表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
”よくある話”と幸せを諦めた令嬢は、その”よくある話”で幸せを取り戻す  作者: 澪ナギ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/6

第四章

―4―


「本当に変になりそう……」

「恋!?」

「いやいろんな意味で」


 そんな変になりそうなパーティーを終えて、次の日。私の家に、朝から手紙が届いた。

 相手は、リンクウェル様。


 拝啓 シェイレーヌ嬢と始まり、書いてあるのは一文だけ。


 今日君のことを迎えに行く


 そんな十五文字が綴ってあった。


「……隣国の王子様じゃ……?」

「少しこっちに滞在するの。じゃなきゃパーティーもこっちで開かないでしょ?」

「まぁ、それはそう……」

「ふふっ、行っておいでよ! 楽しんできて!」

「行かなきゃだけども……」

「帰ったら女性扱いとか全然わかってない従兄さまのエピソード、ぜひ聞かせて!」

「すごい楽しそうだね……?」


 しかもわかってないの確定なんだそこ。あれ? でも。


「……慣れてるってわけじゃないけど、わかってなくもないような……?」


 昨日の感じを見ると、そんなイメージだ。だから思わず、こぼせば。


「え、え!? どこ、どこまでっ、どこまで進んだの!?」


 詳しく!! と詰め寄られて、慌てて首を横に振る。


「ち、ちがう!! 違うから!!」

「もう結婚する!?」

「まだなにも決まってない!!」

「”まだ”!?」

「あぁあもうっ! 落ち着いてよレイカリラ!!」


 テンションがどんどん上がっていくレイカリラをなだめて。

 なんだかこの二人にすごい振り回されているなと、そっとため息をついた。



 朝から落ち着かない時間を過ごして、あっという間に夕方になり。


「…………」


 門へと行けば、美しいお方がいる。

 女子生徒の注目を集めるその人――リンクウェル様は、どこか退屈そうに外の方を眺めていて。


「!」


 こちらを向いて、目が合った。――瞬間。


「シェイレーヌ嬢」


 ふわっと、その顔がほころぶ。それに反射的に胸が高鳴った。それを収めるように深呼吸をして、こちらに向かって来るリンクウェル様に礼をすることを忘れない。


「ごきげんよう、リンクウェル殿下」

「堅苦しいのはいらん。楽にしてくれ」


 できませんけども??

 そんな思いを知ってか知らずか、リンクウェル様は私の手を取った。


「、あの」

「どこか行きたいところは?」


 手、というのはきっと聞いてくれないのだろうというのが雰囲気でわかった。つくづく血縁だと、その強引さに少し笑みをこぼして、話に乗る。


「いえ、殿下――」

「名前」

「……リンクウェル様がどこか行きたい場所があったのでは?」


 聞くと、ぴたり。彼は止まってこちらを向いた。その顔は、どこか。


「……なにか不満でも……?」

「いろいろと」


 それを隠さないリンクウェル様に、何か不敬かと一気に焦る。けれど思い当たる節もない。


「えぇと……」

「……」


 さぁどうする。でも私はエスパーじゃない。聞かなきゃわからない。そう、聞かなきゃ――。


 ……あぁ。


「……――」


 こうやって察せないから、私は婚約者として見られないのだろうか。そう、彼を思って胸が痛んだ。そうして、出るのは。


「……申し訳、ありません」


 せめて、笑って。謝罪をしたら、目の前の人はとても驚いている。この人こんなに表情豊かなのかと的外れなことも思いながら、首を傾げたら。


「いや、俺の方がすまない」

「え」

「子供じみたな」


 口元を隠して、目を背ける。気分を害しただろうかとその目を追うと。


「……今度はなぜ、照れたお顔を……?」

「~~っ言うな」


 少し顔を赤らめているリンクウェル様に少しの高鳴りと、戸惑いが押し寄せる。どうしていいかわからず、見上げては違うところを見て、また見上げ、違うところを見れば。


「……」


 視線の先に、ベイル様。彼は、


「……レイカリラ……」


 先を歩くレイカリラに声をかけようとしていた。それにまた、心が痛んだ時。


「、わ」

「行こう」


 まるでそれを見せないかのように腕を引かれて、勝手に足が歩き出す。けれどその勢いの良さは数メートルほどで、腕は引かれなくなりゆったりとした足取りに変わった。


「……」

「……」


 歩いていけば、声が落ちてくる。


「先ほどの」

「はい」


 さっき、は。ベイル様の話? そう思ったら、どうやら違うようで。


「悪かった。子供のような態度で」

「え、あ、いえ」


 そっちか、と思考を戻し、おずおずと見上げる。視線の先のリンクウェル様は、少し居心地が悪そうだった。


「……もう少し気楽な感じで話してほしかった」

「……」

「すねただけだ」


 そうして、どこか照れた様子も混じった目でこちらを向いて。


「……子供じみた男は嫌か?」


 なんて聞かれては、心臓が勝手に跳ねてしまう。


「い、や、あの」


 どうする、なんて言えばいい?

 レイカリラ相手なら、そんなことない可愛いよなんて言える。でも異性はどうだ。一般的に男性はかわいいと言われるのは好まないと聞く。異性。異性と言ったらよく知るのはベイル様くらい。じゃあもし、聞かれたら――いや聞かないなそんなこと??

 聞かれたこと一切ないよ、もうずっと、逆にありがたいくらい対等を求められたよ。男女の関係なんて一切求められなかったよ悲しいくらい。


 じゃあ、じゃあっ。


「――……」


 もしも、私の理想が叶うと、したら。

 そう考えたら、すとんと心に答えが落ちる。いざ言おうとすると、少し照れてしまうけれど。


「……に」

「ん?」

「たまになら、そういうのも、いいと思います」


 自分を求められて、すねられるなんて。なんて羨ましいのだろう。毎回やられると困ってしまうけれど、でも、たまになら。



 そうして欲しかった。



 私はどんな顔をしていたんだろう。ふっと笑い声が落ちてきて。


「……!」

「困らせたな」


 困ったように笑うリンクウェル様に胸が締め付けられた。


「すみません」

「謝ることじゃない。そもそも困らせたのは俺だ」


 またゆるく、手を引かれて。


「すまないな。あなたのことになると余裕がなくなる」


 なんて、また心臓が高鳴ることを言う。感情のアップダウンで今日はどうにかなりそうだ。


「……リンクウェル様はとてもたちが悪くいらっしゃる……」

「はっ、人のことは言えないな?」


 互いに、先ほどの空気がなかったように笑って。リンクウェル様の手に導かれるまま、私たちは街へと繰り出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ