エイプリルフールSS
お久しぶりです。閲覧いただき、ありがとうございます。
恋人にもし「他に気になる人がいる」と嘘をついたら、というお題で男性キャラクターの反応を纏めてみました。
【雪之助の場合】
「へぇ…?季々ちゃん、僕という恋人がありながら浮気したの?」
雪之助は目を細めて、こちらに顔を近づける。近い!近すぎる!
既にエイプリルフールで嘘を吐くことを発案した数時間前に戻りたい。やめたい。
「僕よりも季々ちゃんをドキドキさせれる男なんていないと思うんだけどなぁ…」
「ひゃっ…」
ふっ、と耳元に息がかかる。
もう限界だ。私の心臓がもたない。
「す、すみません…エイプリルフールです…」
そう言うと、笑顔で雪之助はだろうと思った、と応えた。気づいてたなら、もう少し違うリアクションをして欲しかった。
いつもからかわれる側だと癪なので、からかおうと思ったら、結局いつものパターンだ。
「まぁ、本当に浮気したらこんなんじゃ済まないんだけどね」
ボソッと低い声で雪之助は何かを言ったが、私は聞き逃してしまった。
「…何か言いました?」
「んーん、頑張って嘘つく季々ちゃんが可愛いなぁって思って」
「雪之助さん!」
相変わらず、私は雪之助の手のひらで転がされる運命なのだった。
【海斗の場合】
「そっか、俺よりも好きな人出来ちゃったか…まぁ、そういうこともあるよね」
あまりにも、あっさり引いてしまう海斗に思わず私の方が焦ってしまう。
「…いいの?」
「いいも何も好きになっちゃったんだから、仕方ないでしょうが」
海斗は私の頭にぽんと手を置き、頭を撫でた。
「本当は俺が幸せにしてやりたかったけど、俺はお前が一番幸せそうに笑っているのが良いから」
お前を困らせたくないしな、と寂しそうに笑う海斗に私は罪悪感に苛まれ、すぐにネタバラシをしようと思った。
しかし、海斗はところで、と低い声を上げて、私の両頬を両手で触れた。
「その男はどこで知り合ったの?俺と付き合っていることは知ってたの?隠して付き合ってたの?相手は学生?」
「ちょ、ちょっと、か、海斗…」
急な質問攻めに私は思わずたじろいでしまう。
「彼氏持ちの女の子に手を出すなんて、その男絶対軽い男だからやめた方がいいよ?」
そうニッコリと微笑む海斗の目は笑っていなかった。
こうして、延々と居るはずのない架空の浮気相手について追求され、ネタバラシをするタイミングを解散の夕方まで逃した私は、ネタバラシをした後も、怒られ、散々な1日になってしまった。
【紅葉の場合】
「そう………か」
数分後。
それから、私達は沈黙し続けている。
まさか、こんなに重い空気になると思わなかった。
何だ、エイプリルフールか!くらいで終わらせようと思ったのに、出来そうにない。
そういえば、この人はイベントに疎い人だった。せめて、もう少し違うジャンルの嘘をつけばよかった。思いつかないけれど。
あの、と私が声をかけると、紅葉はピクリと肩を揺らした。
「つまり、私と別れたい、ということだよな…すまない、急なことで、心の整理がついていなくてな…」
いつも以上に歯切れの悪い回答に、私の嘘はある意味失敗したことに気がついた。この空気に耐えかねた私は思わず目線を逸らしてしまった。
「…君を困らせるのは分かるが、私は別れたくない」
え、と私は声を上げて、再び紅葉の顔を見る。紅葉は真剣な表情をして、私の顔を見つめていた。
「きっと、君は私に不満があって、私より魅力的な男性を見つけたのかもしれない。でも、私はその男より君のことが好きな自信がある。もう一度、チャンスをくれないか?」
声が心なしか震えている気がする。
不謹慎かもしれないが、紅葉の発言にキュンとしてしまった。
「チャンスも何も、嘘ですから」
紅葉を抱きしめながら、私がそう言うと、紅葉は聞いたこともないような間抜けな声を上げた。
「紅葉さん、大好きです」
そう言うと、紅葉は気が抜けたように、手を床に落とした。私がエイプリルフールだ、とネタバラシをすると、紅葉は力なく、こう答えた。
「もっとマシな嘘を吐いてくれ…」
【桜太の場合】
「マジで言ってるの?」
「うん、大マジ。桜太とはやっぱり友達のままがいい」
桜太は飲んでいたジュースを机に置き、ガシガシと頭を掻いた。
「理由、聞いていい?」
「恋人ってより、友達の方がいいかなって、それだけ。そう思ってきた時に、桜太を遥かに超える私の好みドストライクの男が現れた」
私がさらっと言うと、桜太はため息を吐いた。
「…ちなみに、これ、エイプリルフールとかじゃないよな?」
「うん、エイプリルフールの嘘だよ」
「嘘かよ!」
あっさりネタバラシをすると、桜太は私にデコピンを一発食らわせた。
だって、桜太の反応見て、面白がりたかっただけだもん。
本気で、別れるわけないじゃん。
「ったく。言っていい嘘と悪い嘘があるだろ」
「えへへ、ごめーん」
「…全然、反省してないだろ」
うん、と肯定すると、桜太はガックリと項垂れた。やっぱり、桜太は揶揄うと面白い。
「残念だったな。エイプリルフールに吐いた嘘はその年絶対実現しないって言うらしいぜ。お前の好みドストライクの男は今年確実に現れない!」
何かを勝ち誇ったように言っているけど、別にそんなの構わない。寧ろ、そっちの方が良い。
桜太と別れるなんて嘘、現実になんてしたくない。
来年はどうだろうね、と微笑むと桜太は苦い顔をして、勘弁してくれ、と嘆くのだった。
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