夜は眠れるかい? 2
バルトロメオ達が村に戻っていみると村は火の海と化していた。
家は壊され、金目のものや食料は既に奪われたあとだろう。
「なんでぇ、まだ人がいるじゃん」
火の向こうから声が響く。バルトロメオ達騎士は剣を構えて警戒する。
しかし警戒して現れたのは子供だった。
見たところ十二歳ぐらいの子供だ。
赤混じりの金髪逆立て、荒々しく燃え盛る紅の瞳。
この村の子供ではない。武器らしい武器は持っていないが盗賊の仲間かも知れない。騎士たちは警戒を解かずに会話を試みる。
「君は盗賊の仲間なのかい?」
よくある事ではあった。親を亡くし、食うに困った子供が窃盗や追い剥ぎをし、盗賊の仲間に入ることはなんら不思議ではない。
しかし、子供の口から出たのは予想外の言葉だった。
「仲間?違う違う、俺が!この盗賊団のボスだ!!野郎ども行けや!!」
盗賊のボスと名乗る子供が指を突き付けて合図をする。
その瞬間に隠れ潜んでいた盗賊が騎士たちに襲いかかる。
「へへ、騎士だぜ、さぞいい装備をしてんだろうなぁ!」
「やっちまえ!」
数人が切りつける。だが黙って切られてやるほど騎士も優しくはない。
圧倒的な力量差で瞬時に無力化して組み伏せる。
「どうやら君たちでは手も足もでなさそうだな」
バルトロメオが周囲に居る盗賊に向かって言った。
「ボス!」
捕まった盗賊が助けてと目で訴える。
その光景を見て騎士たちはこの明らかにこの場にいる誰よりも歳の低い子供がボスなのだと再認識した。
「おいおい、いくらなんでも弱すぎだぜ…」
「た、頼むよぉボス!」
「俺たちを見捨てないでくれぇ!」
「分かった分かった。俺も仲間を見捨てるほど外道でもないんでな。助けてやるよ」
おお、と捕まった盗賊たちが歓喜する。
その会話を黙って聞いていたバルトロメオは一層警戒した。
間違いなくこの子供は魔法魔術適正者、即ち魔術師であると。
盗賊たちが松明を持っていなかったところを見て、この放火が魔術によるものだと推測できる。
「子供だからといって容赦はせんぞ!この行いは償ってもらう!!」
「あっそ」
バルトロメオが子供に突撃する。剣は使わない。牽制だけに使い拳で意識を奪う。
一瞬にして間合いを詰める。子供もそれに呆気を取られたようで目を丸くして後退りをした。
しかし遅いバルトロメオの拳が子供の腹部を抉るようにくい込む。
胃液を吐き出し、苦悶に顔を歪める。
これでは詠唱もできまい。
が、しかし、次の瞬間にはバルトロメオは炎に包まれていた。
「な、なんだと!?」
「カハッ!ゲホッ!テメェ…」
無詠唱などと言う高度な技術をこんな子供が?
しかし威力自体はさほどなく、バルトロメオを包んでいた炎もしばらくして消えていた。
それだけの実力がありながらとバルトロメオは思う。
しかし彼は罪を犯している。ならば自身が取るべき行動は。
と、子供の様子が変わった。
それは驚きに近い表情だろうか。困惑にも見て取れる。
「近くにいるのか?…いや、だったら今の今まで気がつかないはずが…」
何かをブツブツと言っている。
「おいそこの騎士、あっちには森があったはずだよなぁ!?タダの森じゃねーのか!?」
「あそこは魔の森バロード、魔物の住む森だ。それがどうした!」
「なるほどなぁ…それでか」
「いや待て、あそこの森は今突然現れた巨人がいる。貴様も見ただろう!?」
バルトロメオは何かのズレを感じ取ってそう発言した。
この村からも巨人の頭は見えたという。
ならば近くにいた盗賊たちも見ているはずだ。
なのに、彼らは知らない素振りを見せてくる。
「巨人?…なるほど巨人ときたか。じゃあ早くお前らを始末しないとな!目の前のご馳走がどっかいっちまうよ!!」
「なに!?」
次の瞬間、バルトロメオの目の前まで子供が高速移動をした。
そのまま運動エネルギーに従ってのパンチ。
炎を纏った拳はバルトロメオの鎧を凹ませて彼方へと吹き飛ぶ。
結局のところ、奴らが巨人に気がつかなかったという謎は解明しなかった。
しかし、一つだけ今ので理解した。
「ま、まさか…」
バルトロメオが起き上がりながら言う。
今ので体はボロボロになっていた。
「やっと気がついたか。俺に端から魔術なんて素養はねーよ」
つまり、この子供は特異体質、コルプス・エクス・デウスということだ。
「俺はルイン・クライク。不死鳥仕掛けの心臓を身に宿している。お分かり?」




