燃え盛るものは
――こんなときに思い出した、昔の話。
そして、意識は今に戻る。
「そうか。私もかつて、君と同じ選択をしたことがある」
イーヒリットと会ったあの時のことを思い出していた私は、今もあの炎の中にいるであろう彼へぽつり呟く。
実際のところ、本当に命を懸けて彼を助けたのはそれから大分後の話ではあるのだけれど……今大事なことはそこじゃない。
本当に大事なことは……今まで、忘れてしまっていたけど。
忘れてしまう前までずっと心に残っていたのは、命懸けで彼を助けた時のこと、そして、そのことを彼女に話したときのことだった。
『――なんてことがあったんです』
『シアンちゃんは、その時どうしたの?』
今は亡き大切だった人の声が聞こえてくる。
どうしてこんなときに聞こえてくるのだろう。
『上に掛け合ったんです。もし彼が重大な罪を犯したら……力の使い方を間違えるようなことがあったら、私が責任をもって首を差し出すなんていって』
『どうして、そこまでしたの?』
いや、その終始優しい声だけじゃない。
彼女の姿をすぐ隣に感じる。
これは、幻覚だろうか。あるいは……
『……分からないんです。もしかしたら、私がやったことは正しくなかったのかもしれません。でも、なぜか……彼を助けたいと、思ってしまった。どうしても見捨てることができなかったんです』
『……フフッ』
『やっぱりおかしいですかね? 大した面識もない相手に、勝手に助けたいだなんて思って、命まで賭けて……すみません、バカみたいですよね』
『あぁゴメンゴメン! 違うの、そういう意味で笑ったんじゃなくて!』
『…じゃあどういう意味なんですか?』
『嬉しかったんだ。シアンちゃんって、やっぱりいい人なんだって分かったから』
彼女の姿が、不意に前を軽く駆けていく。
私の少し先で可憐に振り返ったその表情、その穏やかな笑みを忘れられるはずもない。
『シアンちゃん』
「……なんですか」
『もしこれから先、どうすればいいか分からなくなったら……シアンちゃんがしたいと思ったことをするべきだと思うよ』
「どうしてですか?」
『だって――』
今も記憶に残っている、彼女の優しい表情とその後ろから差し込む夕暮れの光。
それは太陽の優しい光が目に焼き付くように、私の心に焼き付いたまま今もなお消えてはいなかった。
――――今、私の目前には、"私が向かうべきだと思っているもの"が広がっている。
『きっと、どんなときでも……シアンちゃんがしたいと思ったことは間違ってないって、信じられるから』
今になって思い出した、彼女のその言葉は。
一度消えたはずの、私の炎を再び灯していく――――




