20 魔力鑑定をします
前回書くの忘れていましたが、大きな設定「物語の中」というのを追加しています。
8話までは殆ど変わっていませんが、それ以降は微妙に意味合いが変わっています。
以前から読んで下さっていた方には申し訳ないと思っています。こちらの方が書きやすいみたいなので途中変更しました。エピソードは変わっていません。
余りにもすることがないので『Brave Story』の物語での時間軸で出来事を整理してみよう。
現在の季節は春で、魔力鑑定を行っている。その年の夏に龍討伐で冒険者がやってくる。同じく夏にエミーリオが薬師の使いと偽って光魔法を身につけたエミーリオを引き取りに来る。収穫の秋になると原因不明の奇病が蔓延。冬真っ盛りの時に魔物の襲来だ。
『ルーシア』が関わったとされているのは龍討伐以外は全て。今のルーシア、私からしたらあり得ないことばかりである。どう考えてもエミーリオを売り渡したりしないし、どうやって原因不明の奇病を起こしたり出来るの!・・・うん、まぁ、魔物の襲来は出来そうだけどやらないよ?
詳しくあらましを出すと、人が良いランス神父は騙されても見る人が見れば一目瞭然の奴隷商がエミーリオを買いに来る。
エミーリオが売られる前後に『ルーシア』が大金を所持していたのをロイドに目撃されているらしい。あっという間に村中に広まり、無視していただけの村人から迫害や虐めが始まりエスカレートしていく。
その迫害から秋に原因不明の奇病は『ルーシア』の呪いと繋がり、『ルーシア』は大森林へと捨てられる。
そして冬に魔物を引き連れた『ルーシア』がガラム村を襲撃する――という流れ。
こうして事実だけをあげると、どっちが悪いんだ!と言いたくなる。因果応報。切れることのない悪循環である。
魔物襲来の時に大森林の入り口で『ルーシア』を見かけた村人達は、犯人である『ルーシア』を袋たたきにして殺そうとしたのだが、逃げられてしまい、その後はこのフロイド王国で目撃されなくなる。
どこで『ルーシア』が魔王を復活させたのかは分からないが、魔王として目撃されるようになるのはこの数年後。魔王の側には常に『ルーシア』がいたという。
ちなみに『勇者』君は現在8歳で転生者である。魔力鑑定で素質を認められ魔法学校に入学し、国の巫女から使命を頂いて勇者として訓練するだろう。
思い出せるのは今のところここまで、回避すべきは目先のガラム村で起きる出来事だ。
奇病が何であるか分からないけど、その病気の蔓延で秋の収穫が出来ず、冬の蓄えなく、村人は疲弊し魔物の襲来に殆ど無抵抗だったということ。
『ルーシア』である私が魔物を呼ばなくても、補正という矯正力がかかる可能性もあるので、これも回避する準備をしなきゃいけないだろう。
備えあれば憂いないだ。
あれからレベルも上がり熟練度も上がっているが、村人全員の食料を備蓄するにはまだまだ足りない。
冬の間、約90日間の250人分の食料となったら結構な量なのよね。日持ちするように加工もしなきゃいけないし。
こんなところにこもって時間をつぶしているのなら、大森林へ行ってレベル上げをするか、畑で【育成】で作物を育てている方が有意義なんだけどなぁ。
考えることぐらいしかすることがないので、これからの予定を整理しているところに、再びランス神父が来てくれた。
「ルーシア起きていますか?」
「はい」
もしかして、もう夜になったのかな?考えることに没頭していたから分からなかったわ。一応蝋燭は与えられているので、通風口からの光が陰りだしたときに灯している。
暗い地下室が、ランス神父が持ってきたランプの明かりも伴って、壁がオレンジに色づいた。
「兵士達は酔いつぶれているので、今のうちに貴方の魔力鑑定をしてしまいましょう」
そう言って、懐から布に包まれた大人の手のひらサイズの水晶玉を出す。
【サーチ】があるから自分の魔力量は分かっているつもり、だからといって「別にいいです」なんて言えない。
忌み嫌われ、無視されている私であってもランス神父のこういう公正さが、暖かさが嬉しいのだ。
この鑑定でとんでもない結果が出ると分かっていても断れなかっただろう。
「この水晶玉が魔力鑑定をしてくれるのです。簡単ですよ。ただ手を乗せるだけでいいのです」
はい。と差し出された水晶玉は貴重な物で各村に一つずつ・・・とはいかない。よって定期的に小さな村を回って魔力鑑定してくれる。そう、国の持ち物なのだ。
勝手に持ち出したとばれたらランス神父は罰せられるかもしれないので、言われて直ぐに私は手を乗せた。
すると、即座に水晶玉が反応する。
「っ!?、・・・こ、・・・これは、素晴しい!」
私の魔力はかなり大きいことを自覚している。だから携帯小説のようにまばゆい光が辺りを照らすのかと思っていたけど、どうやらこの水晶玉は魔力の大きさは関係ないようだ。
光を発しているけれど、どれもこれも裸電球ほどの光源はない。でも、七つ色の光が水晶玉の中に現れている。
なんだろう?と覗き込むとランス神父が説明してくれた。
「この一つ一つが属性の光です。銀色と紫色、灰色が大きく輝いているのが見えますか?それが貴方の属性です銀色は光属性、紫は闇属性、灰色が無属性です」
「!―――っ」
え?やばいじゃん!私はてっきり魔力の大きさが分かるもんだと思っていたから、安易に手を乗せてしまったけど、属性を知るための魔法具だとは思わなかった。いくらランス神父でも闇属性を秘めていると知れたら・・・私を畏怖してしまうかも・・・。
どうしようと?恐る恐る見上げると、水晶玉から発せられる属性光と蝋燭に灯されたランス神父の顔には驚愕が浮かんでいるだけで、他が伺い知れなかった。
捨てられる?おびえられる?エミーリオの次に優しくしてくれたランス神父から冷たい視線を感じられたら、流石の私も堪えるわ。
手を離していいですよ。と言われていないので水晶玉から離れていないけれど、体はランス神父の表情が分からないようにと離れようとしていた。
「怯えないでもいいですよ。誰にも言いませんから。それにしてもこの結果はおかしいですね」
私の心理状態を察したランス神父が小さく微笑み、私の腕にそっと手を乗せる。落ち着けと言っているのだろう。
いや、無理です。ランス神父の言葉を聞いたから余計に乱れましたよ。
「え?っとそれはどういうことですか?」
おかしいってどういうこと?何がおかしいの?私っておかしな人だったの?
まさか、私が転生者というのもばれるの?
一部変な物も混じってしまったけれど、水晶が転生者も映し出しているのかも知れないと、背中に冷たい汗が流れ出す。
別に転生者がいても良いのだろうけど、大半の人たちは体験したことの無いことだからさらなる差別を生むことになる。地球でもおかしな人、頭がいかれている。と思われるのだから、こちらでは更に酷いことになるだろう。
でも、それらの心配は私の杞憂だった。
「光、闇、無属性の光が輝いているのは分かりますね?その他にも小さいですが赤色、青色、黄色、緑色があるのが分かりますか?水晶玉の中に現れた色はその人の属性を全て出るのです。私なら光属性の銀色か金色ですね」
光属性だけは二種類あり銀か金が現れる。どういう仕組みで別れるのは教えて貰っていない。私の場合は銀色だ。
今はそんなことよりも目の前の水晶玉だ。属性を表してくれるのならば他の色も属性の色と言うことになる。
ランス神父の言うことが本当ならば、私は全属性を持っていることになるのだが、どうやらそこでおかしなことがあるようだ。
「赤、青、黄、緑は火、水、土、風属性を表し基礎属性と言われているものです。ルーシアにもそれらの属性があると考えられるのですが、輝きを発せず丸い玉になっているのです。こんなことは初めてなので、どういう意味を持つか・・・分かりかねます」
銀色と紫色、灰色の輝きが大きすぎて他の色を見落としそうなぐらいに小さい。丸い石が水晶玉に入ったかのようにただあるだけで他の三色のように輝いていないのだ。
どういうことなのだろう?物語を知っている私でも分からない。
無魔法は神様がくれた【サーチ】があるからイレギュラーとして、『ルーシア』は本来闇の【従魔】を極めたとして【従魔の闇魔導士再来】と言われている。だから闇魔法があるのは当たり前なのだろう。でも・・・と思う。じゃ、光魔法は?
真っ先に開花したのは光魔法だったよね?
物語の中の『ルーシア』は光魔法を使っていたという記述はなかった。
もちろん、火、水、風、土魔法なんて論外だ。
一体どういうことなのだろう?
「どういう意味を持つか・・・」
ランス神父が私と同じようなことを考えているとは思えないけど、同じ結論のその言葉にハッとして顔を上げる。
「あなたはもう12歳になりましたね。そろそろ魔法の練習をしてもいい頃合いです。一番良いのは魔法士の弟子になることですが・・・まずは練習してみましょう」
私は黒髪黒目の持ち主で忌避される存在。素質があっても誰も私を弟子として取ってくれないだろう。それを分かっているランス神父は悲しそうに微笑んだ。
ここまでの様子をうかがうに、どうやら私を畏怖してないようなので安堵する。
練習かぁ、もう既に色々使っているってランス神父が知ったら吃驚するだろうか?それとも精神が未熟なままで使ったら危険でしょう!と怒るだろうか?
無難な答えとして「はい」と素直に返事しておいた。
「私もこれがどういう意味なのか調べてみます。貴方は全属性が使えるかどうか試して下さい。魔法書を読破している貴方だったら練習の仕方は分かりますね。私が必要なときはいつでも呼んで下さい。あ、そうそう、練習するときは村人には知られないようにね」
私が以前、魔法に興味を持ったときはあまり良い顔をしなかったのに、どういう風の吹き回しだろう。積極的に練習しなさいとは・・・。危険性を知っているから、村人には知られないようにと注意をしているし。
闇魔法さえ表に出なければ、忌避されている存在であっても認められる可能性があるのかな?
そうだったらいいなぁ、とランス神父が出て行ってから冷たい床に横たわった。
歴史上全属性が現れたことはなく、伝説の魔法士であっても5つまでの属性であった。
ルーシアの前では平静に保っていたが、ランス神父は驚愕とともに全属性をもつ人物が現れたことに不安を感じながら、こっそりと水晶玉を元の場所に戻す。




