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プチプリンセスの恋  作者: 花見さくら
これからの未来
29/29

 そして、祝言が始まった。

「月島夏菜と蓮アドルフの婚礼の儀とする」

 二人で、金屏風の前に座って、参列者の方々に見守られて盃を交わす。

 アドルフは、袴を着て座っている。

「いや~、でも、かわいらしい嫁さんですね」

「夏菜は、かわいいだろ」

「そうだな、かわいい子だな」

 夏菜は、おとなしく、頬を染めて座っている。

 みんな、食事を食べて祝言は、一度終わった。

「アドルフ、ぼろが出なかったかしら?」

 夏菜がそういった時の姿は、頬紅を塗って、おしろいを少しはたいて、口紅を軽く塗っている。アドルフにとっても化粧をした夏菜は初めてみる物だった。

「ねえ、アドルフ」

「ごめん、夏菜ちゃんが、きれいになっちゃったから、どうしていいのかわからなくなってしまった」

 アドルフは、顔を抑えてそう言った。

「そ、そんなに変わったかしら?」

「女の子は、化粧すると変わるんだね」

 夏菜を抱き寄せてそう言った。

「アドルフ、第二部の、宴もがんばりましょうね」

 夏菜は、妙に気合が入っていた。

「もしかして、明姫の事を心配しているの?」

「今、会いに行ってくる」

 明姫の元へ行くと、輝太郎が来ていた。

「女狐に、憑かれていた姿とまるで違うな、驚いた」

 少し嫌味にそう言う輝太郎がいた。

(大丈夫かしら?)

 夏菜は、ふすまに張り付いて訊いていた。

「輝助を殺したのは、あんたなんだ。いくら、きつねがやった事でも、私は、許さん。でも、生まれる子供には、罪は無い、かわいがってやる」

「よろしくお願いします」

 明姫は頭を下げた。その瞬間、おもわず、戸を開けて。

「待ってください、輝太郎様、明姫は、無罪なんです。自分の容姿に自信が持てず、きつねを頼ったのは、いけない事です。でも、だれしも弱い部分に付け込まれることはあると思います。明姫も変わろうとしているんです。その姿を宴で見せます。だから、許してあげてください」

「この弱そうな嬢ちゃんが、何かできるなんて思えんな」

「できます。見ていてください」

 夏菜は、強気でそう言った。

「夏菜ちゃんの頼みじゃ、仕方ないな、宴、楽しみにしているぞ」

 輝太郎は、笑いながらそう言った。

「明姫、大丈夫ですか?」

「夏菜、あんな風にたんかを切っちゃって、輝太郎様に嫌われたりしたらどうするつもりだったの?」

「どうするも、こうするも、明姫の事で頭がいっぱいでしたわ」

 夏菜は、へへへと頭に手をやる。

「夏菜は、強いな、成功するかもわからないものに賭けるなんて」

「私は、信じているから」

 夏菜は、笑顔でそう言った。

「まあ、夏菜ったら」

 明姫が微笑む。


   〇 ◎ 〇


 そして、宴の時間が来た。辺りの男達は、酒を飲み、ぐでんぐでんに酔っぱらっていた。夏菜は、酒は、あまり好きじゃないので、少しだけにした。

「めでたいね~、おかわり」

「アドルフも飲めよ~」

 と絡んでいる酔っ払い達もいたが、宴は、酒の席なので、普通の事である。

「夏菜ちゃんは、ちっこいからお酒ダメかな?」

 などと、冗談なのかけなしているのかわからない事を言われるので、困ってしまう。

 酒に席を盛り上げるお座敷芸、その一つが明姫の琴である。

 中盤になり、明姫の出番がやってきた。

「明姫って、きつね憑きの?」

「ひっこめ、ブス」

やはり、罵倒されている。それでも、明姫は前を向き、琴を奏でた。

コロテンシャン テンシャン コロテンシャンとむずかしい曲を弾いて行く。

辺りの人達は、酒を飲む手を止めて聞き入った。

「すげ~」

 誰かがそう言った。終わるころには。

「明姫すげーじゃん」

「明姫、明姫」

 応援されるまでになっていた。明姫は、微笑み、裏へ戻った。

「輝太郎様、見ましたか? あれが明姫の覚悟ですよ」

「すごかった。本当にあの弱気だった女がやったのか? 確かにきつねに勝つことが出来たのかもしれないな」

輝太郎は、酒を飲んでそう言った。

「女の強い、輝希国は、安泰だな」

 大笑いしてそう言った。


 その夜、夏菜は、アドルフと一緒にいた。月が輝く空の下、二人並んで縁側に座っていた。

「明姫、すごかったでしょう」

「うん、すごかった」

 アドルフは、夏菜を抱き寄せた。

「ねえ、夏菜、俺、気が強くて、しっかり者で、少しおてんば。そんな、マイプチプリンセスと結婚出来て最高に幸せだよ」

「その、マイって何なの?」

「俺のって事」

 優しく頭をなでられる。

「私、アドルフのプリンセスなの?」

「うん、正しくは、プチプリンセス」

 アドルフとキスを交わした。




 後に、明姫には、かわいい女の子が生まれ、姫としてかわいがられた。

 夏菜は、最終的には、五人の子供を育てる、肝っ玉母さんになっていた。

 それでも、夏菜と明姫の友情は続き、時々、アドルフがやきもちを妬いては、娘と息子に呆れられていた。

 輝希国は、安泰を保ち、女が強い国として、有名になっていた。

                (了)


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