1話 破格のアルバイト
新連載です。よろしくお願いします。
今回も、最後まで書き終えているので、ちゃんと完結できるかと(*^-^*)
「ねえ、しずくちゃん、もしよければ、夏休みの間だけアルバイトをしてみない?」
「アルバイト?」
病院の検査から戻り、扇風機の前で冷えた麦茶を飲んでいたしずくは、唯一の家族である叔母の天音から、突然バイトの話を持ちかけられた。
「私の古い知り合いが開いている小さな喫茶店のアルバイトなんだけど、しずくちゃんの事を話したら、是非お願いしたいって頭を下げて頼まれちゃったのよ。どう? やってみない?」
そう話しながら、この小さな神社の神主である叔母が、バイト募集の紙を手渡してきた。
場所は隣町で、仕事内容は軽食の調理で時給千八百円──小さな喫茶店のアルバイトとしては、破格の給料だ。
「二階に住居スペースあり。希望者は住み込みも可。食費の支給あり──喫茶店のアルバイトなのに、住み込みもOKっていうのは珍しいね」
「それだけ手が足りなくて困っているみたいよ」
「うーん。条件は申し分ないし、こちらとしては願ったり叶ったりの内容だけど、私の体の事を考えるとなあ。お店の人に迷惑はかけたくないし……」
「大丈夫。心臓の病気の事はもう先方に説明済だから。それも承知の上で、しずくちゃんの料理の腕を借りたいんですって。もちろん、絶対に無理はさせないっていう条件付きでね」
「そういうことなら、やってみようかな。天音叔母さんの知り合いなら、きっと信頼できる人だろうし」
「ええ。彼はとてもしっかりしているから、何も心配はいらないわ。きっと、しずくちゃんとも上手くやっていけると思う」
叔母の天音とそんな会話を交わした翌日。
朝早く、社務所を兼ねた自宅を出たしずくは、つばの広い麦わら帽子をかぶり、紺色の半袖シャツにジーンズとスニーカーという出で立ちで、手渡された地図を片手に見知らぬ町を歩いていた。
「ええと、今サルスベリの木がある家を左に曲がったから、次はしばらく歩いた先にあるトンネルを抜ければいいんだよね。トンネル、トンネル……あ、もしかしてあれかな?」
夏特有の強い日差しの中、行く手に見えてきたトンネルは、乗用車一台がぎりぎり通れるくらいの幅しかない。入口に立つと、明るく見える出口の向こうに、アスファルトの道が続いているのが小さく見えた。
「はあ、やっぱり日陰に入ると涼しいなあ」
襟足長めのふわりとしたショートヘアが、汗でぺったりと首筋に張り付いているのを、パタパタと地図であおぎながらトンネルの中を行く。辺りは暗いが出口が見えているので特に怖さは感じない。
涼みながら歩いているうちに程なく出口に行き着いたしずくは、外に出た瞬間、驚きのあまり声を上げた。
「え? これって何が起こったの?!」
トンネルを出る直前まではアスファルトの道が見えていたのに、今しずくが立っているのは、そこかしこで木漏れ日がキラキラと舞い踊っている森の中だった。
お読みいただきありがとうございました。
もし面白かったと思っていただけましたら、お星さまをポチっていただいたりブクマやリアクションで応援していただけると、とてもとても嬉しいです!




