夜は眠れるかい? 3
暫し見つめ合う二人、ルインとバルトロメオ。
先に口を開いたのはルインだった。
「てな訳で俺はその巨人をぶち殺す」
「なんだと?」
それは矛先がこの村から巨人に変わることを示していた。
確かに変わるがおおよそ取られた後だろうが…。
バルトロメオは荒れた村を見渡す。
少なくともここで手を引かせれば良い、人的被害は無く、物資もまた調達すればいいだけの話。
ここは交渉して不確定要素の高い巨人を退治してもらう方が今後のためにもなるだろう。
「拘束を解除しろ」
バルトロメオが盗賊を捉えていた騎士たちに命令を下す。
「た、隊長!?」
「んー?どういう風の吹き回しだ?」
「勿論タダというわけにはいかない。それにこれは悪い話でも無い」
「なんの話をしてる?」
「交渉の話だ。こちらとしてもあの巨人を野放しにはできない。いつこちらに牙を向くか分からないからな、それに君はあの巨人を倒そうとしているのだろ?だからここで手打ちにしてくれ、今盗った物はやる。だから一つ頼まれてくれ」
「なに?」
「あの森にまだ子供が一人残っているはずなんだ、捜索してはいるが見つからない!保護してやってくれないか!?無論私らも巨人退治に協力する!!」
懇願するバルトロメオを他所にルインは冷静に状況を理解した。
あぁ、なるほど、こいつらは知らないんだったな、ほぼ間違いなくその子供が巨人だろう。
なんでもうそこまで力を引っ張り出したかは皆目検討もつかないが…。
「おいそこの騎士!あの巨人を近くで見たのか?見たのなら様子を詳しく聞かせろ!」
「了承したとみていいんだな?」
「うるせぇ、黙って俺の質問に答えろ」
「…あぁ、見た。巨人は正気を失っているのかこちらからの反応は無く、ただひたすらに森に住む魔物、魔犬オータスを殺していた」
なるほど、これで大体の予想がついた。
これは?とてつもない?チャンスでは?
自然とルインの顔が綻ぶ。それは年相応とも邪悪とも呼べる笑だった。
ルインはこう考えている。そのガキは暴走したんだと。
「ガキはいくつだ?」
「分からないが君よりは小さく、一緒にいた子と同じぐらいなら四、五歳ぐらいだろう」
これは更に都合が良い。その歳なら力を使えてもまだまだ弱い、暴走で強力になってはいるが意識はないと見た、いける!
「えーと、そこの騎士団長?」
「なんだ?」
「いいぜ、ここで手を引いてやる。巨人も俺がぶっ殺す」
「本当か!?では手を…!」
貸そうと言いかけてルインに手で制される。
また攻撃かと思い身構えてしまった騎士の面々。
「いい、いらねぇ、俺一人でやる」
「なんだと?」
こいつらに途中で気づかれても困るからな。
てかこいつら知らねーんだなその子供が特異体質って。
まぁ、知らねぇなら知らねぇで都合がいいけどな。
ここのお偉いさんが黙ってるのか単に調べてないだけかは知らないがどーでもいいか。
「おい、早く仲間を解放しろよ。ぼさっとしてんな」
「あぁ、わかった」
ルインに急かされてバルトロメオが他の騎士に合図を送る。
騎士たちも命令に従って盗賊を開放した。
「アニキ!」
「助かりましたぜ!!」
「お前らはとった物資を先に運んでおけ、俺は森に行ってくる」
「了解ですぜ!」
そう言うと盗賊たちはどこかへと走っていった。
さてと、じゃあ森に向かうかね…。
「本当に手を貸さなくていいのか?」
「いや、しつこいね騎士さん?いらねーよ。俺より弱いやつとかいても邪魔。おわかり?」
それを聞くとさすがのバルトロメオも押し黙る。
それだけ確認するとルインは舌打ちしながら森へと身体を向けた。
バルトロメオたちは何をするのかと思い見ていたがそれは予想を超えていた。
ルインの背中から炎の翼が生えたのだ。
それを自在に操り空を翔ける。
「へー、ド素人の暴走にしてはえらくカッコイイ騎士甲冑じゃねーの」
その容姿を見ても怯むことはせず、逆に昂ぶりを感じるルイン。
そのまま森まで一気に距離を進む。
わずか数秒足らずで森に到着して巨人を見据える。
確かにあの騎士が言っていたように正気は無く、ただひたすらに剣を振るい拳を地面に叩きつけている。
キャインと下から魔犬の悲鳴が聞こえるので未だにその行動を繰り返しているのだろう。
これじゃ感じ取れないわけだ、魔力がそもそも高い魔の森に加え何かしら結界が張ってある。
大方魔物を外に出さないためのようだが完全に遮断出来る程には強い。
巨人に目を戻すルイン。
「あ?」
違和感を感じた。
暴走状態なのは明白だ、しかしそれだけでは説明できない何かがあった。
「いや、なんでもねぇ、とっとと潰すぞ!」
頭を振って違和感を消し、ルインは拳に炎を纏わせて突撃した。
狙うは頭!先手必勝!兜が叩かれる鈍い音が響いて巨人を震わした。




