溢れる問題
「……っ! この、どうしてうまく行かない!」
苛立ちのままに放り投げた書類が、机の前に散らばる。
それがなんの解決にもならない行動だとは理解しているが、それでも私はそう鬱憤をはらさずにはいられなかった。
マレシアを追い出してから現在一ヶ月ほど……私は処理しきれない程の多くの問題を抱えることになっていた。
マレシアが去った時から王国内では天災が相次いで起こるようになっていた。
天災など、聖獣に守られているこの国では起こるはずのものではないのに。
それは明らかに異常事態で、私に責任を問う声が次々と上がっていた。
……つまり、今の聖女とそれを持ち上げた私の手腕を疑問視する声が王国内にあがっているのだ。
そして、その状況が私の政敵に支持につながっていた。
再起不能一歩手前まで追いつめていたにも関わらず、また息を吹き返してきた第二王子を思いだし、私は苛立ちを吐き捨てる。
「くそ! あの聖女さえ正常に働いていれば……!」
折角持ち上げてやったというのに、聖女カシュアは今のところ一切役にたっていなかった。
聖女になって初日の聖獣との面会から、とんでもないことをした、と顔を青くしていた姿は記憶に残っている。
どうやら聖獣との繋がりが不確かになっているらしく、新しく聖女が就任した時に行われる儀式さえまだできていない。
それだけで苛立たしいのだが、一番苛立つのは魔妖精の認識を変えろ、マレシアわびないと、と言い出したことだった。
「あの馬鹿が! 一度魔妖精を禁忌として扱って糾弾したのに、手のひらを返せる訳がないだろう!」
そう吐き捨てて……しかしすぐに私は渋面を顔に浮かべるはめになった。
正直、カシュアの考えなしの提案に苛立つことは確かだが、その提案も否定できないことに私は気づいていた。
もう、その考えが間違いであったのは証明されているのだから。
そこまで考えて、私は大きく顔を歪める。
そのとき私の頭に浮かんでいたのは、隣国である帝国のことだった。
今まで王国のことをあげてきたが、実のところ一番大きな問題が起きているのは国外だった。
いや実際のことろ、王国以外の人間はそれを問題などとは思っていないだろう。
純粋に祝っている人間も多いかもしれない。
けれど、それが自身の失態を証明するものだと私は理解していた。
床に散らばった書類を取り上げ、私はその題名を読み上げる。
「……王国改め、帝国の聖女マレシア」
──それは、帝国でのマレシアの活躍を書いた記事だった。




