誕生日SS 7
閲覧いただき、ありがとうございます。
最後は海斗の誕生日のお話です。
海斗視点です。
彼女が帰国して、もうすぐ一か月になる頃。
俺は22歳になった。
帰国日に彼女を迎えに行ってから、彼女とは会っていない。
事務的な手続き等で彼女が忙しく、俺は就職活動が佳境に入り、お互い時間が作れなかったのだ。
今日は彼女が初めて俺の家に遊びに来る。
晴天の続く夏らしい日。どこかに出かけても良かったが、俺は彼女とゆっくり二人きりの時間を過ごしたかった。
インターホンが鳴り、俺はドアを開ける。
すると、彼女が笑顔で立っていた。
一か月ぶりの彼女との再会。
嬉しさに口元が緩みそうになるのを堪え、俺は彼女を部屋に促す。
「海斗、就職活動お疲れ様。そして、お誕生日おめでとう」
彼女は手作りのケーキを出してくれた。
手作りとは思えない綺麗な見栄え。
そういえば、彼女はケーキ作りが得意だったな、と高校時代を思い出す。
俺は一口ケーキを口に運ぶ。
すると、素朴な味わいが口に広がり、彼女の愛情が伝わった。
「うまいよ、ありがとう」
そう言うと、彼女は安堵したような表情を見せた。そして、思い出したように彼女は紙袋から何かを取り出した。
「海斗、これ」
彼女が手渡してきたのは、少し大きめの箱。
箱からして陶器だろうか?
うっかり割らないように、丁寧に箱を受け取り、開く。
そこには、ペアのマグカップが入っていた。
「海斗の家にお邪魔した時にこれから一緒に使いたいな、と思って」
少し恥ずかしそうに彼女が言う。
これからも家に遊びにきて、ゆっくりした時間を過ごしたい、という彼女の気持ちが伝わった。
俺もこうした何気ない時間を大切にしたかったから。同じことを考えていたと思うと嬉しかった。
俺は彼女を抱きしめる。
「ありがとう、これから使おうな」
彼女は小さく頷いた。
俺はキッチンに向かい、早速マグカップに飲み物を注ぐことにした。
「アイスティーでいい?」
「うん。海斗はアイスコーヒーでしょう?」
「正解」
お互いの好みを知っていることだけでも、思わず微笑んでしまう。
飲み物を運び、彼女に手渡す。
「夏休み、どこか行くか?」
彼女に尋ねる。明日から本格的に夏休みだ。
俺にとっては最後の夏休み。時間がこんなに余裕があるのも、あと僅かだ。
彼女は少し考え、答える。
「海斗と一緒ならどこでもいいよ。旅行も楽しそうだし、こうやって家で過ごすのも好きだよ」
「そうだな。俺もそう思ってた」
彼女は俺の肩に頭を乗せた。
肩にほんのり彼女の熱を感じる。
夏の日差しに照らされながら、時計の音だけが聞こえる。
緩やかな時間を二人で過ごす、こんな誕生日も悪くない。
そんなことを考えながら、俺は彼女と穏やかな誕生日を過ごしたのだった。
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また、番外編を更新することになりましたら、活動報告等でアナウンスします。ありがとうございました。




