もうどうしよもない。
『出てこんかぁー!!冒険者ども!!!』
『我らを差し置いてどういうつもりだー!!』
ドドーン! ズガーン!!!
レイリーは怒声と魔術が炸裂する音で目覚めた。
気分最悪である。
懐中時計を見ると、11時と昼目前であった。
昨夜はエグゼ率いる冒険者と宴会になり起床は昼と定めて深夜に解散となった。
エグゼ達が風呂から戻る前に大方の事情は女性陣に聞いて、作戦は明日たてようとお疲れ様会に突入したのだった。
酒を出す気はなかったが、冒険者の一人に珈琲を入れる凄腕がおり、気を良くしたレイリーが提供してあげたのだった。
勿論、魔王秘蔵酒を提供してもらった。
アーリアの件で脅した。婚約者にばらすぞって脅したら容易かった。
おそらく色々他にもやらかしてるだろう。
音声のみ繋いだときセイランやら知った魔人達の怒声や脅しが聞こえ、魔王は涙声だった。
身から出た錆であろうので無視したレイリーもなかなか鬼である。
冒険者達がゆっくり過ごせるようレイリーとナギは協力して拠点に手出しされた時は自分達だけが分かる魔術と結界を張ったのだ。
隣を見ればちょうど目覚めたナギが酷い顔して頭を押さえている。
昨日、魔王秘蔵酒を飲みすぎたのだろう。甘く飲みやすかったらしい。
二日酔にこの音と罵声はきついようだ。
「ちょっとはったおしてきますわ…」
ゆらりと立ち上がったナギの目は座っている。
加減を間違え大変なことをしそうな雰囲気である。
「ナギ、外部接続切れ。
私が対応する。得意分野だからな。」
「はい、じゃあ私は水飲んできます…」
こめかみを押えながらふらふらと立ち上がるナギを見送り、レイリーは怒声と魔術が炸裂する場所へと映像を繋げた。
勿論、あちらからは見えない仕様である。
元同期生の魔術研究塔の人間といかにも貴族の身分をかさにきてる系の人間たちが見える。
それに向かいレイリーは淡々と音声のみを繋ぐ。
「この拠点は魔王の協力で建てたものだ。
ここを攻撃するということは宣戦布告ととるが構わないか?」
途端に攻撃は止み、慌てたようにキョロキョロ周囲を見回す馬鹿達。
一番身分が高そうであろう奴がのたまった。
『なっ、すぐ開戦など、やはり魔人は野蛮なり!
魔王など信用できない!我々人族を征服する気であろう!』
「野蛮はそっちだろう?
魔国に先制攻撃ともいえる攻撃をしかけたあげく状況悪化させたにもかかわらず責任と危険とを冒険者に押し付け噛みつく。
ああ、言い分けはいらん。
人族や魔人うんぬんぬかすなら、先に来ていた小隊の女隊長も、魔術を斬った騎士も、そして私も人族。
他族のみならず同族に刃を向ける野蛮人は誰だろうな?
今度は魔道研究塔に責任を押し付けるか?
確かに一番の悪はそいつらだが、それを傍観し助長し共に食って掛かるなんぞ悪手もよいところだ。
ちなみにこの音声データとこれまでの経緯を書面にしたためたものは各国に今すぐ送る。
ここまで悪化させておいて国に帰って安寧に過ごせると思うな。
以上だ。」
ぶつりと接続を切って、レイリーは言葉通り各国に音声と文章を転送させた。
各国の王や代表者の手の中に。
「これで何にもしないどころか魔王に抗議する馬鹿がいたらまず間違いなく国が滅ぶな。」
レイリーはそっとため息をくつと顔を洗いに立ち上がったのだった。




