02 栗栖慧の場合。
僕には好きな人がいる。
けど、それは叶わないと思ってた。
男の僕が、男の城田くんに好かれるはずがないと、ましてや付き合えるなんて思ってもいなかった。
叶わない恋だから、いつも彼を目で追っていた。
いつも追っていたから気が付いた。
もともといろんな女性に手を出していたけど、
城田くんの傍にいつもいた澤村くんが一人の女の子と仲良くなるにつれて、
どんどん女性関係が激しくなっている城田くんに…
僕が城田くんのとこが好きだと気が付いたときにはもう澤村くんが城田くんの傍にいた。
澤村くんは幼馴染だから一緒にいることは普通のことなんだけど…。
その場所が羨ましくて、澤村くんに嫉妬していた。
僕が城田くんを見てるように、城田くんはいつも澤村くんを見てた。
僕を見てほしくて、僕の存在に気が付いてほしくて、勇気を出して城田くんに告白することを決意した。
もし、これで断られたら諦める覚悟で…
もう苦しそうな城田くんを見るのも辛くて…
その日は城田くんは一人でいて、後姿からして元気のなさそうだった。
告白すると決意したものの正面から言う勇気がなくてその後姿に声をかけた。
「ねぇ、城田くん。僕、城田くんの事が好きなんだ…。だからその…」
覚悟を決めたはずなのに、結局は振られるのが怖くてその場を去ろうとしていたのに、城田くんに腕を掴まえられて、僕の想像を上回る行動力だった。
僕は城田くんが僕を見てくれるなら、なんでもよかった。
家に連れていかれた後の事は童貞の僕でも理解していて、男の僕でも相手をしてくれることが分かって嬉しかった。僕も澤村くんのように呼び捨てにしてほしかった。だから慧と呼んでもらえることになって、嬉しかった。
だけど、僕に城田くんを縛ることは出来なくて、嫌われたくもなくて
「急に誰にも手を出さなかったら、変に誤解されちゃうよ?僕は城田くんを束縛しないし、女の人を相手にするんだったら何も言わないよ?」
それでも、僕以外の男の人には触れてはほしくなくて、釘を刺していた。
その日から城田くんは月1くらいは女性を相手にして、それ以外は僕の相手をしてくれた。
城田くんの隣には僕がいるようになった。
たまに、澤村くんが僕らのことを見ていると気が付いているけど、それを僕が城田くんに言うことはしない。僕はそんなに優しくないし、やっと手に入ったのに簡単に手放すことはできない。
城田くん、僕嫉妬深くてごめんね?それでも、君が好きなんだ。だから、簡単に戻すこともできないし、城田くんの隣を譲りたくないんだ。
けどね?最初は僕を見てなかった城田くんも最近はちゃんと僕を見てくれてるんだよ?僕はそれだけでも幸せなんだ。傍にいることさえ叶わないと思ってた頃に比べて、僕は嬉しい限りなんだ。
澤村くんが城田くんを失ってどんなに後悔してても、先に手放したのは彼なんだから。ほしくてほしくてしょうがなかった城田くんの隣を簡単にも手放した澤村くんが悪いんだよ?
「慧。行くぞ」
「うん。・・・あ、ちょっと待ってよ!早い~」
「わりぃ」
「にひひ」
「何か嬉しいことあったのか?」
「城田くんの傍にいること~」
「そか、俺のそばを離れんなよ?」
「うん!」
城田くんの隣は僕のものだよ?
少しの時間は女性に渡せても、他の時間は僕のもの