バレンタインSS1
閲覧いただき、ありがとうございます。
愛と海斗のバレンタインストーリーです。
二人が高校時代のお話です。
愛視点です。
今日はバレンタインデー。
好きな人に想いを伝える日。
私は気になっているあの人に渡すことにした。
とはいえ、告白して、チョコレートを渡すのは気が引けてしまう。
だから、私は家庭科のマフィン作りでチョコレート味のマフィンを作ることにした。
そして今、マフィンは綺麗に焼きあがり、デコレーションに差し掛かっているところだ。
「愛、それ先輩用だろ」
こそっと桜太が私にだけ聞こえるように呟く。
そんなに分かりやすかっただろうか。
振り向くと、にやにやと笑みを浮かべる桜太がいた。
「ご想像にお任せします」
私はカップケーキに向き直り、製作に戻った。
「そこのカップケーキだけ、凄く気合い入ってんじゃん」
改めて見返すと、海斗に渡すものはバタークリームとアラザンがたっぷり乗っていた。
私はぐうの音も出ず、黙々と作業を進めていると、桜太がわざとらしく嘆いた。
「大切な試食係をそんな粗末にしていいのか?」
「もう、またそんなこと言って…」
不意に誰かの視線を感じて、窓を見ると、海斗が私達を見つめていた。
いや、私達を見ていた訳ではないかもしれない。よく、美味しそうな匂いと話し声で他クラスの人が覗きに来るのだ。
目が合って、海斗は笑顔で手を振る。
なんだか、いつもの笑顔と違う気がするが、遠くから見てるせいだろう。
私は海斗に駆け寄る。
「海斗先輩。どうしたんですか?」
「俺のクラス、抜き打ちテストでさ、早めに休み時間くれたんだよね。そっちは何作ってるの?」
「カップケーキです。海斗先輩、良かったら私が作ったもの食べてくれませんか?」
我ながら、自然に言えた気がする。
アプローチするには大分弱いけれど。
そう言うと、海斗は目を細める。
「俺でいいの?彼に渡すのかと思った」
少し棘のある口調に私の心はちくりと痛くなる。
「桜太は同じグループだから、自分の分がありますし…私は海斗先輩に食べてもらいたいなって」
そう言うと、海斗は、はっとした表情をして、私の頭を撫でた。
「ごめん、今言ったこと気にしないで。俺で良ければ是非頂きたいな」
「もちろん!直ぐに用意しますね」
私は自分のグループのところへ戻り、急いでラッピングをした。
「良かったじゃん。俺の試食は必要なさそうだな」
桜太の言葉に私は笑顔で頷く。
ハートのデザインがあしらったビニール袋にマフィンを入れ、赤いリボンで結ぶ。
「海斗先輩、受け取ってください」
ー今はまだ告白する勇気がないから。
ーもう少し待っててください、先輩!
とびきりの笑顔で私は好きな人にマフィンを渡したのだった。
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