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ポータルズ ー 最弱魔法を育てよう -  作者: 空知音(旧 孤雲)
第10シーズン 奴隷世界スレッジ編
452/927

第450話 奴隷世界編 第64話 終わりと始まり(2)  

 勇者加藤と女王畑山が……。

 これからのスレッジ世界ではギルドも活躍するようです。



「ど、どうなってる!?」


 加藤は自分が空に浮いてるのを知り、驚きの声を上げた。

 足元には毛皮が敷いてあり、置かれたテーブルの上には冷えたグラスと生ハムやフルーツ、パンとチーズが置かれている。

 目の前にあるソファーには、女王畑山が座っていた。


「ああ、これね、ボーに頼んでおいたのよ」


「お、おい、あいつ一体なにやってる……」


「心配したのよ」


 畑山の声が、急にしんみりしたものになる。


「えっ?」


「あんたが行く先もはっきりしないポータルをくぐったって聞いて」


「ああ、ボーが一緒だから、どの世界に行ったとしても帰ってこれるだろ」


「馬鹿っ!

 それでも心配なものは心配なの!」


 畑山がその体を加藤にぶつける。

 加藤は、反射的に彼女を抱きしめた。


「ごめん、心配かけちゃったね」


「こちらに来てから何があったか、話してくれるんでしょ?」


「あ、ああ」


 点魔法で造られた箱の中で、二人はテーブルをはさんで座り、上等な食べものと飲みものに舌鼓を打った。


「そう、あなたらしいわね。

 ところで、その助けようとしたエンデって人には会えたの?」


「あ、ああ、城にいたみたいだ」


「ふぅん……まさか、さっきいた女の中に、その人がいるなんてことはないわね?」

 

「あ、ああ……」


 加藤には、そう答える以外に道がなかった。

 

「こっちに来て」


 畑山が加藤の手を取り、彼をソファーに誘導する。


「最高の座り心地ね。

 ボーって、こういうところは手を抜かないわよね」


 二人が座るソファーからは、月明かりに照らされた夜の海が見下ろせた。

 

「あいつも、ルルさんとのことで、こういう技を使えって言いたいよね。

 それを――」


 加藤が何か言いかけたが、その口を畑山のそれが塞いだ。

 スレッジ世界に浮かぶ大きな銀色の三日月が、無言で熱い二人を見おろしていた。


 ◇


 アリストの冒険者パーティ『ハピィフェロー』がスレッジ世界にやって来た。

 彼らが訪れたのは、ドワーフ皇国王城だ。


「シロー、元気そうだな!」


『ハピィフェロー』のリーダー、ブレットが手を差しだす。

 俺はその手をぐっと握りかえした。


「遥々来てくれてありがとう」


「ガハハハ!

 またでかい事やらかしたな!」


 大男マックが俺の背中をバンバン叩く。

 彼もブレットたちと一緒にこの世界へ来たのだ。


「今回は大事な任務があるからな。

 ところで、デデノたちは準備ができてるか?」


 マックが言っているのは、ルルと一緒にスレッジ世界へやってきた獣人冒険者のことだ。


「ええ、全員集めてあります」


 俺は彼らを城の一室に案内した。


 ◇


 その部屋には、デデノたち冒険者が四人と初老の男が二人いた。

 一人はドワーフで、俺が知っている顔だ。


「シロー、こちらの二人は?」


 ブレットが初老の二人を指さす。 

 俺が紹介する前に、男たちが口を開いた。


「ギルドの方々ですな。

 初にお目にかかる。

 ワシはセルゲじゃ」 

「同じく初めましてだな。

 私はミャートと申す」


 名前を聞き、もう一人の素性も分かった。

 なるほど、そういう事か。


「シロー、このやけに貫禄がある爺さんたちは誰だ?」


 ブレットの質問に俺が答える前に、部屋奥の扉が開き、三人の竜人護衛と侍女ローリィを連れ、女王シリルが入ってきた。


「長旅ご苦労であった」


 シリルはそれだけ言うと、すっと長テーブルの奥に座った。

 彼女は、すでに女王としての威厳を身にまとっている。


「シ、シ、シロー、こちらの方は?」


 相変わらずブレットは女性の前で弱くなるな。


「ドワーフ皇国の女王陛下だよ」


「げっ!」


 相手が誰か分かった『ハピィフェロー』の面々が席を立ち、膝を着こうとする。


「そのままでよい。

 この度は、父上たちに連絡があるそうだな」


 シリルがマックの方へ鷹揚に頷く。


「はい、ギルド本部長ミランダ様からこれを預かっております」


 マックがぶ厚い胸板を覆う革鎧に手をつっこみ、羊皮紙のようなものを二枚取りだした。

 太く良く響く声で、それを読みあげる。


「セルゲを、ドワーフ皇国中央ギルドのギルドマスターに任命する。

 また、ミャートをヒュパリオン帝国中央ギルドのギルドマスターに任命する」


「「謹んで承る」」


 初老の二人が頭を下げ、声を合わせた。 

 

「シロー、これってどういうことだ?」


 まだ事情がよく呑みこめないブレットが俺に尋ねる。


「ああ、前国王二人がギルドのマスターになったってこと」


「げっ! 

 ぜ、前国王……」


 さっき、前国王二人を「貫禄ある爺さん」呼ばわりしたブレットが青くなっている。


「父上、本当によいのですか?」


 シリルが、父であり前王であるセルゲに話しかける。


「女王陛下、我らの不徳から世界群崩壊の危機を招いたのですから、神樹様をお守りする仕事に就くことこそ、その償いなのです」


 人前であることもあり、セルゲは実の娘シリルに対し、あくまでうやうやしい態度を崩さない。


「父上……」


 シリルのつぶらな目が、涙で一杯になる。


「組織運営のプロである前国王がギルマスやってくれるんなら、この世界のギルドは安心だな、ガハハハ」


 さすがにマック、場の緊張感に呑まれていない。


おのおのがた々方、以後よろしくお願いいたす」

「いろいろご指導たまわりたい」


 二人の前国王は、あくまでも腰が低い。


「おう、デデノよ。

 お前ら、二人ずつ分かれて、しばらく両ギルドのサポート頼めるか?」


 マックが、ざっくばらんな口調で獣人冒険者に話しかける。


「ええ、そりゃ、構いませんが……」


 彼らも一旦は獣人国へ帰りたいのだろう。

 

「ここだけの話だが、お前らこの任務果たしたら金ランクだぜ」


 マックの言葉を聞き、デデノたちが驚く。


「き、金ランク……」


「おうよ、それ以外にもグレイル世界に帰った日にゃ、お祭り騒ぎが待ってるぜ」


「ど、どうしてそんなことに?」


「どうしてだろうなあ」


 マックが意味ありげに俺の方を見る。

 俺は慌ててブレットたちに話しかけた。


「ブレット、みんな、グレイルまで大聖女様の護衛よろしく頼むよ」


「うん、まかせて」

「ええ、分かってる」

「あいよ」

「大丈夫なんだな」


「ところでシロー、お前、この世界からは、かわい子ちゃんを連れかえったりしないよな?」


 最後にブレットが導火線に火を点ける。


「シロー、それはどういうことじゃっ!?」


 ほら、シリルが食いついちゃったよ。やれやれ。

 いつもお読みいただきありがとうございます。

 勇者と女王がイチャイチャと。

「あいつら、ホントに……」

『(・ω・)ノ ご主人様が羨ましがってる』

「だって、点ちゃん――」

史郎の発言はどうでもいいでしょう。

「作者、ひどい」

ということで、次話の舞台は巨人が住む里です。

 明日へつづく。



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