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第83話 ダンジョンに迫る危機

「な、なんと……これがダンジョンの起源だというのか! 道理で……」


 コンが明かしてくれたダンジョンの秘密。

 驚きのあまり、萌香の頭髪が逆立っている。

 ……まあ、養成校中退の俺にとっては凄いな、くらいの感覚だが、

 ダンジョン庁に所属する萌香にとっては青天の霹靂なのだろう。


「つまり、ダンジョンは日本の復興を助けるために出現したって事なのか?」


 俺は満点のリアクション中の萌香に声をかける。

 建物を建てたり、周囲に様々な効果をもたらすダンジョンスキル。

 確かに『復興』の為に都合の良いものが揃っている気がする。


「あ、ああ。細かく体系化される前のダンジョンスキルは、そのほとんどが戦後復興に使われたと聞く」


 俺の言葉に頷く萌香。


「高度成長期が始まるまでの十数年間……だっけ?」


「……この辺りは、養成校どころか一般教養レベルだぞ?」


 呆れた様子の萌香。

 そう言われると高校の授業で聞いた気もする。


「荒れ果てた農地の再生に、集合住宅の建築……現代でも物流を支える幾つかのトンネルもダンジョンスキルを駆使して掘られたのだ」


 焼け野原になった都市とインフラが、僅か10年で世界標準に追いつく……奇跡と呼ばれた復興は、ダンジョンスキル無しではありえなかった。


「だが、復興がひと段落した後。余裕の出て来た国や民間企業はダンジョンスキルの研究を熱心に進めた……その結果」


「だんじょんすきるの加護を、個人、団体を利するため使うようになったのじゃな」


 ぴょんっ


 萌香の言葉を捕捉しながら、俺に飛びついてくるコン。

 付喪神としての力が高まっているからか、コンの身体が少し大きくなっている気がする。


「コンの言う通り、復興ではなく企業の利益のためにダンジョンスキルを使う事が一般的になったのだ」


「ダンジョンスキルによる列島改造計画、だっけ?」


「ああ」


 世界的なスポーツイベントが行われた後、時の首相は『もう戦後ではない』と言い放ったという。


「巨大資本が全国津々浦々のダンジョン開発し、ひたすら金になるダンジョンスキルの獲得と地脈コイン由来の素材の獲得を目指す職業探索者が大幅に増えた」


「ふおお、歴史の授業で聞いた事があるヤツ……第二次ダンジョン黄金期だっけ?」


 お茶を飲みながら相づちを打つ理沙。さすが現役の学生である。


「にひ、でもほとんどが失敗したんでしょ?」


「ああ。採算性を度外視した開発に投機マネーが流入。更なる乱開発を招く。そんなバブルが……ある時一気に弾けた。地脈の汲み上げすぎが問題になったのもこの頃だ」


「無理なくダンジョンを使うため、政策が大転換されて今に至るんだよな?」


 先ほど萌香が話していた、ダンジョン用のリミッターが登場したのもこの頃だ。


「うむ。だが、各地のダンジョンが受けたダメージはあまりにも大きく。国中に湧き出す地脈の総量は減り続けている。……一部の上級ダンジョンを除いてな」


「それは……」


「表向きは、ダンジョン経済の根幹をなす主要ダンジョンを保護する為……だが」


『その実は、一部の大企業と上級探索者ギルドがその富を独占する為に行われたのだ』


 まるで萌香の言葉を捕捉するように、じいちゃんの声が映像から聞こえる。


 ヴンッ


 映し出されたのは、色の違う棒グラフ。稼働ダンジョンの総数はここ十年以上減り続けているのに、穴守グループが所有する主要ダンジョンから回収される地脈コインや資源の量はむしろ増えている。


「私たちの旭川洞穴の周りにも幾つも洞穴があったのですが、御役所の指示ですべて閉鎖されました」


「なるほど……地方のダンジョンの”蛇口”を閉めることで、中央のダンジョンに地脈を集中させる作戦か」


 忌々し気に吐き捨てる萌香。レラの言う御役所には……確実に篤さんが絡んでいるだろう。


『その影響か、各地の上位ダンジョンに負担が掛かっていてな。看破できぬ歪みが溜まっておる』


「!!」


 じいちゃんの言葉にハッとする。どうやら話が核心に迫ってきたようだ。


『このままでは歪みが暴走し、大災厄を引き起こす……そのことを危惧したワシは、倉稲の地で準備を始めた』


「そしてわらわは盟約を結んだのじゃ。鉄郎と……その想いを受け継ぎしトージとな」


 俺の肩によじ登ったコンが、ぎゅっと俺の頭にしがみつく。

 温かいコンの体温を通して、じいちゃんの思いが伝わってくる。


『歴史から忘れ去られていた倉稲洞穴は、原初の純粋さを残している。ワシは昨今の歪みの影響を受けぬよう防壁を張ることにした』


「……つまり?」


 思わず息をのむ。今から語られる内容がじいちゃんが俺に託したこと。


『ワシが鍛えた倉稲ダンジョンと、ダンジョン付喪神と心を通わすことのできる……統二、お前の素質が合わされば』


 ぴょんっ


 俺の背中から飛び降りたコンは、そのまま地面に仁王立ち。くるりと俺の方を向く。


『近々起こるであろう大災厄に対抗できるだろう……そのためには』


 じいちゃんの言葉と共に、にぃとドヤ顔を浮かべたコンが俺に向かって両手を広げる。


「わらわと共に、倉稲を災厄に備えし陣とするのじゃっ!」


 ぶわあっ


 膨大な地脈がコンの全身から立ち上った。

☆なんと、発売前週なのに書泉ライトノベル週間ランク4位になりました!!☆


書籍版の発売まであと3日!

書店には19日あたりから並ぶかもしれません。

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書籍版の第1巻は、2026年5月20日全国発売です! オーバーラップ文庫様の公式サイトから立ち読みが始まっています。 福きつね様による素敵なカバーイラスト、挿絵などもお楽しみください。 https://over-lap.co.jp/Form/Product/ProductDetail.aspx?shop=0&pid=9784824016362&vid=&cat=BNK&swrd=
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