踏んできたということか。慣れれば慣れるほどに自己嫌悪の感覚は増していくのだから、まったく皮肉としか言いようがない。
今の一件で、僕は彼女から恨まれることになるだろう。普段ならもう少しマシな言い訳ができたのかもしれないけど、あいにくと今の僕には時間も心の余裕もない。
「…………」
たったこれだけのことすら、満足にこなすことができない。そんな自分に対する失望が、自嘲となって口元から溢れてくる。
わざわざ言葉にする必要もない。僕は水無坂さんを止めたいがために、俊と先輩の置かれている立場を利用したのだ。
……本来なら。彼らも水無坂さんと変わることなく、守られる側の立場であるはずなのに。
「……ああ、本当に」
我ながら最悪の気分だ、まったく。
次回、作戦開始。
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