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ポータルズ ー 最弱魔法を育てよう -  作者: 空知音(旧 孤雲)
第3シーズン 学園都市世界アルカデミア編
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第10話 真の勇者

 パルチザンからの情報を元に、史郎は加藤を探し当てることができるでしょうか。

 関連話は、『第1シーズン 冒険者世界アリスト編』第53話です。

 先にそちらを読むと、お話がさらに面白くなります。


 魔術学区最大の学校である『トリビーナ学園』では、生徒の制服に違いが見られる。

 学年で違うのではなく、成績で違うのだ。


 成績上位者から、黒、濃紺、青、紫、赤、オレンジ、黄色、茶色と別れている。

 今、しわだらけの茶色いローブを着た少年が、学園の片隅を歩いていた。ここは、成績下位のクラスが集まっている区画だ。

 突然、後ろから背中を突きとばされ、少年は地面に倒れこんだ。


「おい、カトゥー。

 今日も冴えないな」


 せせら笑いながら言う、太った少年のローブは赤色だった。


「まったく、ウ〇コ色が似合ってるぜ、お前はよ」

「ははは、全くだ」


 太った少年の取りまき二人は、オレンジ色のローブを着ていた。

 地面に両手を着いた少年の背中を、赤ローブの少年が踏みつける。


「誰が立っていいと言った?」


「カトゥー」と呼ばれた少年は、背中を踏みにじられても黙っている。

 彼がこのグループに目をつけられたのは、白い肌を持つ者が多いこの世界で、彼の肌に少し色がついていたからだ。

 心狭き者が、自分と異なるものを受けいれないのは、どこの世界でも同じだ。


「おい、なんとか言ったらどうなんだ!」


 赤ローブの少年が横腹を蹴りつけると、カトゥー少年は再び地面に転がった。それをいいことに、オレンジローブの二人までが、少年の背中を踏みつけている。

 少年は何も言わず、うつ伏せたままだ。


「土でも食っとくのが、お前にふさわしいな」


 倒れている少年の頭を、赤ローブが踏みつけようとした時だった。


「な、なんだ!?

 動かない……?」


 少年の足が、空中で停まっていた。

 足に力を込めるが、下ろすことも、上げることもできない。

 オレンジ色ローブの二人も、足が動かなくなってもがいている。


 三人の後ろから、ゆっくり足音が近づいてきた。


 ◇


 三人の背後から、低くおし殺したような、少年の声が聞こえた。

 もちろん、俺の声だ。


「そいつは、お前らのようなクズが、軽々しく扱っていい男じゃない」


 赤ローブたちの前に現れた俺は、学園の黒ローブを羽織っている。


「く、黒ローブ!」


 赤ローブは、俺が成績最上位クラスであると気づいたようだ。


「こ、こいつ、金縁きんぶち!」


 オレンジの一人が指摘する。

 各色の最上位三名には、金、銀、銅の縁取りがある特別なローブが支給される。

 俺のローブは、その学年で最高位であることを示していた。


「さ、最高位……」


 赤ローブたち三人は、一気に顔が青くなる。生徒同士でもめ事が起きた場合、成績上位者が正しいという前提で判定が下される。

 彼らは、そのことを知っているのだろう。


「久しぶりだな、加藤」


 俺は、友人の腕を取って立ちあがらせた。

 汚れていた加藤のローブは、一瞬にして新品同様になった。

 もちろん、点ちゃんの仕事だ。


 「ぐえ」

 「ぐえ」

 「ぐえ」


 カエルの合唱のような声がする。

 赤ローブたち三人がうつ伏せで空中に浮いており、上下運動を始めていた。当然、下に行ったときは、地面とキスすることになる。

 三人の悲鳴を無視して、俺が続ける。


「すまん。

 見つけるのに、手間取ってしまった」


 コルナから連絡を受け、加藤が受験しただろう時期に入学した生徒をしらみつぶしに調べていたら、十日もかかってしまった。


『(・ω・)ノ ご主人様ー、だから言ったのに』


 点ちゃん、ごめん。 点ちゃんの言うとおりだった。

 点ちゃんは、下位クラスから調べるよう、アドバイスしてくれた。しかし、俺は、親友への評価から、上位クラスから順に調べたのだ。

 よく考えると、加藤には点ちゃんがいないのだ。

 最下位クラスとはいえ、よくあのトリビア問題を潜りぬけたものだ。


「あれ? 

 お前、魔術実技の試験は、どうやってクリヤしたんだ?」


 加藤は、足元の小さな小石を拾うと、それを親指と中指の間に挟んだ。

 いわゆる指弾の形だ。

 彼が指を弾く。


 チュバーン!


 近くの地面に、大きな穴が開いている。相変わらずの勇者チートだ。


「なるほどな」


 俺は、友人の頭に視線を向ける。


「で、その髪はなんだ?」


 加藤は黒髪ではなく、茶髪だった。


 ◇


 その後、スーシェ先生が現れて、赤ローブたち三人を連れていった。


「あなたたち、成績最上位者に何かして、そのままで済むとは考えてないわよね」


 先生の声は、いつもの穏やかなものではなく、氷柱つららの様だった。

 その後、俺は加藤を連れ、俺専用の待機部屋「タイタニック」に来ていた。


「なんじゃこりゃー!?」 

『(@ω@) な、なんじゃこりゃー!』


 加藤と点ちゃんがハモる。

 いや。でも、久しぶりに会った親友への、第一声がそれってどうよ?


 俺は、学院から部屋をもらった経緯を説明した。


「相変わらず意外性の男だぜ、ボーは」


「それより、なんで髪を染めたんだ。

 勇者として行動した方がいいんじゃないのか?」


「それだと、常に見張られることになるだろ。

 アリストとマスケドニアの件で、勇者がどういう立場か、よく分かっているからな」


 なるほど、自由な立場で動きたかったってわけか。


「お前が何をしにここまで来たかは、分かってるつもりだ。

 その線は、こちらでなんとかしたぞ。

 足りないのは、後、お前だけだ」


「ボー……」


 それが、どれほど大変なことか分かっている加藤は、一瞬言葉を失った。


「俺は……まだ、帰れない」


「なぜだ?」


「俺は、獣人がこの世界でどういう目に遭ってるか、知ってしまった。

 見過ごすことはできない」


 こいつは、幼稚園でブーコちゃんを助けたあの時から、全く変わってない。

 ずっと、真の勇者なんだな。

 俺は、なんだかそれがすごく嬉しかった。


「よし。

 じゃ、獣人を助けてから、さっさと帰るぞ」


「ボーはいつも簡単に言うが、どうやってやるんだ?」


「ま、何とかなるだろう。

 今では、お前もいるしな」


「相変わらずだな、お前は」


『(・ω・)つミ ご主人様ー、お互い様ですね』


 点ちゃん、そこ突っこむかね。

 じゃ、とりあえず、みんなでミーティングするか。

 あ、でも、その前にまず腹ごしらえだな。


「じゃ、加藤。

 このメニューから好きなもの、好きなだけ選べ。

 料理、持ってきてくれるぞ」


「……」


 久しぶりに会った友人が、呆れ顔をしていた。


 いつもお読みいただきありがとうございます。

 やっと加藤を探しあてることができた史郎。

 しかし、どうやらすぐパンゲア世界へ帰れそうにはありません。

 彼の計画とは?

 では、明日へつづく。


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