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かつての話 その1


 ――それは、今からだいぶ昔の話なのだけれど。


 その時の私は、帝国から少し離れた場所にある鉱山で採掘者達の護衛を務めていた。


 その鉱山からは豊富な種類の鉱物が採取され、帝国にとって貴重な財源の一つになる。

 だが、帝国の管轄土地内にあるとはいえ、流石に鉱山を含む土地全域を外壁で囲うことはできない。外壁で囲われていないせいもあってか、人知を超えた怪物や、国から外れたならず者たちが鉱山やその付近に滞在していることも少なくない。


 採掘者達だけで立ち入るには危険な場所だ。

 そこで帝国は、兵の一部を護衛として彼らに寄越し、財源となる各種鉱物を採掘させることにしていた。私はその護衛に駆り出された一人だった。


「……こんなに見晴らしのいい場所に、賊なんているのかしらね」


 掘り進められた穴の外で見張りに立つ私は、そこから遠方に見える帝国を眺めながら一人呟く。

 ここまでは馬車を利用して来ている。少し登ったところから掘り進めるのは、いざ何者かに襲撃されたときに、地の利を利用して少しでも早く逃げられるようにするため……という、長年鉱物を採取してきた我が帝国の隠れた知恵によるものらしい。


「シアン」


 誰かが私に声をかけてきた。

 振り返れば、そこにはいつも見慣れている金髪マッシュ姿の同僚がいた。 


「交替だ。休憩に入っていいよ」

「えぇ、ありがとう」

「…どこへ?」

「せっかくだし、てきとうにふらついてみるわ」


 私はそう言いながらその場を離れ、てきとうにふらふらと歩く。


「気を付けて」


 彼はそれだけを呟くように伝え、私は手だけ振ってその場を後にした。

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