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異世界に持ち込んだのは幻想生物の肉体だった件。  作者: 青髭
第一章【異世界転生者達】
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DRAGON CARNIVAL

 最初の一年はろくな修行をしてもらえなかった。

 やらされた事といえば家事選択に買い出しともう使用人の扱いだった。

 朝日が昇れば起床、まず水汲みをするために近くに流れる川と屋敷を往復した。

 それから朝食の支度だ、俺たちが来てからはフィエロも生活圏を夜から昼にしてくれていた。

 それはいいのだが、やる事なす事に指摘もといいちゃもんをつけてくる。やれホコリが残ってるだ。やれ味付けがお粗末だと…抗議もしたが全くもって無駄だった。

 他にも庭掃除に廊下掃除と基本が掃除である。昔日常全てが実は特訓だったなんてカンフー映画があったがこれは明らかに違っていた。


 しかししばらくこの生活に慣れてくるとフィエロがとうとうその重たい腰を持ち上げたのだ。

 と言っても修行というには余りにも普通、平凡、一般的なものばかりだった。

 地形を活かして山道を山頂から麓まで往復倒れるまで、倒れたら三十分の休憩後に腕立て腹筋倒れるま で、空気椅子倒れるまで、倒れるまで、休憩三十分、倒れるまで、休憩三十分と鬼のような鬼普通な特訓がなされていた。

 それがこの一年での出来事だ。フィエロ師匠曰く、お前たちはまだ若く無く幼い、だから基礎を固めるべしとのこと、言わんとしていることはよくわかる。ただもう少し何かなかったのだろうか。


 次の一年は急に実戦に放り込まれた。内容を話す前に少しだけ補足を話しておきたい。

 今自分たちが住んでいるこの屋敷もとい山からは他にも山脈が見えるのだ。来た時はこの自称村のこともあってか見落としていたが山頂に登って初めて気がついた。

 ここから繋がっており、行き来も山頂から可能なので実質的にこの山も山脈の一部ということになる。

 でだ、このフィエロ師匠は国や兄となにやら色々あったようで嫌いらしく、しかし国に仕えているという奇妙な関係性を築いているらしく、しかしながらフィエロの役割というのは普通に聞いていても間違いなくマルキス辺境伯以上に大事なものなのだ。それはまず第一にこの山脈、ティスタ山脈は天を突く程高く険しく一般人は安々と立ち入れない危険地帯なのだ。山脈なので酸素も薄いし気温も低くかなり寒い、そうなると自然と上位高位の魔物が住み着くようになるのだ。上の方になるとドラゴンが住むとも言われているらしい。そして山脈の反対側、そこには別の国があるのだ詳しくはまたいつか話すと思うので省略するがそこからくる敵兵の撃退と山脈に潜む魔物が降りてこないように抑えるのがフィエロ師匠の役割ということだ。これを一人でやっているとなると本当に大変だと思う。


 ふと疑問になったので一度だけなぜフィエロが爵位を名乗らないのかと尋ねたことがあったが答えはしばらくの沈黙のあとに貰ってないだけだった。

 アルトは思った以上にフィエロと国に何かあったんだなぁと悟るのだった。

 長々と補足を喋ってしまったがここからは二年目の実戦的修行の話だ。

 分かりやすく言うと俺とキースはワイバーンのテリトリーに放り出されたのだ。

 場所は山脈の中腹、その少し拓けた巣の密集地帯に放り出されたのだ。

 最初は逃げたさ、逃げて逃げて超逃げて、いや、あれは逃げてなんかいない、急斜面に沿って転がって 行っただけだ。それでも巣に侵入してきた敵もとい巣に迷い込んだ哀れな餌をワイバーンが見逃すはずもなく追ってくる。転がり、走り、時には反撃して逃げる時間を稼いで逃げ帰っているとあることに気がついた。

 それはワイバーンたちがある一定の所から追いかけてこなくなったのだ。その場所というのはエルビス村の山頂と山脈の出入り口だ。やつらはこの境界線から決して来ないのだ。詳しくは分からないがきっと フィエロが関係しているのだろうと思っている。


 とまあ来ないとわかってホッとしていると後ろからワイバーンよりも怖いフィエロ師匠が現れて俺とキースをおもむろに掴んで先程命からがら逃げ帰ってきたワイバーンのテリトリーに投げ飛ばしたのだ。

 俺とキースは受身を自然と取れるように修行(ちょうきょう)されているので大事には至らなかった。

 最も俺は巨人の腕ブラキウム・エクス・ギガスの影響か同じ年齢の人たちよりもより体力も力も あったのであまり痛みは無かった。キースは既に半分ほど体力を削っていた。

 確かにアルト自身も余裕は無かったがキースを援護するぐらいならできると踏んでいた。

 結果としてそれは出来た。この年の終わり頃にはワイバーンにダメージを与えられるぐらいには進歩したのだ。


 え?なんだって?…ああ、そうだよ、まだ逃げ帰るだけで精一杯だよ。それが何か?

 これが現実です。


 ああ、それと年の終わりに事件が起きたんだ。

 どういうわけか山頂をテリトリーにしているはずのドラゴンが降りてきて俺たちを襲ったんだ。

 もう怖かったよ。あの牙、あの爪、あの眼で睨まれた暁には本気で漏らしそうだったよ。キースは漏らしました。

 歯がガタガタと激しく音を立てて鳴ったのはあれが初めてかも知れない。寒さにはもう慣れていたから さ、もう寒さのせいには出来ない訳、だからいやでも自分たちが恐怖している、怯えているって思い知らされたよ。

 けどそこは我らが師匠が助けてくれたんだ。いや、もう師匠が強いって改めて思ったね、自分たちとの戦いは遊びだったんだってわかったよ。

 だってさ、だってだよ?フィエロがドラゴンを一睨みしただけでさ、あの凶悪なドラゴンがだよ?まるで子犬か子猫のように弱々しい鳴き声を出して腹這いになって頭を垂れたんだよ。

 あれは本当に驚きを通り越していたね。どうにか平静を保とうとしたけど無理だった。その場で崩れてとうとう漏らしたよ。キースのことをもう言えなくなったよ。

 この年でわかったことは命は大事ってことかな。


 ああ、次の年はどんな地獄(しゅぎょう)が待っているのだろう…。

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