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僕の靴はどこに行く  作者: 喜多蔵子
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おにいちゃんの視点

同じ時間、同じ場所での弟を見守る兄の視点です。

 玄関に僕のスーパー可愛い弟『そー君』が一番のお気に入りの靴を持って立っている。


 僕にはウルトラ可愛い妹が二人。スーパー可愛い弟が二人いる。あんまり可愛いからたまに悪戯をしてしまう。

 この前はそー君がお気に入りの靴を眺めて幸せそうにため息をついて「なんて素敵な靴なんだ。」と言っていた。

 どうしよう可愛すぎる。そこでついつい「一番お気に入りの靴を履いておまじないをする。なんとゆうことでしょう。靴が素敵な場所に連れて行ってくれます。」て言ってしまった。

 輝く大きな瞳で僕を見つめる可愛い弟。

 大きな何かを期待する声で、

「おまじないの言葉を教えてください。」

 どうしよう。おまじないなんて知らない。

 


 玄関にいたそー君は両手を合わせて目をつむっている。靴を履いた。

 そして「行ってきます。」と言い、玄関から出て行ってしまった。



 慌てて僕も靴を履いて玄関を出て行こうとすると、ドアの前でそー君が唸っている。

 外に出れない。どうしよう。

 しかし、何かを決めたのか右側へ進む。

 右?あっちはメイドや運転手や料理人達の宿舎なのだが・・・。

 とりあえず、ついて行く。


「あら、そー君。ひとりでどうしたの?」

 あ、優馬の奥さん。そうかここは優馬の宿舎か。


 僕の家はでかい。日本有数の大金持ち。玄関を出て門に着くまで結構時間がかかる。

 その為、僕の家に仕えているメイドや運転手や料理人は、僕達家族の家と同じ敷地内に、宿舎という名の別棟の平屋の家で生活をしている。

 もちろん平屋の家は家族ぐるみで我が家に仕えている人もいるので何軒もある。独り身の人は何人かで一緒になって平屋の家で寮生活。

 そして、今弟がお話ししているのは、我が家にいる第2執事の優馬の奥さん。本来はパティシエとして雇っていたが、今は育児休暇中。二人目の子供である藤馬がまだ1歳なのだ。ちなみに一人目は5歳の竜馬。


「よくわからないけど、お腹すかない?いまクッキーを焼いたの。竜馬も中で食べているから一緒に食べる?」

「食べるー。」

 そー君が優馬の家に入って行く。

 僕は僕の後ろにいる、護衛兼第3執事の静馬に、笑顔で振り向き、お願いをする。

「僕もクッキー食べたい。」

「かしこまりました。」

 ちなみに優馬と静馬は兄弟。

 すぐ家に入り僕用のクッキーを持って来てくれた。ありがとう。

 宿舎の横に、いつの間にか用意されたテーブルと椅子。椅子に座り、静馬から手拭きを受け取り、手を拭いてから、行儀よく食べる。


 そー君が家から出てきた。

 満面の笑み。可愛い。可愛すぎる。

 再び道に沿って進む。

 僕もあとをつける。ばれないように。ばれないように。気をつけて。

 右側に水溜りがあり、そー君はそれを避けるように左に進む。

 


 

「あら、そー君。今日は一人?お兄ちゃんは?」

 あ、メイドの花さんだ。今日はお仕事、休みかな?いや買い出しの途中かなぁ?

 弟は花さんとお話し中。

「苺・・・・大好きです。恋してます。」

 弟は苺がものすごく好きなのだ。イチゴケーキにイチゴジャム、イチゴタルト、イチゴ大福、イチゴアイス、イチゴ牛乳寒天。

 食べているときの幸せそうな顔は、もう可愛いを通り越して神々しい。

「僕にも苺。あと、弟の食べているときの幸せそうな顔の動画を撮って。」

「かしこまりました。」

 弟は苺を花さんの宿舎の前にあるベンチに座って食べ始めた。

 隠れている僕の元に折り畳み式の椅子が用意された。椅子に座り僕も苺を咀嚼。




 再びそー君は歩き出す。道は左に緩やかにカーブしている。

「そー君。ひとりでどこ行くの。」

 あ、運転手の青木さん。そう言えば今日はお休みだから、趣味の絵を描くと言っていたな。

 そー君は青木さんとお話し中。

「それは素敵だね。それならその素敵な靴を絵に描いてみてもいいかな。」

 そー君は靴を脱いで、地面の上に寝転がり何かを書き出した。どうもタンポポの絵を描き出したみたいだ。

 流石に時間がかかる。僕は木の後ろに隠れ、

「僕は暇だ。紙と色鉛筆用意」

「かしこまりました。」

 お絵描きをしているそー君を描く。完璧だ。




 そー君はお絵描きを終えて再び歩き出す。

 そー君は真っ直ぐ進む。だから玄関から門に向かう道も横切ってしまった。

 それでも進む。そこからは森になる。

 そして、森の中にはすぐ下の妹(長女)の趣味で建てられた魔女の家がある。

 将来ホルマリン漬の何かを飾るのが夢だそうだ。

 出来れば止めて欲しいが。

 とにかく大変不気味な佇まい。

 そー君は怖かったのか走り出してしまった。

 僕も走る。そして、走りながら、

「魔女の家の回りに垣根を作るように。垣根を不気味に作れば妹が喜ぶ。垣根を作れば魔女の家を見ることが出来なくなるからそー君が怖がらずにすむ。」

「かしこまりました。」

 静馬も一緒に走ってついてくる。




 そー君は再び歩き出した。

 左に田んぼ。右に畑。

 実はこれはもう一人の弟(次男)の趣味。母の趣味であった家庭菜園にはまってしまい、今や本格的な農作業をしている。最も田んぼも畑も広くはない。次男はまだ小学生だから。

 今の時期は稲の肥料にレンゲを植えているから田んぼは綺麗な花畑になっている。

 そしてそー君は「レンゲレンゲ」と歌いながら田んぼに入って、レンゲの花をぷちりぷちりと千切り出す。

 そう言えばそー君は花も好きなのだ。

「庭師に花を増やすように。できればそー君の好きそうな花を。」

「かしこまりました。」

 可愛い、愛らしいそー君に相応しいお花をたくさん増やすからね。





 そー君は再び歩き出した。

 そして、足が止まる。

 真正面に夜の番犬用に飼っているドーベルマンの犬小屋とその右側にシェパードの犬小屋。

 やばい、そー君はドーベルマンのゴンとシェパードのクララと相性が悪い。

 まだ小学校にも入学していないそー君には大型犬はきっと迫力があるのだろう。そー君がおびえているのがゴンとクララに伝わり、いつもそー君に吠えまくる。

 僕にはすごくなついていて、お腹を見せるほど可愛いのだが。 

 急にそー君は小さな声で「ぬきあし、さしあし、しのびあし。」と言いながら、更に、右手の人差し指を口に当てて「しー。しー。」と言っている。

「ゴンとクララは?」

「本日は犬小屋には居りません。裏庭のドックランでお洗濯中です。」

 そうか、僕が知らないのだから、当然そー君が知るよしもない。

 そー君は、ぬきあし、さしあし、しのびあしで左に進んで行く。





 そー君は嬉しそうにスキップを始めた。

 犬に吠えられなかったのが、よほど嬉しかったのだろう。

 そして、前方に滑り台と砂場。

 公園に行きたいと駄々をこねた次女のゆうちゃんとそー君の為に、父が作った擬装公園だ。

 なんせ我が家は大金持ち。公園に連れていったら即誘拐などになる可能性が高い。

 その為、父が業者に頼んで敷地内に偽装公園を作ったのだ。僕や長女や次男は公園にまったく興味が無かったから作られたのは2年前ぐらい。

 そして、偽装公園内で草むしりをする庭師の森さんを発見。

「そー君。今日はひとりで遊びに来たのかい。」

 そー君は庭師の森さんとお話し中。

 そして、一緒に草むしり。

 そして、いつのまにか蝶を追っかけ始めた。

 わかるよ。僕も蝶を見ると追っかけたくなる。でも、よく見るとそのアゲハチョウ、もしかして絶滅危惧種のギフチョウかもしれない。つかまえるのはまずい。

「ちなみに蝶を追いかけているそー君の動画は?」

「撮れております。」

「あの蝶、もしかしたら絶滅危惧種のギフチョウかもしれないから、ついでに調べといてね。」

「かしこまりました。」

 そー君は庭師の森さんとお話し後、太陽を見てビックリした。

 「おじいさん、また今度ね。」大きな声で挨拶をしたあと両手でバイバイ。

 擬装公園を出て右に行く。




 そー君は早歩きで進む。

 そうすると僕達の家の目の前の庭、芝生の庭がある。

 そー君は芝生の庭を横断し玄関へ。

 玄関の前には第2執事の優馬が立っている。

「お帰りなさいませ。そう様。」

「ただいま。」 

 

 

 そうして僕の半日は過ぎていった。そう言えば、そー君は結果的何をしたかったのだろうか?我が家の敷地内を散歩しただけだった。








(余談:夜)

父「コウ君。君の今日の午後の予定はどうして変更になったんだい?」

僕「ごめんなさい。あまりにもそー君が可愛くてストーカーしていました。午後の13時からの剣道道場の師匠と16時からの三味線の先生には僕から今すぐ謝罪の電話をいれます。」


何となく書いてみました。とにかく大きな家で大きな敷地です。

ちょっと今の日本ていうより、パラレル日本と思ってください。

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