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月の華  作者: 桜華
第四章 七大罪篇其ノ壱 暴食
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ゴブリン五体の討伐・3

遅くなりました……。

 

 夜営の見張りの最中に現れたフォレストスライム。僕はそれを、母様から学んだ自慢の双剣の餌食にしようと〈双竜剣〉を構えながら近付いていく。しかしその時、僕が辺りの警戒の為に発動していた魂魄魔法の《グリムリッパー》が勝手に動き出し、一瞬にしてフォレストスライムの魂をその手に持つ巨大な死神の鎌で刈り取ってしまった。

 さすがの僕も、この出来事には呆然とする以外何も出来なかった。


「もしかして……《グリムリッパー》の能力は魂だけを斬り裂ける能力かもしれない……!」


 少しして、ふと我に返った僕は焚き火の前でそう独り言ちる。そして、改めて《グリムリッパー》について考えてみる事にする。


 ボロボロの漆黒のローブに身を包み、手には巨大な死神の鎌を持った半透明なスケルトン。その死神然とした姿が《グリムリッパー》の姿である。

 ならばその能力が死神そのものと言っても可笑しくはないだろう。むしろ、何故その能力に気付けなかったのかと、自分を情けなく思う。だって……厨二病を患う僕ならば、その可能性には逸早く気付けたはずだ。


 しかしこうも思う……人が大勢いる所で下手に使わなくて良かった、と。


 今回フォレストスライムの魂を刈り取った訳だけど、まだ《グリムリッパー》が魂を刈り取る条件が分かっていない。もしかすれば、無条件に魂を刈り取ってしまう事も考えられるのだ。


「でも、母様が家にいる時に使ってもそんな事無かったよね……。何が魂を刈り取る条件なんだろ……?」


 僕が呟いた様に、この魂魄魔法を覚えて《グリムリッパー》と名付けてから現在に至るまで、僕はほぼ毎日と言っても良いくらいに発動していた。まぁ発動出来るのは日が沈んだ後の夜……それも、母様とご飯を食べて一緒にお風呂に入り、その後の寝るまでの間だけだったけどね。

 それでも発動していたのだ。……カッコ良いからという理由で。

 しかし《グリムリッパー》は母様の魂を刈り取る事はしなかった。まぁ刈り取ろうとしたとしても、僕はそれを許さずに解除しただろうけどね。

 だがしかし今回、《グリムリッパー》はフォレストスライムの命を刈り取った。母様とフォレストスライムの違いは何か。そこから考えれば答えが導き出せそうだ。


「母様は僕の眷属だから……? いや、それだとライムやガルバの命がフォレストスライムみたいに刈り取られちゃうよね。そうなると、人間と魔物の違いかな?」


 考えを整理する為に言葉として口にする。


 人間と魔物の違いならば何となく納得出来そうな条件だけど、それを考えると、母様の魂を刈り取らなかった理由にはならない。僕も、その眷属である母様も、言わば人狼という魔物のカテゴリーに所属するからだ。神狼が魔物とは認めたくないけどね。


「うーん……魔物だから刈り取る訳じゃなさそうだなぁ……。…………。あ……もしかして、僕に対しての敵意や殺意に反応するのかな? それだと今回の条件にも当てはまるし」


 考えを更に言葉として紡いでみる。


 フォレストスライムは果物を主食としているけど、果物が無ければ人間や他の魔物を襲って食べる……つまり、雑食だ。食べるじゃなくて、その半液体状の体内に取り込んで吸収する、が正解だけど。

 それはともかく今回、フォレストスライムは僕達を餌として認識し、そして吸収しようと襲ってきたと考えられる。ならば、僕が導き出した《グリムリッパー》の能力発動の条件にも当てはまるはずだ。


「まだ検証が必要だけど、ま、今日の所はこんな所でしょ。そして、そろそろ見張りの交代の時間だ、ガルバを起こして僕もさっさと寝よう。じゃないと今日も戦闘に参加出来なくなって、またライムとガルバに文句を言われちゃうよ」


 言葉にして考察終了を告げる。これ以上は実際に試してみないと分からないしね。


 それに色々と考察していたからか、ライムからの見張りの交代の時にくべた時間の目安としていた焚き火の薪が燃え尽きようとしていた。やはり考え事をしてると、あっという間に時間が過ぎていくね。


「ガルバ……! そろそろ時間だから起きて?」


 焚き火に残りの薪をくべ、僕はガルバのテントの入口で声を掛ける。もちろん、《グリムリッパー》は解除している。見られたら大変だからね。


「ん……んー……ああ、もう時間ですか。分かりました、今出ます」


 僕の呼び掛けにガルバはすぐに反応してくれた。


 さすがガルバだね、僕とライムと違ってしっかりしている。

 僕達のパーティ猛き白狼は何となくライムがリーダーっぽくしてるけど、僕としてはガルバの方がリーダーに適してると思う。要所要所で言葉を挟み、それでライムを正しい行動に導いているからね。


「今までに何か変わった事は?」

「うん、ライムの時に一体、僕の時も一体のフォレストスライムが襲ってきたくらいかな。もしかしたら、またフォレストスライムが現れるかもしれないから、ガルバも気を付けてね?」

「分かりました。まぁ私には精霊魔法があるのでその辺は大丈夫でしょう。それじゃルウは早く寝て下さい。今日の探索に差し障りが出たら私とライムが大変ですしね」

「あ、あははは……うん、そうだね……。それじゃ、おやすみ」


 うん、やっぱりリーダーはガルバにした方が良いみたいだね。先を見据えて色々と考えてるのが今の言葉からも分かったよ。見張りの引き継ぎもちゃんとしてるしね。


 ともあれ、僕はガルバと見張りを交代して、残り少ない朝までの睡眠をとるのだった。


 ☆☆☆


「またフォレストスライム!? ちょっと多いなんてレベルじゃないでしょこれ!?」


 残り少ない睡眠時間を貪り、僕は無事に朝を迎える事が出来た。ライムも、テントが崩れる事はなく、十分な睡眠をとれたのかスッキリとした表情で起きていた。

 崩れてしまえば良かったのにと思ったけど、さすがに口にはしなかった。口は災いの元だよ?


 アクアストーンの水で顔を洗い、軽く身支度をして携帯食料を食べた後、僕達は今日の探索を始めた。もちろんテントはしっかりと解体して背嚢へとしまっている。


 そうして探索を開始した訳だけど……30分もしない内にフォレストスライム三体と出くわしてしまった。先程のライムの言葉はこの時のものである。


「ルウと見張りを代わった後もフォレストスライムが一体現れましたが、本当に多いですねぇ、今日は……! 〖マナよ。我が言葉に従い風と化せ。鋭い針となりて敵を穿け! 《ウィンドスティング》!〗」


 朝までの見張りの事を踏まえて意見を述べた後、ガルバは透明な風の針の魔法を唱える。右手に持った大きな杖の先端から風が吹き出し、すぐさま鋭い針の形状へと変わる。

 そして発動した風の針は、一体のフォレストスライムのプルんとした緑色の体を穿き、その核をも穿いた。


「繁殖するにしてもこんな森の浅い所じゃなくてもっと奥の方にしてよね……! はぁあああッ!」


 ガルバに負けじと、僕も〈双竜剣〉を腰から抜き放ち、フォレストスライムへと斬り掛かる。左手の剣でフォレストスライムの丸い体を斬り裂き、その傷が塞がる前に右手の剣で核を突き刺す。核を壊されたフォレストスライムはドロリと形を崩して死んでいく。


「もう……! 昨日からフォレストスライムばっかりで嫌だよ! うぇええ……ネバネバするぅ……」


 ライムも背中の大剣で叩き潰す様にしてフォレストスライムを仕留めていたけど、その際にフォレストスライムの体液が足にかかったらしく、背中に大剣を戻したあとに嫌そうにその体液を手で拭っていた。


 僕達は難なく三体のフォレストスライムを倒した。


「考えないで大剣を振るうからそうなるのです、ライム。ルウみたいに鋭く斬り裂けば体液がかかる事もないはずですよ?」


 フォレストスライム戦を振り返り、ガルバはライムに言う。叩き潰せば確かにかかるよね、体液。ビシャって。……ネバネバするけど、それがまた美味しいのに。


「だってぇ……」

「フォレストスライムに飽きたというライムの気持ちも分かります。私だってそうなんですから。しかし、足元ばかりを見ていて先を見なければ転んでしまうものです。私が言いたいのは、基本をしっかり、という事ですよ」


 反論しようとするライムに、ガルバは更に続けていた。

 ライムもそろそろ理解したんじゃないかな? リーダーはガルバが適してるって。

 しかしこのまま説教を続けていても仕方ないので、僕は先を促す事にした。


「まぁまぁ、ライムだってそれくらい分かってるんだから、そろそろ先へ進もうよ」

「そうですね……しかしこの辺りはフォレストスライムばかりな気がしますので、今度は西の方角へと進んでみましょう」


 うん、やっぱりリーダーはガルバで決まりだ。状況判断もそうだけど、即断即決が出来ている。

 見た目は痩せ細ったミイラみたいな容姿だけど、その見た目と違ってすごく頼りになるよね、ガルバって。

 そのガルバの指示に従っていれば、今回のゴブリン五体の討伐も上手くいくだろうね。


 ライムがフォレストスライムの体液を拭うのを待った後、僕達はガルバの指示に従い西の方角を目指して再出発した。

 森の木々を避けつつ歩き、草を掻き分け歩く。時おり花を摘み(トイレタイムを取り)つつ西の方角へと進んでいく。

 三体のフォレストスライムを倒してから二時間あまり歩いた頃、僕達はソレを発見した。


「これって……集落よね? ゴブリンの……」


 木の陰に身を隠しながらソレを見たライムの言葉である。

 僕とガルバも身を隠しながら同じ物を見ているけど、確かに集落だ。いや、集落を築きつつあるといった所かな。まだ簡易拠点と言った方が適切かもしれない。


「数は……だいたい20体程ですか……。私達の手には余りますね」


 ゴブリンの拠点を見ながらガルバが呟く。

 僕達が同時に相手出来るゴブリンの数は、どう頑張っても三体が限度だ。一体をガルバの魔法で足止めしてる内に残り二体を僕とライムで相手しつつ、一体の足止めを終えたガルバにトドメを刺してもらうというのが今現在の僕達の実力になる。

 僕が人狼に変身すればゴブリンなんて数百体いようが数千体いようが問題なく殲滅出来るとは思うけど、ライムとガルバがいる以上そんな事は出来ないし、変身するのは激痛を伴うのでしたくない。


 となれば、逃げるしかなさそうだけど……。


「集落を築きつつあるという事は、恐らく何体かで部材を集めるゴブリンがいるはずです。私達は部材集めに出たゴブリンを倒しましょう。そしてトータル五体の討伐が終わった時点で急ぎバール村へと戻り、この場所にゴブリンの集落が築かれつつある事をギルドに報告します。それが私達が現状で出来る最善策でしょう」


 さすがガルバだ。その判断は正にリーダーとして相応しい。


「うん、僕もガルバの案に賛成するよ。……ライムは?」

「ライムは……って、ガルバの案が最適だってルウも分かってるでしょ!? ライムも賛成よ!」

「じゃあ、決まりですね。ゴブリン達に見付からない様にここから少し離れて、そして部材集めに出るゴブリンを見張りましょう」


 リーダー(仮)ガルバによって作戦は決まった。あとは実行するだけである。

 こうして僕達はガルバの指示に従い、ゴブリンの拠点から少し離れた場所でその時を待つのだった。

お読み下さり、ありがとうございます。

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