第45話 回復へ向けて
ギリアムの失踪、魔物の襲撃があった日から二日経った。
クラーケンが逃げた後は港に戦闘痕が残ったが、魔物はいなくなっていた。
街道の方も冒険者達の活躍もあり、討伐、撃退することに成功し、アルマポールトは苦しいながらも生き残ることが出来た。
だが、シオンとレィナは今もベッドの上で寝たままだ。
フィーにシオンが危険な状態と言われて、マナを口付けで送り続けたリィナ。
結果、生命活動が安定するぐらいのマナの供給に成功したのだ。
フィーは口付けでマナを送り続けていたリィナに大丈夫だと伝えると、リィナは顔を上げてフィーに確認した後、シオンの服がびしょ濡れになるまで抱き付いて泣いていた。
その後はクラークも来て、シオンとレィナが倒れているのを見て大慌てで宿屋に運んだ。
もちろんリィナがレィナを運んでいたが。
それからはリィナとフィーだけの時間が続いた。
食事も宿屋のレストランで取り、出来るだけ二人の傍から離れずに看病し見守り続けた。
二日目の朝、レィナが目を覚ました。
レィナはマナこそ枯渇していたが魔力が生命活動をしていたため、シオンみたいに重症にならずに済んだのだ。
リィナは少しやつれていたが、動くこともできたため大丈夫そうだった。
「そんなことがあったのですね」
「うん」
レィナはリィナからこれまであった話を聞いて驚いていた。
「フィーちゃんもありがとう」
「うん!」
フィーはすごく嬉しそうに答えた。
「でもシオン君にキスしたんですか・・・」
レィナはそこだけ気になった。
「ご、ごめん。で、でもね!」
「わかっています。リィナ、シオン君を助けてくれてありがとう」
リィナはレィナが怒ったと思ったが、勘違いだったらしい。
レィナは少し悔しいと気持ちはあるが、シオンの命が掛かっていたのだ。責められる立場ではないことはちゃんとわかっていた。
「とりあえず、喉も乾きましたし、お腹も空きました。何か食べに行きませんか?」
レィナは二日も眠り続けていたので空腹だった。
「そうだね」
リィナは笑って答える。
「私はシオンを見ておくね。何かあったら呼びに行くね!」
フィーはシオンの様子を見ておくと二人に伝える。
「うん」
「フィーちゃん、お願いしますね」
二人は宿屋のレストランに向かって部屋を出て行った。
「さてと・・・」
フィーはシオンの上に行く。
「ちゃんと見ておかないとね」
フィーは半分霊体化してシオンの胸のあたりに触れる。
(うん。シオンのマナも回復してきている・・・。でもリィナのマナが残っているのはわかるけど・・・これなんだろう?)
フィーはシオンが回復に向かっているのはわかったが、シオンのでもリィナのマナでもない何かのマナがシオンの中にあるのが気になった。
(でも、体に負荷がかかっている様子もないから・・・大丈夫だよね?)
フィーはそう判断することにした。
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「本当にありがとね。リィナ」
「ううん、私も二人には元気でいてもらいたいもん」
二人はレストランに向かいながら話していた。
「あ、レィナ様!目が覚めたのですね」
ロビーにいたセネルがレィナを見つけて話しかけてきた。
「セネルさん、ご心配お掛けしました」
「いえ、お元気になられて本当によかったです」
セネルは安心した表情で返した。
「では食事をとってきますので」
「はい、ごゆっくりどうぞ」
セネルはレストランに向かう二人の背中を見送った。
「さて、父さんにレィナ様の目が覚めたって伝えに行こうかな」
セネルはそう言って宿屋を他の従業員に声をかけて、出て行った。
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「父さん」
セネルが声を掛けたのはギルドにいるクラークだった。
「セネル、どうしましたか?二人になにか」
クラークの息子であるセネルには二人の様態について変化があったら知らせるように言っておいたのだ。
「レィナ様は目を覚ましたようです。シオン様はまだ・・・」
「そうですか。レィナさんが・・・」
クラークは安心した表情を見せた。
「もう一人のこの町の英雄にも早く目覚めてほしいものですね」
「そうですね」
親子でシオンの回復を願った。
「それより復興の方はどうなっているのです?」
魔物の襲来によって町の入り口と港の一部が破壊されてしまったのだ。
「今は冒険者の方でボランティアが集まったので、材料の採取に行って貰ってます」
冒険者の方でボランティアを募ったところ、この町を拠点としている冒険者が多数集まったのだ。彼らは資材の採取に行っている。すぐにとは行かなくても木材が不足するのが目で見てわかるのだ。
「それとギリアムの行方ですが、まだ分からない状況ですので一応警戒もしておいてください」
「わかりました。こちらは宿屋に戻りますので、父さんも頑張って下さい」
「セネルもわざわざありがとうございます」
「いえ、それではまた」
セネルはこうしてギルドを後にするのだった。
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「ねぇ、リィナ」
「何?」
二人は食事を終え、部屋に戻る途中だった。
「看病って何をしていたのです?」
「え?普通に病人にやってあげるようなことをやっていたけど・・・」
リィナは少し顔を赤くしながら答える。
「・・・・・・・」
「あははは・・・」
レィナはリィナの表情をじっと見ていた。
「そういうことですか」
レィナは何かに納得した。
「・・・・・・」
リィナはレィナに隠し事は出来ない、それは今までのことではっきりとわかっている。
「私もでしょうが、シオン君の体も拭きましたね?」
「・・・やっぱりばれたか」
リィナが思った通りのことを言ってきた。
「まぁ、倒れた側に文句は言えませんが、私はともかくシオン君の体はどこまで拭いていたのですか?」
「え~と・・・あの場所以外?そこはフィーちゃんがやってくれたから」
「・・・なんでですか?」
「・・・だって・・・恥ずかしいんだもん」
「・・・まぁ、そうですね」
二人は顔を赤くしたまま部屋に戻っていった。
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「見つけたぞ!!」
精霊の里の族長の家からフィルジアの声が響いた。
「え!何をですか!?」
一緒に探していたルシルはフィルジアの元へと駆け寄った。
「この部分を読んでみろ」
「え~と・・・険しき山・・・・深き森・・・ようの光?」
ルシルはすべてを解読できずに一部のわかる単語を読んでいた。
「俺の解読が合っているか分からないが、これは『険しき山が連なる下、深き森に闇振り払う太陽の光が差す』と書いてある」
「太陽の光ってリィナさんの?」
「俺はそうだと考えている」
リィナが太陽のマナだと聞いているのであっている可能性がある。
「それに『闇振り払う』の闇って瘴気ではないか?」
「そう考えれば太陽のマナで瘴気を払うという意味になりますね」
二人は嬉しそうに話を進める。
「でも、険しき山って中央大陸だと北から東にかけての山でしょうか?西側の精霊の森の奥にある山は険しいってほど険しくはありませんし」
「それとこの深き森って部分だが、北から東に掛けての山で深い森がある場所はあそこしかない」
「あそこって言うと?」
「東側の山の最南端の麓にある未開の森だ」
「あ!あそこですか!!」
ルシルが驚くのも無理はない。
未開の森は名の通り未開の地だ。原住民も住んでいると噂されているが定かではない。その森は木々が鬱蒼と茂っており、大型の生物や魔物も多く生息していると言われている。一昔前、開拓しようと踏み込んだ人がいたらしいが帰ってこなかったらしい。
「未開の森なら古代の何かがあっても不思議はないからな」
「・・・わかりました。行きましょう!」
ルシルも覚悟を決める。
「では、カイに伝えて明日の朝に出発するとしよう」
「はい!」
するとそこへ
「族長、失礼します」
リシアが入ってきた。
「・・・リシアか?」
フィルジアが最後に会った時はもっと幼かったため、リシアと判断するのに少し時間がかかった。
「フィルジアさんじゃないですか!お久しぶりです」
リシアもフィルジアに気付き挨拶をした。
「でもなんでフィルジアさんがここに?」
「ああ、ちょっと調べものをしようと戻って来てな。そういうお前こそどこにいたんだ?一度シオンの家に挨拶にいった時、出かけてるとリーティンさんから聞いてな」
どうやらリシアの修行で滝に言っている時だろう。
「私も修行をしているんですよ。今ならフィルジアさんにも勝てるかもしれません」
「おお、言うようになったではないか」
二人はすごく楽しそうに話している。
「あの~・・・どちらさま?」
ルシルがリシアを見ながら聞いた。
「えっと・・・シオンの妹のリシアです」
「シオンさんの妹さんだったんですね。私はルシルといいます」
シオンの妹と聞き少し緊張がほぐれたようだ。
「で?調べ物は終わったんですか?」
リシアは終わっていないなら手伝おうと考えていたのだが
「ああ、今し方探していたものが見つかってな。明日の朝にはまた出発する予定だ」
「そ、そうですか」
リシアは少し残念そうな顔をした。
「ん?何かあったか?」
「いえ、私も旅に出てみたいなーって思っただけです」
リシアは何となく伝える。
「お前さんは旅に出たいのじゃな」
「はい、兄さんの力になれればと・・・って族長!?」
いつの間にかリシアの後ろに族長が立っていた。
「その指輪をもらったから手伝えるかもしれない、そう思ったのじゃな?」
「・・・・・・はい」
族長はリシアがしている指輪から何かを感じ取ったらしい。
「昔はリーティンの奴も旅に出ていたからの。儂は構わんが・・・」
「母さんには私がお願いしてみます!」
リシアは旅に出られると思うとすぐにそう言った。
「フィルジアよ、明日の朝出発と言っておったな?」
「は、はい」
「それまでに間に合えばこの子を一緒に連れて行ってはもらえんかの?」
「え?いいのですか?」
「フィルジアの強さはもちろん、預けられるにも安心な奴じゃ。それなら任せたいと考えるのは当然のことじゃ」
「まぁ・・・リシアがいいのでしたら俺は構いませんが」
フィルジアが曖昧に答えると
「お願いします!」
リシアは頭を下げて来た。
「精霊魔法も剣術も特訓してきました。決して足は引っ張りません!」
リシアは更に強調して言った。
「しかし、リシア。シオンからこの里を任されたのではないのか?」
王都で聞いた話をリシアにする。
「それは・・・」
リシアの顔が暗くなってしまった。
「・・・シオンの剣を置いて行きな。それはリカードにでも使わせれば効果はあるじゃろう」
族長が妥協案を出してきた。
「・・・わかりました」
リシアは少し迷ったが、今の自分には瘴気への対抗策もできたから、剣だけは里に残していこうと考えた。
「なら、早くリーティンにお願いしてきなさい」
「はい!」
リシアは剣を置いて族長の家から飛び出していった。
「族長、いいのですか?」
「いいのじゃよ。あんなに旅に出たいという気持ちがあるままこの里にいてはかわいそうじゃ」
族長の目は少し寂しそうな目をしていた。
「族長・・・」
「フィルジア、ルシル。リシアのこと頼んだぞい」
「「・・・わかりました」」
こうしてリシアの旅立ちは決まるのであった。




