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双子王女との恋奏冒険記  作者: 雅國
第一章 太陽と月の双子王女~王都アルマブルク編~
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第25話 翼竜討伐再び

「あのでかい奴は引き付けるだけにしろ!その間に他の奴を倒せ!」

 指揮を取っている一人の冒険者の男が言う。

 冒険者達は引き付けている大きな翼竜にそれなりの人数を使っているため、他の翼竜の討伐が思うようにいかないでいた。

「クソ!あのデカブツ強すぎだろ」

 指揮している冒険者はこのままではじり貧になり、負けることご容易に想像できた。

「応援が、来るまで耐えるしかないのか」

 ここまで村人や冒険者達にも負傷者が出ている。それに何人か殺されている。

 冒険者は応援が早く来るように祈るしかなかった。



--------------------------



 そんな戦いを遠くから見ている黒いローブの男がいた。

「ふむ。翼竜でもリーダー格が瘴化するとその下に付く者は魔物化するのですね」

 そんなことを呟く。

「瘴化した翼竜は魔物化して翼竜より狂暴性も増すようですね・・・。これなら・・・」

 戦いを見ながらいろいろ考えている様だった。

「おや?」

 そんな時、遠くからものすごい速さで走って来る6つの影が見えた。



--------------------------



 シオン達は近づくと翼竜の大きさがよく分かるようになってきた。

 魔物化した翼竜は10m位だが、瘴魔となった翼竜は15mはありそうだった。

「なんだ?あの翼竜の黒い霧みたいのは」

 フィルジアが瘴魔の翼竜を見てそう呟いた。

「オラ!!」

 先頭を走っていたカイは更に身体強化をして、一番大きい翼竜の頭を目掛けて跳び、剣を振った。

 ごぉん!

 翼竜の頭には瘴気に阻まれて、剣が届いていないはずだが、カイの剣速が速かったため、衝撃で少し翼竜がふらついた。


「クソ!何かに弾かれた!」

 カイは着地して叫んだ。

「なら、私が!」

 ルシルが上級魔法のクリムゾンランスを放った。

 しかし、翼竜に当たる前に霧散してしまった。

「まさか無効化ってこれのこと?!一切効かないじゃない!」

 ルシルも魔法が効かないことでは手の打ちようがない。



 立ち止まってカイ達の攻撃を見ていたシオン、そこに

「「シオン君」」

 リィナとレィナは突然シオンの左右の頬にそれぞれキスをする。


 シオンは一瞬思考停止したが、体の中のマナが変わったことに気付き、思考を戻した。

「これは・・・」

 リィナとレィナに聞くと

「いつもは抱き付いていただけだったけど」

「こっちの方が効率がいいのではないかと、二人で話したんです」

「で、どうかな?」

 マナの変化については聞いているのだろう。

「うん、いつもより多い感じがする」

「そうれなら良かったです」


 三人のやり取りを見ていたフィルジアは

「おい!シオン!こんな時にいちゃつくな!」

 戦うための準備に見えない行動にイラついていた。

「違うんだけど・・・今はいいか。フィルジアさん達三人は他の翼竜をお願いします」

「シオン!こいつに物理的な攻撃も魔法も効かねぇぞ!」

 カイが先程自分たちがやったこと言ってきた。

「大丈夫です」



 シオンは剣を構え、マナを剣に纏わせる。

「リィナ!レィナ!僕が引き付ける!」

 シオンはそう言うと翼竜に切り込んだ。

「オイ!シオン!」

 カイが止めようとするがシオンは聞かずに突っ込んだ。


 シオンの剣は翼竜の纏う瘴気を通り抜け、翼竜の鱗に傷をつける。

「瘴気は浄化できても、さすがに剣だと堅いか」

 シオンは呟きながら一旦後退しようとする。そこへ翼竜の尻尾が襲い掛かってきた。

「させません!」

 レィナが氷の槍を飛ばしてきた。氷の槍は尻尾に当たり、尻尾を弾き飛ばす。

「いっくよー!」

 今度はリィナが以前普通の翼竜を倒した時の光の精霊魔法で翼竜の頭上から降り注ぐ。


 『キュアァァァァーーーー!!』


 翼竜はものすごく苦しそうな声を上げる。



「・・・なんであいつらの攻撃は通っているんだ?」

 カイが誰かに聞く。

「・・・わからんが、あいつはシオン達にませて俺たちは他のをやろう」

「そうですね。他にもまだいるのですから」

 カイ達三人は魔物化した翼竜を討伐し始めた。


 カイ達三人は三人で一体ではなく、それぞれ一体ずつ相手にし即座に倒していく。

 カイは身体強化を高め、翼竜の首を一撃で切り飛ばし、フィルジアは弓で矢を打てば風の精霊魔法で軌道を変え、翼竜の眼等の弱点を確実に突き、ルシルは先ほどのクリムゾンランスを連発して翼竜を倒してしまう。

 今まで戦ってきた冒険者たちは一体相手に最低でも五人は当たっていたというのに、この三人はあっという間に単独で翼竜の群れを討伐していった。




 リィナの光の攻撃魔法は数秒で消えてしまった。

 翼竜はダメージを負っていたがまだまだ健在のようだ。

「ごめん!倒しきれなかった」

 リィナが少し距離を置きながら叫ぶ。

「あの大きさです。元々一回の魔法で倒せるとは思っていません」

 レィナはそう認識していたようだ。


「でも、ダメージは通っているから、あいつの攻撃に注視しながら戦うよ」

 シオンはまた注意を引き受けるために切り込んだ。

「レィナ!また足止め出来る?」

 リィナが聞いてきた。

「やってみます」

 レィナがそう答えると

「ちょっとやってみたいことあるからお願い。私も隙ができるようにシオン君の反対からちょっかい出してくるから」

「私もやってみたいことがあります」

 リィナとレィナはお互いに一瞬目を合わせて行動に移る。

 リィナはシオンと反対側に来るような立ち位置に行き、炎球を出して攻撃を始めた。

 二人が攻撃することで隙が見え始めた。


「いきます!」


 二人に知らせるように叫び、イメージを具現化する。

 それは大きな水流だった。太さは10mはある。その巨大な水流を翼竜に向けて放つ。

 翼竜はその水流をみて、空へと羽ばたき逃げ始めた。

 水流は大蛇のように翼竜を追い続け、遂に翼竜を捕える。


 翼竜は水圧に押されて飛ぶのがきつくなり、落ちてきた。

 水流が落ちた翼竜を目掛けて、地面に叩きつけるように水流が翼竜を押し潰す。

 水流が無くなった後には翼竜が苦しそうにもがいていた。


「今度はこっちだよ!」

 リィナが足裏を火と風の精霊魔法で爆発させ、一気に加速して短剣を翼竜の背中の鱗を砕き刺し立てる。

 その瞬間


 ドゴーーーン!!!


 翼竜の背中が突如爆発した。


 リィナは短剣の先を翼竜の内側に入れ、そこからマナを流し込み爆発させたようだ。

 翼竜は翼の片方を失いながらもまだ息をしているようだ。


 苦し紛れに尻尾を振り回してリィナを遠ざけようとする。

 そこに、シオンがマナを圧縮したマナを剣に乗せて一閃する。

「っは!」

 スパァン!

 すると、尻尾が根元から切り落ちた。

「すご!」

 近くで見ていたリィナは声を上げ驚いた。


 シオンはそのまま振り返ると同時に圧縮したマナを剣から砲弾として打ち出し、翼竜の顔に当たると同時に雷に変化させると

 バシン!!

 翼竜の体に一気に電撃が走る。

 翼竜は電撃を浴び、意識を失いかける。


「離れて!」


 レィナが二人に離れるように言う。

 すると翼竜の頭上から先程と同じぐらいの水流が押し寄せた。

 そして水流が消えた後には翼竜の氷像が出来上がっていた。


「いっけぇー!」


 ボロボロになった翼竜の氷像にリィナが短剣にマナを集中させ、シオンの真似事のように一直線に打ち出す。氷像の翼竜の内側にマナが入った途端

 ボォン!!!

 氷像となった翼竜が爆発と共に崩れ去った。



 三人は肩で息をしているが深刻な攻撃は一切受けないで倒すことに成功した。

 感極まったかのように三人は抱き合っていた。

「やったね!」

「ですね!」

「最後のマナで二人に染まったマナ使い切った感じではあったから危なかったけどね」

 シオンはあれで止めを指すまでの流れが出来てよかったと思っていた。


「それにしても、今回のレィナのあの水流の魔法すごかったね」

 リィナが水流の魔法を褒めると

「あれはけっこう疲れますね」

 とレィナが言った。

「疲れる?」

「もしかして、あれだけの質量の物を制御し続けるからかな?」

 シオンが思い当たったことを言うと

「たぶんその通りかと。10秒も続けばいい方じゃないでしょうか」

 レィナは自分でそう認識していた。



--------------------------



 三人は今回の戦いについて話していると

「お前ら凄いな!」

 カイ達がこちらにやって来た。

「シオン、おの翼竜の黒い霧はなんだ?」

 瘴気が見えていたフィルジアが聞いてきた。

「「黒い霧?」」

 やはりカイとルシルには見えていなかったようだ。

「・・・あまり公にしないでほしいんだけど、あれは瘴気って呼ばれているものだよ」

「瘴気だと!」

「声が大きいって」

 少し離れた所にまだ冒険者がいるのだ。

 それにしても、瘴気については知っているようだった。


「すまない。まさか実在するとはな。しかし、あれに対抗できることにも驚いたがな」

 フィルジアはそう言いつつシオン達を見た。

「じゃああれか?オレ達の攻撃かま効かなかったのはその瘴気とやらが原因ってことか?」

 カイが聞いてきた。

「そうですね。瘴気は浄化しないと攻撃が通じないですからね」

 レィナがそう教える。

「ん?浄化?」

「・・・あ」

 レィナは瘴気の浄化については言ってはいけないかもしれないと、言った後に気付いた。

「ねぇ、どういうこと?」

 レィナにルシルが聞く。

「え~と~・・・」

 レィナはシオンに助けを求めるように見た。

「ここまで言っちゃったらいいんじゃない?だけど絶対に他言無用にしてもらう必要はあると思うけど」

 シオンがそう言うと

「おう!絶対秘密は守るぜ」

「だな。俺も浄化については気になる」

「そうね。誰にも言わないわ」

 三人は即答した。


「まず最初に言っておくけど、僕にも浄化の力はないんだ」

「え?でもシオン。お前は奴を剣で斬ったよな?」

 フィルジアは瘴気を貫通してシオンが斬り付ける所を見ていた。

「それはリィナとレィナのおかげなんだよ」

「って言うことは・・・」

 カイ達三人の視線がリィナとレィナに集中する。

「リィナとレィナが浄化する力を持っているマナを宿しているんだ」

 シオンの説明に

「って、ちょっと待て」

 フィルジアがストップをかけた。

「王女さん達に浄化する力があるのは分かった。でも、シオンは無いのに何故戦える」

「フィルジアさんは知りませんでしたっけ?僕のマナについて」

 シオンがフィルジアに尋ねると

「・・・あ~・・何か純粋かなんとかだっけ?」

 フィルジアはあまり記憶にないようだ。


「そうですよ。アレティア様いわく、純粋なマナは他のマナに染まりやすいようで」

 シオンがそこまで言うと

「だから、戦闘前にあんなことやっていたのか?」

 フィルジアは言葉にはしなかったがキスのことだろう。

「まぁ、そういうことです」



「で、これどうするよ?」

 カイが翼竜の方を指差して言う。

「アルバルトさんには報告はしまっ!」

 シオンは話している途中で、何かに気付いたように言葉を切ってどこか遠くを見ようとした。

「ん?どうした?」

 カイは何かあったのかと聞いてきた。

 カイはシオンの向いている方向を見たが、草原が続き、遠くに山が見えるぐらいだった。

 周りを見るとリィナとレィナも同じ方向を向いていた。


「ねぇ、シオン君・・・今」

「うん、瘴魔より凄い何かの気配みたいな」

「ですよね。何か嫌な感じがします」

 三人は何かを感じたようだが、今はただ草原と山が見えるだけだった。


「おめぇら!早く片付けて撤収するぞ」

 カイに言われ、翼竜で使える材料を回収し王都に帰るのだった。



--------------------------



 翼竜の討伐された場所から東の山の方へ、黒い影が空を移動していた。

「またあの子供達ですか・・・」

 黒いローブを着た男が不服そうに呟く。

「せっかく翼竜を瘴化させたというのに、あっさり倒すとは・・・。実験が台無しじゃないですか」

 すると近くに同じローブを着た女性が近くに来た。

「ベッフェル様、どうかされたのですか?」

 黒いローブの男、ベッフェルは女性の声に移動を止めた。

「アミラですか。実験を邪魔をしたものがいたものでね」

 黒いローブの女性、アミラは少し驚きながら

「実験って翼竜のですよね?普通の人間には瘴化した魔物は倒せないはずなのでは?」

 アミラはそこが疑問だった。

「あの子供達は恐らく浄化できるマナを宿しているのでしょう」

「そのような者がいるのですね。邪魔なら私が出向きましょうか?」

 ベッフェルの邪魔をするなら自分が退けようと考えた。


「あなたはやめときなさい。まだ瘴化したばかりなのですから無理はいけませんよ」

「・・・わかりました」

 ベッフェルの期待に答えられないのが少し悔しく感じていた。

「今回の翼竜で少し瘴玉を使ってしまったので、私は作製に入るので暫くの間籠ります。アミラはアルマポールトで私の実験材料の収集をお願いします」

「アルマポールトって王都アルマブルクの玄関口のですか?」

「そうですよ。あそこは港で貿易も盛んですからいろんな材料がありますからね」

 ベッフェルが説明する。

「わかりました。必要な物を教えてください」

「それについては潜伏先の地図と一緒に紙に書いて渡しますよ」


 そして、ベッフェルとアミラは山の中腹辺りに飛んで行った。

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