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これなら
「トア……?」
デノスはそのただならない様子のトアをみて、同じく顔をこわばらせる。
「私は、この国のことが好きです。でも、それ以上に……この国の人たちが大好きなんです。だから、分かる」
「……なに……?」
「あなたのその容姿は……見紛うことなくこの国の人で、私が知っている人そのものです。でも私が知っている彼は、確かに服装には無頓着な方でしたがそんなつまらないお世辞を言う人ではなかった。あなたは一体……誰なんですか?」
一段低い声で再び尋ねるトアに対し、目の前の男は余裕を崩さず、笑いながら。
「おっと、失礼しました! この姿じゃ分かりませんよね!」
男はそう言いながら――どこからともなく鉄兜を片手にとり。
「これなら分かるだろ?」
鉄兜を頭に装着しながら、そう言い放った。