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一か八か
「グゥオオオオオオオオ!!」
ワンダは距離を詰めようと、車並みの速度で真っすぐに突進してくる。
(普通なら離れて戦ってた方がよさそうだが)
ワンダの速度はクシアの速度には及ばない。クシアは適度に離れた距離を保ちながら、まるで絡まったケーブルかのように細く複雑に闇を放出させる。
だが、その闇がワンダに触れても、ワンダの体に傷一つつけることさえなく消滅していくだけで、止まることなくクシアに向かって突進し続けている。
(俺の闇が効かねぇとなると……)
敵からの攻撃は通り、敵への攻撃が通らない状態。
普通であれば、勝ち目のない勝負だが――
「一か八か!」
――鉄兜の奥で歪んだ笑みを浮かべたクシアは、津波のような闇を放出した。