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公爵家の女たちは男運だけがない  作者: たくみ


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73.最終話

「当たったでしょ?」


 鞭を手に絡めたまま逃げるように帰っていったロジェミア。彼と入れ替わるかのように部屋に足を踏み入れたのはリリベルだった。


「知ってたんでしょ?」


「ええ、情報はいち早く掴まないとね」


「ペネロペ様は大丈夫かしら」


「大丈夫よ。積んでいた荷物は彼女の結婚の準備に必要なものだもの」


 目を見開くキャシー。


「商会の品物じゃないの?」


「そうよ。愛しい女を監視していた男は勘違いしていたみたいだけれど」


 ロジェミアはペネロペの動向を監視させていた。しかしそれに対して支払われる報酬は僅か。真面目に監視していなかったので商会の船が沈没したと思い込んだのだ。


「いくら顔が好みでもなんでも許せるわけじゃないでしょ?」


「そうね。心に他の誰かがいてもいつか自分をみてくれるんじゃないかって期待があったけれど。他の女のために私を使うのは許容範囲を超えているわ」


 リリベルは目を細める。キャシーの目には怒りの炎が揺らめいている。棚上げだがやっと目を⋯⋯



「目を覚ましてくれて何よりだわ」


 その言葉に2人はばっと扉の方に目を向ける。


 視線を気にすることなく歩みを止めずリリベルの隣に腰掛けるのは姉のマーシャだ。


「リリベル姉様に言われたら呆れるところだけれど、マーシャ姉様に言われたら骨身に染みるわ」


「何よそれ~ひどーい」


 リリベルは身を乗り出すと軽くキャシーの頬を摘む。その手にキャシーはくすぐったそうに身を捩る。


「でもいいなーお姉様たちはいい人に巡り会えて⋯⋯。私にもいつか現れるのかな?素敵な男性が⋯⋯」


 その言葉にリリベルとマーシャは顔を見合わせる。


「「別に独身でもいいじゃない」」


 2人から同時に発された言葉にキャシーはキョトン顔だ。


「公爵邸にはいくらでも部屋はあるから住むところには困らないし、お金だってたくさん持ってるでしょ?」


「いずれか私が公爵家を継いだ際に仕事を手伝ってくれたら心強いわ。あなた仕事できるし。無理して結婚なんてしなくてもいいのよ?」


「え?なんか姉様たち私に独身でいてほしい感じ?」


「そういうわけじゃないけど」


「ねえ」


 そう言って再び顔を見合わせる2人は口をモゴモゴとさせ何やら言いたげだ。


「何よぉ。何が言いたいのよぉ」


「「⋯⋯⋯⋯⋯あなた男運ないから」」


「んなっ!お姉様たちに言われたくないわよ!」


「私たちはほら見つかったから」


「ねぇ」


 にこにこと余裕たっぷりの姉たちにふつふつと怒りが湧いてくる。


「お義兄様たちに出会ったのなんてつい最近じゃない!まだまだ若い私にはチャンスがいくらでもあるわよ!」


「ま、酷い」


「ババア扱いされたわ」


 今度はメソメソと泣き真似をする姉たちに更に怒りが募る。何か言い返そうと大きく息を吸うと、はたと思いつく。


「でもそれもいいのかもしれない」


「「え?」」


 キャシーから何を言われるのかと身構えていた2人だったが静かなトーンに気が抜ける。


「だって⋯⋯⋯⋯⋯⋯結婚してもお母様みたいな目に遭ったら嫌だし。お姉様たちも油断しない方がいいんじゃない?」


 マーシャとリリベルはその言葉に顔を引きつらせる。そんなことはないと言いたいところだが、自分たちの男運のなさを考えるとあり得なくもない。


 口を震わせることしかできなかった。


「それは聞き捨てならないわ」


「ぐっ⋯⋯!」


 キャシーの首に一本の細腕が巻き付き締まる。


 バンバンと叩くとすんなりと離れる手。


「「お母様!」」


 3人の視線の先にはエレノアがいた。


 キャシーの恨みがましい視線を無視しながら彼女の隣にドスンと腰掛ける。


「私の男運が悪かろうと夫が最低野郎だろうとあの男は私にあなた達を授けてくれた。それで十分よ」


「「「お母様⋯⋯」」」


 エレノアの言葉にちょこっと感激する3人。 

 

「うちはお金もあるし権力もある。男なんて子を授けてくれたら用なしよ。いない方がせいせいするわ。あなた達も子供が生まれたらさっさと捨てちゃえば?」


「「「お母様⋯⋯」」」


 エレノアの言葉にちょこっと呆れる3人。


「相手がどんな男だってあなた達はあなた達でしょ。あなた達がどしっと構えていれば男運が悪くても他のことはちゃあんと回っていくわよ」


 確かに父の不在に関わらずフライア公爵家は盤石だ。


「悪い男にあたってしまってもぎゅぎゅっと締め上げて、手綱を握ればこちらのものなのよ」


 父はエレノアの言葉に忠実だ。


 母の願いを聞くことこそが喜びと言わんばかりに。




「男運が悪い?


 それが何?


 私たちは自分を見失わず男に振り回されずにいればいいのよ」




 あ、なんか⋯⋯⋯⋯いいこと言ってるふうだけれど。


 これはあれだ。


 この部屋から逃げ出したいが逃げ出してはいけないことはわかる。


「だいたいね。マーシャあなたはポイポイ男を切り捨てすぎよ?もう少し躾ける努力をなさいな」


「えー……めんどう……」


「リリベルあなたはどうにもならない男なんてさっさと捨てなさいよ!女々しいわね!」


「一応女なもので⋯⋯」


「キャシーあなたは顔で人を好きになるんじゃないわよ!ちゃんと中身を見なさいよ!」


「御尤も……」


「だいたいあなた達は―――――――――」




 その後も続く、エレノアの説教に彼女達はうんざりしていく。





 だが使用人たちの目には主人たちのその日常の光景はとても微笑ましく映る。





 今日もフライア公爵家は


 華やかで


 明るくて


 騒々しくて




 最強の家族だと。


 






 終




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