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双子王女との恋奏冒険記  作者: 雅國
第二章 港に蠢く影(アルマポールト編)
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第46話 旅立ちと目覚め

「母さん、いってきます」

 リシアは里の入り口に送りに来たリーティンに言った。


「いってらっしゃい、フィルジアもリシアのことよろしくお願いしますね」

「ああ、任せておけ」

 フィルジアも快く引き受ける。


「この剣で俺がこの里を守ってやるから安心して行ってこい」

 リカードがリシアな向かって安心するように言う。


「はい、よろしくお願いします」

 リシアも自分の代わりに里を守ってくれると言われて、嬉しく思った。


 リシアはシオンの剣の代わりに、以前使っていた短剣を腰に下げている。

 月の雫の指輪のおかげで、これにマナを通せば瘴気にある程度対抗出来るのだ。


「そろそろ行くぞ!」

 カイが号令を掛ける。


「いってきまーす!」

 リシアは最後に大きな声で村に向かって叫ぶのだった。




「行ってしまったのぅ」

「・・・そうですね」

 族長とリーティンがリシアの行った方向を見ながら話した。


「昔のお前さんを見ているようじゃわい」

 族長は懐かしい気持ちで微笑みながら言ってきた。


「リシアは私より賢いから大丈夫ですよ」

 リーティンも微笑みながら返した。


「確かにそうじゃな」

「もう、そこは否定してくださいよ」

「ほっほっほ」

 二人はそんな会話をしながら里の中へ帰っていった。



--------------------------



「なかなか目を覚まさないね」

 レィナが目を覚ましてから5日ほど経過していた。


「でも、確実に回復に向かっているよ!」

 心配しないように明るい声でフィーが言った。


「そうですよ。今日は何回も身動ぎしていたじゃないですか」

 今の時間は昼過ぎだ。朝だけでも何回か身動ぎをしていたのだ。


「そうだよね」

 リィナも不安な顔をしないで明るくいようと心掛けることにした。


 それから、この日も三人でお喋りしてシオンの傍で過ごした。



 その日の夕方


「ん・・・」

 シオンは意識を取り戻した。


「「シオン君!!」」

 リィナとレィナはシオンが目を覚ましたことにすぐに気付き、近くに寄った。


「えっと・・・宿屋?」

 シオンは周りを見渡しどこにいるのか確認した。


「大丈夫?」

「1週間近く寝ていたのですよ」

「1週間も寝てたのか・・・」

 シオンは何日か寝込んでいたと薄々気付いていたが、結構寝ていたようだ。


「で、気分はどう?」

「気分は悪くはないかな。喉が乾いたし、お腹も空いているけど」

「それならよかったです」


「体の方は・・・」

 シオンは体の中にマナを巡らせて見る。


「うん、まだマナが回復しきっていないから戦闘とかは難しいけど、日常生活は問題ないと思うよ」

 シオンは自分で状態を確認した。


「シオン、本当に大丈夫なの?」

 フィーはシオンの中にあったの謎のマナが気になっていたのだ。


「うん、大丈夫だよ」

 シオンは迷い無く答えた。


「それならいいけど」

 フィーは不安は残っているが納得する事にした。


「とりあえず、シオン君には寝ててもらうとして、何か飲み物と食べ物貰ってきますね」

 レィナがそう言って立ち上がった。


「そうだね。今日1日ぐらいシオン君は寝ていた方がいいかも」

 リィナもそれに同意し立ち上がった。


「あ、リィナはシオン君と留守番しててください。私はフィーちゃんと行ってきますので」

「え?でも」

 リィナは突然そんなことを言われて戸惑った。


「いいですから、フィーちゃん、行きましょう」

「うん!」


 レィナはフィーを連れて行こうとする直前、リィナの顔を見てウィンクをした。そして、そのまま行ってしまった。


 シオンは訳も分からずその光景を見ていたが、リィナはレィナの言っていることを察し、顔を赤く染めた。


「えーと・・・シオン君」

「何?」

 シオンはリィナを見ると茹で蛸のように顔を赤くしたリィナが見ていた。


「そのね、シオン君を助けるために・・・その、マナが足りなかったから・・・・私のマナを渡すために・・・キス・・・しちゃったの・・・。ごめんなさい」

 たどたどしかったがリィナの言いたかったことは理解出来た。


「大丈夫だよ。はっきりとは覚えてないけど、今も僕の中にリィナのマナがあるのは分かっているから」

 シオンは自分のなかにリィナのマナが在るのには気付いていた。


「まだちゃんと言っていなかったから今言うけど」

 シオンは言葉を一旦切った。


「リィナ、命を助けてくれてありがとう。本当に感謝している」

 シオンはそう言いながら目の前の女の子を軽く抱き締める。


「っ!シオン・・・君」

 リィナは一瞬ビクッとしたが、抱き締められるのに抵抗はなかった。


「本当にありがとう」

 シオンが耳元で囁くと

「シオン君!!」

 リィナも抱き締め返しながら、シオンの胸に顔を押し付け泣き始めてしまった。



--------------------------



「よかったですね。姉さん」

 レィナは軽い食事と飲み物を持って、扉の外で中の様子を聞いていた。


「今だけは姉さんにシオン君を譲って上げますから・・・」

 レィナは少し寂しい気持ちで中の様子を見守り続けていた。


「レィナ・・・」

 フィーへそんなレィナを見て、少し寂しくなった気がした。



--------------------------



「シオン君、お待たせしました」

「ご飯貰ってきたよ」

 数分後、レィナとフィーは何事も聞いていない素振りで帰って来た。


「お帰り、わざわざありがとう」

「ちょっと!シオン君!」

 シオンは普通に答えたが、リィナを抱き締めたままだ。


「ねぇ、リィナ」

「な、何?」

「暫くこのままでもいいかな?リィナ抱き心地が良くて」

「ふぇ!」

 リィナは柔らかくて、いい臭いもするので抱き心地が最高だった。


「私の心が持たないよ!それにご飯食べるんでしょ!」

 さすがにリィナも限界がきていた。


「それならしょうがないか」

 シオンは元々すぐに解放するつもりだったのか、すぐに離した。


「もう!シオン君は!」

 離れたリィナは顔を真っ赤にして睨んでいた。


「シオン君、今度は私を抱き締めて下さいね」

 レィナはそう言いながらシオンの側の机に食事を置いた。


「あ!そうでした」

 レィナは思い出したかのように、ベッドに腰掛けていたシオンの頭を自らの胸に抱くようにして、抱擁し始めた。


「シオン君、私を助けてくれてありがとうございます」

 レィナは命を助けてくれたことに対してのお礼を言っていなかったので、シオンの頭を抱き締めながらお礼を言った。


 シオンはレィナの言葉は聞いていたが、それどころかではなかった。

(柔らかい!いい臭い!でも苦しい!!)


 シオンはレィナの胸に圧迫されて、天国と地獄を同時に味わっていた。


「レ、レィナ?シオン君・・・苦しそうだよ?」

 リィナはシオンの様子がおかしくなってきてことに気が付いて、指摘した。


「あ!ご、ごめんなさい」

「っぷはぁ!」

 シオンはようやく解放されて息を吸うことが出来たが、天国も遠ざかってしまったので複雑な気分だった。


「と、とりあえずご飯と飲み物を貰ってきましたので、食べて下さい」

 レィナへ顔を赤くしながら言ってきたのだった。



--------------------------



「シオン君が目を覚めしましたか!」

 ギルド長室内でクラークの声が響いた。


「ええ、先程レィナ様からお聞きしました」

 セネルはクラークに連絡をするために、ギルド長室を訪れていた。


「状態はどんな感じ何ですか?」

「戦闘は難しいらしいですが、日常生活なら問題ないとお聞きしました」

「そうですか。なら明日にでもお礼を兼ねて、食事会や催しをギルド主催でやりましょうか」

 クラークはシオン達にお礼としてそんなことを言い出した。


「まぁ、喜ばれると思いますが場所はどうするのです?」

 セネルはギルドでやると考えたが、町の人々も来ることを考えると手狭に感じた。


「まだ、一部が修繕中ですが、港でやろうかと思っています。港で働いている方々からも是非にと、声が上がっていますから」

 クラークはシオンが寝ている間にいろいろと決めていたようだ。


「では、私の方から伝えておく形でいいでしょうか?」

「お願いします。私は食事とかの手配をしておきますので」

 この日の夕方からクラーク達は明日の宴の準備に入るのだった。

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