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陰キャJKのやり直し転生~いじめられっ子のはずなのに運命が私を逃がしてくれません~  作者: LAST STAR
第5章 パワーバランサー

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第72話 私たちの未来へ

「白鳥さん。朝の検診の時間です。腕を失礼しますね」

「あっ、はい……」


私と稲森君は光り輝いた扉を超えた瞬間、意識を失った。目が覚めて気付いてみればそこは病院のベッドの上だった。何でも、私たちは倒壊した校舎の中で見つかったらしく、重症だったららしい。


ただ、その割に病院の先生は凄く不思議そうな顔をして診察する。


「うん。問題ない。退院しても問題なしだ。……にしても、君らは運がいい。あれだけの崩落だったのに骨折も一人もいないなんてね。まるで計算されたかのようだ」

「そう……なんですね。ありがとうございました」


きっと、この仕業は恵ちゃんだろう。

全員に怪我がないように取り計らったに違いない。

そうして、私と由美子が揃って退院する日、玲奈ちゃんと『ある人物』が共に訪れた。


「退院おめでとう。覚えているかな? 嬢ちゃん達。俺は南警察署の鹿島だ」

「分かる訳ねぇーだろ。大体、会ったのは中坊の頃の数回だけだろ?」

「それもそうか。とにかく、これを長谷川の嬢ちゃんに報告したくてな」


そう言って由美子に手渡されたのはマスコミの新聞紙。そこには『松村グループ 倒産』の文字が飾られていた。


「詳細は省くが、松村グループは瓦解した。もう松村美咲に従う必要はない。アンタの親父さんが罪を植え付けられることもないだろう」

「実結っ!!」

「うん、私たちの心配事……無くなったね。ありがとう、玲奈ちゃん」


私たちが抱き合う中、玲奈ちゃんだけは一人、とおい景色を見つめる。


「別にアタシはなんもしてねぇよ。それにこれでお前等ともお別れだからな」

「え? どういう……こと?」

「――なぁ、玲奈。本当にこの場でやらせるのか、俺に」


由美子が不思議そうに語る中、鹿島さんは酷く悲しそうな表情を浮かべる。


「はぁ、あたりめぇだろ。これがアタシのケジメなんだ。最後くらい面倒見てくれよ。鹿島さん。アタシら相棒《バディ》だろ?」


鹿島さんが腰に手を回す中、玲奈はポソりと呟く。


「アタシさ、傷害やら脅迫、強要とかで逮捕されるんだよ」

「ちょっ、ちょっと待って! 玲奈は何も悪い事なんて――」


由美子は手錠を手にした鹿島刑事を前に懇願するが、彼は首を横に振る。


「残念だが、学校でのいじめ映像が出回ってるんだ。これは状況的にもう避けられないことなんだ。逮捕しなければ君にも余計な罪がいく可能性がある。つまり、これは玲奈自身の為でもあり、君を守ることにもなるんだ」

「じゃ、じゃあ私だって! 私だって逮捕されるべきで」

「君はあくまで被害者。証人なんだ」

「そんな……そんなの――」

「由美子……それ以上は」


私は由美子がそれ以上動かないように抱き留めた。

だけど、彼女はジタバタと暴れる。


「実結! こんなのダメだよ! こんな形で終わりになるんじゃ私たちだけが得しているみたいでこんなのダメだよ――!」

「違う、ちがうよ。由美子……。私たちは得なんてしていない。いずれ、私たちの所にもマスコミは来るはずだから……」

「だったとしたら、私だって逮捕されるべきじゃない! それなのに玲奈だけじゃん! ここまで一人で、孤独で頑張って逮捕までされて! 最後まで玲奈が悪者にされるんだよ!?」


掴みかかって来る由美子に対して私は冷静に息を吐く。


「させない。私たちが絶対に玲奈ちゃんが悪者にされないようにしよう。今、それだけの力が私たちにはあるはずだから」

「え……? 実結、それってどういう……」

「私たちが玲奈ちゃんの無罪を訴えればいい。全部、ぜんぶ松村グループが悪いんだって。玲奈ちゃんのお母さんの件を調べてくださいって」


私がそう言うと由美子はハッとしたような顔つきに変わる。だが、玲奈ちゃんは対照的にどこか居所が悪そうな顔つきに変わった。


「何、言ってんだよ。別にアタシは……お前らを巻き込みたくてこんなことしているんじゃ――」

「もう、そんなことを言うのは遅いよ、巻き込まれているんだから。……それに玲奈ちゃん。私たち友達でしょう? 仲間なら協力しないと」

「友達で仲間……か。はぁ……本当にもう、一番の強敵は実結だったのかもな。もういいよ、鹿島さん」

「あぁ――有川 玲奈。傷害の容疑で緊逮する」


その場でカシャリとかけられた重い手錠の音が響いた。それから私たちの生活は大きく激変した。


「白鳥さん、過激なイジメを受けていたとのことですが、どのような?」

「確かに……いじめを受けていたのは事実です」

「ではでは、主犯はオレンジ色の髪色をした少女Bが全面的に行っていたとのことですが、実際、そうだったんですか?」

「いいえ。全部、命令されていたんだと思います」

「なぜ、そう思うのですか? 加害者に対して怒りは?」

「本人に聞いたから……です。最初は怒りもありました。それでも……玲奈ちゃんとは和解したんです!」


家から出る度にマスコミに取り囲まれる。

そんな生活では心が休まりはしない。

それでも、私も由美子も約束をしたんだ。玲奈ちゃんを守ると。


だから、私はこのマスコミの力を逆手に取った。


「和解された? 実際どのように和解されたのかお話を――」

「あの……お願いです! みなさんなら調べ……られませんか。玲奈ちゃんのお母さんの……過去の事件を! 皆さんなら調べられるはずです。それを調べてくれたら優先的にインタビューを受けます!! 失礼しますっ!!」


報道陣の間を縫って私は一気に駆け抜ける。

到底、子どもの話に食いついてくれるか、どうかは賭けでもあった。


それでもその賭けはあながち外れではなかった。


「面白しろ半分で調べてみたが――。にしてもなんでだ? かつて有川の母親以前にも同様のことで訴訟が起こっているが、どれもこれも松村の勝訴になっている」

「それに、この何でしたっけ? 白鳥って子、昔の体罰事件の被害者っすね。おまけに身辺に『リグレット事件』――皆川恵の暴露をした稲森少年もいるって凄いっすよね?」

「何? あのゴシップまるごと掻っ攫った奴か? ふーん、信頼性が高すぎるな。追ってみる価値はありそうだな」


幸か不幸か、私の素性が暴かれたことで一気に疑惑が増幅していき、思いもよらない大きい波になって行く。


「編集長!! 例の家政婦絡みの裁判、その審議期間内に検察庁の人間と松村英明が会食していたとの証言と多額の送金履歴が――!」

「ビンゴかよ。ってことは……まさか警察か、検察と癒着しているのか? おいおい、お前ら!! この筋はビックなネタになりそうだ! その線を洗え!」


大企業と国家権力との癒着。

その観点に目を付けたマスコミは徹底的な追い込みをかけると連動するように政治家までもがセットで付いてくる始末で、さらにはホワイトハッカーを名乗るチームが警察内部と松村の隠匿情報を暴露してしまう。もう、国家権力と松村の関係は世間に暴かれ、関係値は空前の灯になっていった。


「はぁ……大人って醜い。私もあと数年すればそんな大人社会に入るのかぁ……」


そして、私は学校の屋上のベンチでニュースの詳細を見て呟く。遂に有川の母の殺害容疑で松村英明が逮捕されたらしい。これで一つ、玲奈ちゃんへの約束は果たせたはずだ。


「先輩、ここに居たんですか? 探しましたよ」

「うん、ココだけが唯一、落ち着いて空を見れる場所だから……。稲森君もどう?」

「まぁ、確かにマスコミに追われまくってますもんね。なかなか空を見上げたことなんてなかったかも……先輩は微糖でいいですよね?」

「うん……ありがと」


そう言いながら稲森君は隣に座り込みながらアイスコーヒーを手渡してくれる。


「あ、そうだ。玲奈先輩が近いうちに保護観察で出てくるって話は聞きました?」

「うん……しばらくは玲奈ちゃんも大変だろうけど、お互い助け合ったりしようっていう話にはしてる」

「そうなんですね。とはいえ先輩も最近、大丈夫ですか? その、メンタル的に」

「うっ……うん。まぁ、正直言うとキツい……かな」


暖かい風と手にしっとり来る冷たさが、心の跳ね上がりを感じさせる。

いや、違う。無意識に隣へ座る稲森君が悪い。けど、今この瞬間だけは私と彼だけの屋上だ。力を思いの限り、抜いて彼の肩に寄り掛かる。


「せ……先輩……?」

「す、少しだけ……本当にすこしだけ……このままじゃダメ、かな?」

「いや……ダメじゃない、ですけど……」


きっと彼の頭の中にはあのゲームの世界で出会った最後の恵ちゃんの姿が未だにチラついているに違いない。それでも良かった。拒絶されている訳じゃないなら私にだってチャンスがある訳だから。


幼馴染だか、なんだか知らないけど――最後には振り向かせてみせる。


「ふふっ……良かった」

「な、何がですか?」

「う、ううん……なんでも……ないよ?」


そんな静かな宣戦布告に答えるかのようにビューッと風が吹き荒れる。

まるで私の意志に答えるかのように。


「あー居たっ! 実結っ……ととぉ……こりゃあ、私は邪魔だったねぇ……ううん~じゃあ、ハイチーズ☆」

「へ? あちょっと由美子……? はっ、待て!」

「先輩!? 鞄もコーヒーも忘れてますよ!?」

「いいから稲森君、由美子を捕まえて! 私たちのツーショットをかくしどっ……こらぁ……!! 由美子ォォ……!!」


状況を察して逃げる由美子。そして、恥ずかしいことを言いかけて慌てて追いかける私に――。

なんやかんやで追いかけてきてくれる、かっこいい稲森君。


そんな私たちの生活はいろんな決断を超えながら微かに、それでも確かに進んでいく。遥かなる輝きを放つ未来に向かって――。


FIN。


ここまでお読みいただきましてありがとうございました。

この物語はここで完結となります。本当は学校での暮らしぶりとかを描いたり、不器用な実結が稲森君にアタックしたりするお話を続けて書こうかなと思っていた節もありますが、作品のイメージを壊さないために長引かせても良くないと思い、打ち切りました。


この作品の醍醐味は人物劇がメインで「努力して心を折られた実結」と「当たり前の幸せで満足し、大切な人を守れなかった稲森」、「家族を守るという決断をして大切な親友を裏切った由美子」など人生で起こり得るかもしれないドラマを作中で描きました。


私たちの人生も日々、荒波で沈んだり上がったり、はたまた砕けたりしてしまうこともあるかもしれません。それでも実結のように一歩を踏み出せば何かが変わるかもしれません。そんなお守りになるような作品になればと思います。


ツラツラと書きましたが、皆さまが少しでもこの作品を見て感動したり、涙を流してくれたら作者冥利につきます。ここまで読んでくださった方には重ねて御礼申し上げます。


ありがとうございました。

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