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異世界に持ち込んだのは幻想生物の肉体だった件。  作者: 青髭
第一章【異世界転生者達】
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Wild Challenger 5

 キースが到着してからは互いに隙間なく攻撃を繰り返していた。

 使っていてこの剣が素晴らしいことはよくわかった。まず今まで使っていた剣に比べて扱いやすいというところだろうか。重いのは重いのだがなんとかキースも使えている。

 いや、まだだいぶ使われている感が残っているが問題は無い。

 斯く言う自分はというと無論巨人の腕ブラキウム・エクス・ギガスのおかげで十分に使えている。

 しかし、こうもアルトとキースの交互の攻撃をひらりと躱すフィエロを見ると十分に使えているという言葉が徐々に徐々に遠ざかっていく気がした。


「キース距離を取れ!」

「わ、わかった!」


 アルトとキースはそこから後方に一メートル程距離を取った。

 体が熱を発して湯気を出す。汗もかなり出ていて非常に喉が渇いていた。

 そんな二人とは対照的にフィエロは未だ涼しげな表情をしていた。

 窓から入ってくる夜風に髪をなびかせているところなどまるで戦闘中とは到底思えないほど優雅であった。

 つまり、フィエロは全くと言っていいほど二人に対して驚異を感じていないのだ。

 どこまでも平静で冷静な様はフィエロが確かに貴族であることを示しているかのようでもあった。


「終わった?」


 まるで自分は傍観してたかのような言い草がこちらの神経を逆撫でてくる。

 おちょくっているのか又は格の違いから出るものなのか、どちらにしろこちらの戦闘意欲が萎えることは無かった。


「てりゃぁぁ!」

「うぉぉぉぉ!」


 掛け声と共に間合いを詰めて斬りかかる。

 右腕に渾身の力を込めてからの一撃、それは身の丈以上の力をアルトに与えてくれる。

 キースの剣が手のひらで弾かれるのを他所にアルトの一撃は突進する獣の様に一直線に心臓に向かった。

 が、フィエロは左手で剣を鷲掴みにした。刃が手のひらに当たっているにも関わらず血の一滴も出てはいなかった。

 先程と違って今のフィエロは油断をしていないことがよくわかった。


 アルトは剣を引き戻そうと両手に力を入れるが剣は微塵も動く気配が無かった。

 フィエロはにやりと笑うとアルトを思いっきり後ろへ投げ飛ばした。

 弾き飛ばされた剣を取りに戻っていたキースにぶつかり二人揃って廊下を転がる。

 その拍子に二人の剣は手から離れてエントランスの方へと滑って行った。


「いてて、大丈夫かキース…」

「うーん…」


 目を回していたキースを揺さぶって起こす。

 アルトはキースと剣を回収しにエントランスに向かった。

 そして今度は攻撃に出るのではなく向かいの廊下に入ってすぐの部屋に飛び込んだ。

 作戦を考えるためだ。


「多分だけどもう剣での攻撃は通じないかもしれない」

「じゃあどうする?」

「魔術しかないかな、けど効くかなってのが正直なところ」

「俺たち初歩しか知らないからなぁ…」


 詠唱しても妨害することなどフィエロにとっては簡単だろう。更に言えば詠唱を終えて魔術を使えたとしても効くかどうかである。しかしやらずに結論づけても無意味なのでやるだけやることにした。一度攻撃を与えて平然としているようなら別の手段を考えなければなるまい。主にアルトが。


 アルトたちが部屋に入って間もなく、フィエロは二人の気配がする部屋の前に立っていた。

 ドアノブを回して部屋の中に入る。相変わらず使わない部屋は手入れされておらず埃臭くて所々が傷んでいた。


「出ておいでよ。いるのは分かってるんだからさ」


 まっ、そう言われて出てくるやつはいないけどさ。そう思いつつ部屋の真ん中まで足を運んで立ち止まる。

 今度はアサシンみたいに奇襲かな?と部屋の中にあるクローゼットやタンスやベッドの下に目を配らせてみる。

 と、クローゼットの扉が勢い良く開いてアルトが飛びかかってきた。

 見ると丸腰で先程の剣は持っていなかった。

 アルトはそのまま右手に力を込めてフィエロに殴りかかったのだ。

 勿論フィエロはひらりと横に避ける。ついでにキースはと思い部屋を見渡すとキースはそこにいた。

 アルトが飛び出して来たクローゼットの中に、キースは右手をこちらに向けていたのだ。呪文を唱えて。


「求めるは火、イグ!」


 火系統魔術の初歩中の初歩、イグを一工程詠唱(シングルアクション)で放つ。

 キースの掌から人の頭ほどの大きさの火球が飛び出す。

 咄嗟に避けようとするフィエロだったが結果的に避けることはできなかった。

 アルトが避けようとした方向から飛びついてきたのだ。

 その行動に虚を突かれて足が止まってしまったのだ。

 アルトはフィエロの顔を覆うように飛びつく。イグはフィエロの胸辺りに目掛けていたのでアルトに直接当たることは無かった。

 いや、そもそもフィエロにも当たることは無かった。


 簡単なことである。フィエロは飛んでくる火球を瞬時に蹴って消したのだ。

 高く掲げられる右足にはズボンにすら焦げ目の一つもついていなかった。


「そんな!」


 キースのその言葉でアルトは失敗だと認識してフィエロから飛び降りる。

 着地して再びキースと屋敷内を逃げ回った。

 次なる作戦を考えるためにも時間が必要だ。

 案の定フィエロは油断こそ無いものの、こちらをナメている。そこを利用して精一杯頭を回転させた。


「いつの間にか鬼ごっこになっちゃったよ…って俺文字通り鬼じゃん。まぁいっか」


 フィエロはのんびりと散歩をするように廊下を歩くのだった。

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