第48話 次の目的地
宴の日の翌日
「突然呼び出してすまないね」
セネルからクラークが呼んでいると言われ、シオン達は朝からギルド長室を訪れていた。
「何かあったのですか?」
「うん。君達に朗報かは分からないけどね」
クラークは一枚の手紙を見て話を始めた。
「ここから東の方に険しい山があるのは知っているかい?」
「ええ、北の方まで続いてる山ですよね」
確か王都を襲った翼竜が住む山だ。
「そうだ。その南端に密林があるのは知っているかい?」
「あるとは聞いたことはありますが詳しくはわかりません」
「あそこって未開の森って呼ばれていませんでしたっけ?」
レィナが思い出すように答えた。
「その通り。その未開の森で黒いローブの人影があったと情報が入った」
「っていうことはあのベッフェルの可能性があるってこと?」
「そういうことになるね」
リィナの質問にクラークは肯定した。
「君達は瘴気のことについて調べているのならば、危険は承知で知らせた方がいいと思ってね」
クラークは少しその手紙をシオンに渡してきた。
「その手紙は僕の知り合いの未開の森に住む原住民の知り合いから来た物なんだ。僕の名前も手紙とも一緒に書いていれておいたから、それを見せれば丁重に扱ってくれると思うよ」
「いいのですか?」
「もちろん。この町を救ってくれた英雄には足りないかもしれないけどね」
「いえ、そんなことは・・・」
情報を手に入れるために来たシオン達にとっては朗報だった。
「とりあえず次の行き先は決まりましたね」
「そうだね。シオン君はもう平気なの?」
「あれはまだ使えないけど簡単な戦闘なら出来るぐらいには回復しているよ」
マナは自然回復に任せるしかないので、時間が経てば回復する。
「じゃあさ、今日はその未開の森に行くために買い物しようよ」
「それはいいですね。デートしながら買い物しましょう」
二人は本日の予定をどんどん決めていく。
「えーと・・・クラークさん、ありがとうございました」
リィナとレィナの様子を見ていたクラークはシオンの言葉で動き始めた。
「あ、ああ。こちらこそ」
そのままシオン達は町に繰り出すのであった。
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「やぁ!」
リシアが大型の瘴魔と化したオオカミに向かって水の槍を放つ。
ギャン!
オオカミは胴体を突かれ倒れるがまだ生きていた。
「はっ!」
リシアは一気に接近し、手に持っている短剣に『月の雫』の指輪でマナを変換し付与させ、斬り付けた。
オオカミはそのまま瘴気を浄化されて動かなくなった。
「おお!本当に瘴魔とやらを倒せるんだな!」
その戦闘を見ていたカイがリシアをほめる。
「ありがとうございます」
リシアはカイの戦闘を見たことがあった。そして、その強さは尊敬の念もあった。
「リシアもだいぶ強くなっていたんだな」
フィルジアもリシアを褒めてきた。
「でも、助かります。瘴魔は数は少ないと言えど、今までは遠くに地面ごとふっ飛ばしてから逃げることしか出来ませんでしたから」
ルシルがリシアが加わる前のことを話してきた。
「リシアがいれば瘴魔とも何とか戦えるな」
「そうだな。危なくなったら俺らがフォローすればいい」
「ですね。今のところは大丈夫そうです」
リシアの評価を三人で話し始めた。
「ふふっ」
リシアはそんな三人の様子を見てうれしく思った。
自分が認めてもらえている。それは修行してきたことが実を結んできたということ。そう考えるとリシアは笑顔になってしまうのだった。
リシアが旅に出発してから2週間ぐらい経った。
最初はただただ付いて行くだけだったが、途中から自分で戦闘や食事などを手伝うと進言していった。
今ではカイ達に頼ってもらうことができるようになっていた。
「そういえば、今向かっているのって未開の森でしたっけ?」
「そうだ。あそこには瘴気に対抗する何かがあるとみている」
「私たちはその対抗手段を手に入れるためにそこに行くってわけ」
「そうなんですね・・・」
リシアは『月の雫』があるが、他の人は瘴魔や瘴気に対抗する手段がない。対抗手段を増やすためにそのアイテムを手に入れるのが今回の目的だそうだ。
「まぁ、リシアには不要かもしれないがな」
「いえ、里から出たことがないので、見るものが新鮮で楽しいですから」
「もし、瘴魔が出たら頼りにさせてもらうからな」
「はい!頑張ります」
カイのように強い人に頼りにされるのは結構嬉しく、リシアはにっこりと笑う。
「カイが他人を頼るのは珍しいですね」
「まぁ、いつもは一人で何とかしてしまう男だからな」
そんな様子をフィルジアとルシルが見ていた。
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「ねぇ、あそこにあるのって何?」
フィーはアクセサリー類の小物を売っている露店の小物一つを指差して聞いてきた。
「あれは笛かな」
「ふえ?」
「フィーちゃんが知らないのはしょうがないかもしれないね」
「ふえって何なの?」
フィーが首を傾げて聞いてくる。
「あの小さめの笛を買ってみようか」
シオンは笛の一つで細い棒の形状をした笛を手に取った。
「お兄さん、それはかなり高い音が出る笛になっております。素材に希少な物を使用しているので、少しお値段が高くなってしまいますが」
店員さんのお姉さんが説明をしてくれる。
「この素材って何を使っているんですか?」
「これは風竜の角を使用しています」
「ってことは結構高いのでは?」
風竜といえば翼竜より上位にあたる竜種だ。一流の冒険者ではないと倒せないと言われている。
基本的に、人里には姿を見せないため山の奥の方で暮らしていると言われている。詳しい生態もわかっていないらしい。
「そうですね・・・。お兄さんならこの値段でどうですか?」
お姉さんの掲示してきた値段はシオンの年では到底手の出ない値段だったが、先日のグリフォンや町を守った報酬金があるので、普通に払える値段だった。
「それなら頂いてもよろしいですか?」
「わかりました。お買い上げありがとうございます」
シオンはその笛を袋に入れてもらい、受け取った。
「ありがとうございました」
お姉さんに見送られ、少し離れたところで見ていたリィナとレィナ、フィーのところに戻った。
「ほら、フィー」
「わーい!」
フィーはシオンから袋から出した笛を受け取り、クルクルと体で喜びを表現した。そして笛を吹いてまた喜んだ。
「ねぇ、シオン君。フィーちゃんってさ、普通の人には見えないんだよね」
「そうだね」
「フィーちゃんが持っている物って周りからどう見えるのかな?」
「えっと・・・どうなんだろう」
シオンはリィナの言うことも最もだと思った。
「えっと、フィー、どうなのかな?」
「んー?たぶん見えなくなっていると思うよ」
「そうなんですか?」
「うん!だから、いきなり消えたように見えるかもしれない」
「人前では注意した方がいいかもしれないね」
結局はそこに話は落ち着くのだった。
「買い物はこれぐらいでいいかな」
日が暮れる前に食材や森で必要そうな物もそろえた。
「そうですね。あとは宿屋でゆっくりしましょうか」
「セネルさんにもお礼言わないとね」
セネルにはお世話になったから挨拶はしっかりとしないといけない。
「そうだね。宿屋に帰ろうか」
「ねぇねぇ!この笛面白いね」
フィーは帰る最中も笛を吹いて遊んでいるのだった。
「皆さん、どうかお気を付けて」
セネルが宿屋の前で見送りに来た。
「セネルさん、ありがとうございました」
「「ありがとうございました」」
「いえ、こちらも年の近い方と一緒で楽しかったですから」
そういって微笑んでくれる。
「では、またこの町に来た時に顔出しますので」
「はい、では・・・いってらっしゃいませ」
セネルはいつものように送りの挨拶をしてくれる。
「「「いってきます」」」
シオン達もいつものように挨拶を返して、宿屋を後にするのだった。
「アルバルトさんってどうしたの?宴で会ったきり見ていないけど」
「兄上に仕事押し付けてきたみたいだから早々と帰って行ったよ」
「私たちが心配で見に来たそうですから」
「アルバルトさんって結構過保護なところあるよね」
シオンはリィナとレィナの対応するアルバルトを見てそう思った。
「まぁ、嬉しいことは嬉しかったりするけど」
「やりすぎなところもあるのが玉に瑕ですね」
娘達の評価は厳しいようだった。
「シオン!今日から旅に出るんでしょ!」
フィーはシオンと会ってからはグリフォンがいた廃村までしか一緒に出掛けていないから、テンションが高いようだ。
「そうだよ。未開の森って呼ばれている場所に行くからね」
「じゃあ、この町にはもう帰ってこないの?」
フィーは少し寂しそうに聞いてくる。
「また機会があったらこの町にも来ると思うよ」
「そうなんだ!」
フィーはまたいつかここに来るとわかり嬉しそうだ。
「シオン君、未開の森にはどうやって行くの?」
「そこまでの道はないみたいだから、海岸に沿って東に行くとあの険しい山のふもとに森が見えてくる場所ってクラークさんに聞いたけど・・・」
「まぁ、行ってみるしかないですね」
旅は何が起こるか分からないから、分かっている情報を基に進むしかない。
「出発しんこーう!!」
最後にフィーが掛け声を上げシオン達はアルマポールトを出発するのだった。
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「行ってしまいましたか・・・」
ギルド長室の窓からシオン達の後ろ姿が小さくだが見えた。
「いい子達でしたね」
クラークはいろいろと助けてくれたことに心の中でお礼を言った。
「さて、復興をがんばるとしましょうか」
クラークは町の復興を今日も励むのであった。
今回の話で第2章として一区切りとさせていただきます。
次話からは第3章となります。




