グランプリの夜、溶け合う境界線
結果は、満場一致でのグランプリだった。頭にキラキラ光るティアラを載せられ、溢れんばかりのトロフィーを抱えた俺(真鈴の身体)は、舞台裏の誰もいない通路で、ようやくへたり込んだ。緊張が解けた途端、メイド服に押し込められた胸の重みや、ストッキングが密着する股間のむずがゆい感覚が、ドッと押し寄せてくる。「……死ぬかと思った」「お疲れ様。私の身体、よく頑張ってくれたわね」暗がりの向こうから歩いてきたのは、俺の身体(中身は真鈴)だった。彼女は、ティアラを載せて息を切らしている自分の本来の身体(俺)を見下ろし、どこか愛おしそうに目を細めた。「世古……。お前の身体、本当に凄いわ。ペンを握った時、世界が全部キャンバスに見えるような、不思議な感覚がした」「そうよ。これが、クリエイターとして生きる私の世界。……でも、それを引き出したのは、私の言葉を信じて手を動かしてくれた、あなたよ」俺の身体をした真鈴が、そっと手を伸ばし、真鈴の身体を持つ俺の頬に触れた。男の大きくて硬い手のひらの感触が、今の俺の繊細な皮膚に、驚くほど熱く伝わってくる。鏡を見るような、けれど決定的に違う二人の視線が、夕暮れの舞台裏で静かに交錯した。「ねえ、グランプリ。サークルのみんなが、今夜の打ち上げで主役のあなたを待ってるわよ。……そのメイド服、私が脱がせてあげましょうか?」「……からかうなよ」男の顔でいたずらっぽく微笑む真鈴と、真鈴の顔でティアラを揺らしながら顔を赤らめる俺。身体の感覚も、性別の境界も、もうどちらでも良くなるような、奇妙で濃密な学園祭の夜が更けていく。




