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月の華  作者: 桜華
第四章 七大罪篇其ノ壱 暴食
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ゴブリン五体の討伐・1

サブタイトル『忘れられない日・2』にて、なろう様の規約に違反していた部分を修正致しました。

物語の流れは変わっていませんので、お読み下さってる皆様に影響はございません。

これからはより表現に注意して執筆してまいりますので、これからもどうぞよろしくお願いします。

 

 バール村を出発した僕達三人は、神滅の森へと続く道をひたすら歩く。初めての依頼という事もあって、三人とも真剣な表情を浮かべながら進んでいく。

 途中、僕達の横を何台もの馬車が通り過ぎていった。その馬車を羨む目で見つめながらも僕達は歩き続ける。


 しばらく歩いた所で、ライムが僕とガルバに向けて口を開く。


「そろそろ休憩にしましょ! さすがのライムちゃんも少し疲れたわ」

「私は足が棒ですよ……」

「そうだね……うん、休憩しよう。今から気を張ってたんじゃ身が持たないもんね!」


 ライムの言葉に僕とガルバは快く了承し、道の端に三人揃って腰を下ろして少しの休憩を取る。しかし、さすがのライムちゃんの意味が分からない。素直に疲れたから休もうと言えば良いのに……。

 それはともかく、僕は持ってきていたアクアストーンにマナを込め、そこから溢れ出る水を飲んで喉を潤した。清らかな水が歩きで火照った体に染み渡る様で心地好い。


「ふぅ……生き返ったわね! ようやく半分くらいかしら?」

「そうだね。たぶんそれくらいだと僕も思うよ」


 ライムの言葉に僕は答える。森までの道のりは恐らくライムの言った通りだろう。


「そろそろ行きますか」


 少しして、ガルバがそう切り出す。多少は疲れも癒えたので、僕達はガルバの言葉を合図に再び歩き出した。


 そんな僕達が歩く道は土が剥き出しの道である。実はバール村から神滅の森までは簡素ながら街道の様な道が造られていて、その道を通るならば魔物に襲われる事もない。徒歩でも安全に森まで行く事が出来るのだ。

 時おり、その道を歩いている僕達の横を何台もの馬車が森を目指して通り抜けていくが、それは冒険者達を森へと運ぶ乗合馬車である。その乗合馬車は森とバール村を行き来していて、お金を払えば誰でも利用する事が出来る。僕もいつかは乗ってみたいと思う。


 途中休憩を挟みながらもバール村を出発してから5時間程歩いた僕達は、ようやく目的地となる神滅の森へと到着した。

 神滅の森の入口へと到着した今の時刻は、だいたい午後1時くらい。ギルドで依頼を受けたのが午前7時頃、バルデスさんに見送られながらバール村の門を抜けたのが8時頃だから計算は合っているはずだ。


 ちなみにだけど、今まで午前7時とか午後9時とか現在の時刻の説明をしてきたけど、実際にはやはり違う。

 どういった仕組みになっているかは分からないけど、バール村では夜明けの時からだいたい1時間おきに時を知らせる鐘が鳴るのだ。しかもその鐘、魔道具と連動しているみたいで、鐘が鳴るとラディアス王国内にいるならばどこに居てもその魔道具が震えて時を知らせてくれる仕組みとなっている。凄いよね。


 その魔道具は多少値が張るけど、バール村を初め、ラディアス王国の全ての世帯が持っているとか。あ、行商人も必ず持っているね。もちろん、僕と母様が暮らすログハウスにもある。

 僕は前世からの感覚でだいたいの時刻は分かるけども、時間の概念がほとんど無いこの世界の人からすれば、時刻を知らせる魔道具はとてもありがたいんじゃないかな。


 ……話が逸れたね。


 時刻の事はともかく僕達に話を戻すけど、僕達の懐事情に余裕があるならば、バール村から神滅の森までの乗合馬車に乗っても良かった。そうすれば時間を掛けて苦労して歩かなくても小一時間程で到着出来たのだ。しかし駆け出しの冒険者である僕達に当然そんな余裕は無い。


 ……お小遣いを使えば馬車に乗れない事もないけど、冒険者としての活動なんだから依頼で稼いだお金で馬車には乗るべきとの意見で一致した為、しばらくは徒歩で神滅の森へと通う予定となった。いつかは馬車に乗ってみたいと僕が思った事はその理由からである。


「じゃあ、さっそく薬草を探しましょ! あ、お互いにあまり離れない様にしようね!」

「当然ですね、僕達はまだ一人だとゴブリン相手にも苦戦しますし。互いに姿が見える範囲にいる事を心掛けましょう」


 そんなライムとガルバの会話の後、森の入口付近でさっそく薬草を探し始める僕達。馬車でやって来た他の高ランク冒険者達の姿はこの辺りには既に無く、薬草採取から始める僕達を笑う者はいない。あ、僕達と似たり寄ったりの駆け出し冒険者が薬草採取をしているや。まぁ同じ境遇なので、お互いに見て見ぬ振りして頑張ろう。


「薬草の見分け方って、確かほんのりマナを含んでるんだっけ?」

「当たり前じゃない、ルウ。マナを含んでるから薬草でしょうに……。そんな事も忘れたなんてガイアスさんが聞いたらまたお尻を叩かれるわよ?」

「い、いや、ちゃんと覚えてるよ! 母様の薬草図鑑に載ってる薬草が多過ぎるから確認の為に聞いただけじゃないか……」

「ははは、ルウらしいですね。お、一株発見しました」


 森の浅い所で薬草を探しながらの僕達の会話である。

 確認の為に聞いただけなのに、ライムには酷い言われようだ。

 ……だけど、ライム? ライムが今手に持ってるのはただの草だよ?


 それはともかく、この辺りに生えてる薬草は効能が低すぎてポーションの材料には適さないけど、直接使う分にはそれなりの効果があるので、僕達みたいな冒険者にはありがたい薬草だ。

 そしてさっそく見つけたガルバはさすがだね、伊達に魔法使いを名乗ってる訳じゃないみたいだ。


「あ、僕も見つけた! とりあえず二株あれば今回の分は十分だから、そろそろゴブリンを探しに行こうよ」

「ちょっと待ってよ、ルウ! それじゃライムが見つけた薬草は薬草じゃないって言うの!?」

「……ライム、それ……ただの草ですよ? 今回ばかりはルウに軍配です」

「ッ!? ち、違うわよ……! こ、これは珍しいと思ったから採取しただけよ! ほ、ほら! さっさとゴブリンを探しに行くわよ!」


 ふふん、勝った!


 ともあれ、目的の薬草も手に入れたので、僕達は森の奥へとゴブリンを探しに進み始めた。


「うーん……フォレストスライムはすぐに見つかるのに、ゴブリンは中々見つからないわね……」


 ゴブリンを探し始めて1時間程。ライムは疲れた口調でそう呟いた。


「まぁ私達は駆け出しなんですから、いきなりゴブリンとの戦闘というのも無理があります。フォレストスライムで肩慣らしが出来てるんですから、今はそれで良しとしましょう」


 ライムの言葉にガルバが答える。


 ここまで僕達が戦ったのは、話にも出てきたフォレストスライムが三体だけだ。ガルバの言うように、連携の確認や、位置取りなどに注意しながら難なく戦闘をこなした。つまり肩慣らしだね。


 フォレストスライムとはスライムの一種で、主に森林の中に出没する魔物だ。体長は1メルト前後ある。

 スライムの特徴として、その見た目は大きな水滴みたいな形をしていて、丸い体は半透明。半透明だから外から見て分かるんだけど、体内の真ん中付近に核があって、その核が弱点となる。

 普通のスライムはほぼ無色なんだけど、フォレストスライムは仄かな緑色をしている。

 他にもフレイムスライムやソイルスライムなどの属性を宿した亜種の存在が確認されているけど、それらのスライムは高ランクの魔物となる為、僕達みたいな駆け出し冒険者が出会ってしまったらすぐに逃げる事が推奨されている。

 説明が長くなったけど、まぁフォレストスライムは普通のスライムよりも弱い種族なので、今の僕達の肩慣らしにはちょうど良い相手という事だね。


「それにしても……ちょっとフォレストスライムの数が多くない? この少しの時間だけでもう三体だよ!? ライム、フォレストスライムは飽きたよ……」

「確かに多いとは思いますが、所詮は魔物……たまたまこの辺りに集まっていただけでしょう。ほら、そろそろ進みますよ? ルウを見て下さいライム。元気いっぱいじゃないですか。目をギラつかせてフォレストスライムを睨んでましたよ」

「え? そ、そお? ぼ、僕もフォレストスライムは飽きたなぁ……なんて」


 フォレストスライムを食べたいと思ってたなんてとても言えない……!


 実はフォレストスライム……主食を森の果実としている為、食べると仄かに甘くてとても美味しいのだ。食感もゼリーみたいだしね。

 だから脂肪の多いオークや、臭くて固いゴブリンを食べた後の口直しにはちょうど良い魔物なんだよね。

 僕が人間を求めて森を彷徨っていた時、フォレストスライムを見つけたらデザートとして率先して食べていたくらいだ。とは言っても、人間には食べられないんだけどね。それでも本質が神狼の僕は美味しく食べられるのだ。

 そんな僕が何年かぶりにフォレストスライムと出会ってしまったんだから、さっきの僕がそんな事を思っていても仕方ない事だろう。


 ともあれ、フォレストスライムに飽きたというライムを宥めつつも、その後も僕達はゴブリンを探して森を進んでいく。

 それからおよそ30分後、ようやく一体目のゴブリンが僕達の前に姿を現した。腰には襤褸切れを巻き、手には棍棒らしき物を持っている。


「ようやく出たわね……! 行くわよ、二人とも! 〖マナよ。我が言葉に従い熱となれ。体内を巡りて力となれ! 《フォース》!〗──はぁあああッ!!」


 ゴブリンを見つけた途端、ライムは率先してゴブリンへの攻撃を開始する。唱えた呪文は身体能力を強化する魔法の《フォース》だ。ライムの体はマナの淡い光に包まれ、身体強化が成功した事を僕とガルバに教えてくれる。

 身体強化に成功したライムはその後、背中の大剣を留め具から外して両手で構え、そのまま一足飛びにゴブリンへと突撃した。


「私も続きます……! 〖マナよ。我が言葉に従い土と化せ。粘土となりて敵の足を束縛せよ! 《クレイバインド》!〗──ゴブリンの足を固定しました……! 任せましたよ、ライム!」


「ギギャ!?」


 ライムがゴブリンへと突撃するのに合わせ、ガルバはゴブリンの足を魔法で固定する。ガルバが呪文を唱えながら右手に持つ杖の先端を地面へと向ければ、途端にゴブリンの足元の土が泥の様に軟化し、瞬く間にゴブリンの足が地面へと沈んでいく。ゴブリンの足が膝まで沈んだ所で泥と化していた土は元の硬さへと戻り、見事ゴブリンの行動を止める事に成功した。ゴブリンは固定されてしまった足に驚いている。


「分かったわガルバ、ライムに任せて! やああああッ!!」


 そこへ振り下ろされるライムの大剣。ゴブリンは肩から腰を斬り裂かれる。その体は二つに両断されていた。


「グゲェエエエエ──ッ……!」


 体を両断されたゴブリンは、断末魔の叫びを上げて死んでいく。ゴブリンとの遭遇からゴブリンが死ぬまで、ライムとガルバの見事な連携によって僅か5分という短い時間で戦闘が終了していた。


 ……僕の見せ場も無いままに。


「やっと一体目ね! このままじゃんじゃん殺っちゃおう!」

「そうですね。ですがルウ……ルウも戦闘に参加して下さいね? せめて応援だけでも良いので」


 ようやく一体目のゴブリンを倒せて喜ぶライムと、せめて応援だけでもしろと僕に要求するガルバ。今の戦闘で僕に何を求めているのか甚だ疑問である。


 応援? そんなのする暇もなくあっさりと戦闘が終了したよ、ガルバ?

 それにライム? 今回ゴブリンが一体だったからあっさりと倒せたけど、もしも複数のゴブリンが隠れてたら危なかったのはライムだからね?


「ねぇライム。……今のライムの戦い方だと、もしも複数のゴブリンが隠れてたら大変な事になってたよ? それにガルバも、ゴブリンを束縛する魔法を唱えるなら、もう少し伏兵の存在を意識して範囲を広めにした方が良いよ? 次からは気を付けてよね! ……戦闘に参加出来なかった僕が言うのもアレだけど……」


 思わず口に出して言っていた。

 しかしパーティとはこういうものである。戦闘に危ない物を感じたのならば、それを必ず仲間へと伝えるべきだ。そして互いに意見をぶつけ合い、より連携を深めていく事が高ランクの魔物への対処にも繋がる。仲間の命を守る事にもね。

 個人で活動している冒険者ならば命を失うのも自己責任となるけど、パーティは一人が命を落とすと一気に全員が命を落とす危機に晒される。その意味も考えに含め、僕はライムとガルバに伝えたのだ。


「何もしてないルウに言われるのは癪だけど、ルウはガイアスさんからその辺の事を学んでいるからなぁ。うん、分かったよ。次からはライムも気を付ける!」

「確かにライムの言う通り……ルウはあのガイアスさんの娘ですからね。分かりました、私も次からはもっと視野を広げて対処する事を心掛けましょう」

「ありがとう、二人とも。僕も次からは戦闘に参加出来る様に頑張るね!」


 ライムもガルバも、僕の忠告を聞き入れてくれた。これでまた一つパーティとしてのレベルが上がったのではないかと思う。僕も次からは戦闘に参加出来る様に頑張ろう、それがパーティってものだからね。


 ともあれ、目標とするゴブリンの討伐はあと四体。僕達の依頼はまだまだ始まったばかりだ。

 初めての依頼を無事に達成する為にも、この後も気を抜く事なく、より連携を高めて頑張ろうと僕は思うのだった。

お読み下さり、ありがとうございます。

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