そこで待っていたのは
「くそ、くそがっ! どうして、こうなった……」
私がそう自室の机にあたることとなったのは、パーティーの終わった後だった。
あの宣言の後、マレシアはカシュアが自身に手紙を送ったこと、間違いなく真の聖女であることを保証した。
カシュアは、間違いなく聖獣に見いだされた聖女だと。
その上で、カシュアと話したいと自室に来るように誘って見せたのだ。
そのマレシアの言葉は、今まで疑われていたはずのカシュアの疑いをはらすのに十分な言葉だった。
何せ、今やマレシアの名前は各地で賞賛される程のものなのだから。
……そしてその結果、疑念を抱かれることになったのは私だった。
その際必死にカシュアに謝罪し、マレシアにも頭を下げて謝罪したことにより、私が元凶だと判明することはなかった。
けれど、ライハートに証拠が偽造だと見抜かれたせいで、私の立場は圧倒的に悪いものになることとなった。
つまり、私は偽造の証拠で真の聖女を断罪しようとした愚かな王子、そんなレッテルを貼られることとなったのだ。
……そしてその評価は、今の私にとって致命的なものだった。
「余計なことをしよって!」
やりようのない怒りに私は再度、机をたたく。
それほどに現状は最悪な事態だった。
「恨むなよ、マレシア。この手を使うことになったのはお前のせいだからな……!」
けれど、打つ手がなくなった訳ではなかった。
凄惨な笑みを浮かべながら自室を出た私はある部屋へと向って歩き出した。
今まで私は、カシュアを陥れる準備をするにあったて様々な手を使ってきた。
そのうちの一つとして、私は自分の手の内のものをカシュアの侍女の中に潜り込ませている。
──そしてその手の者はカシュアと一緒にマレシアの場所に招待されているのだ。
もちろん、パーティーの後その手の者と接触する時間はほとんどなかったが、マレシアを昏睡する用の薬だけは渡すことができた。
それだけであの手の者は何をすべきか理解するだろう。
すなわち、マレシアを誘拐しろ言われているのだと。
マレシアさえ誘拐できれば、一気に状況を意のままにできるようになる。
カシュアに誘拐の罪を擦り付ければ、相対的に私の評判も元に戻るはずだ。
そう確信しながら、私は緊急時に用意された隠し部屋の扉を開ける。
しかしそこにいたのは、まるで想像しない男だった。
「やっときたか」
その、褐色の肌を大きく露出する異国風の姿。
この辺りでは一切見かけない衣装を身にまとったその美貌の男は、私を睨んで告げる。
「お前、やっていいことの区別もつかないのか?」
……その言葉には、隠しきれない怒りが滲んでいた。




