表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
プチプリンセスの恋  作者: 花見さくら
夏菜のはじまり
2/29

 そのうち、えんだんの日が来た。

「今日は、えんだんって言う物をするんでしょう?」

「ええっと、そうですよ、夏菜様、今回会う人は、夏菜様の将来の旦那様になる方ですよ、良い印象を持たせてくださいね」

「? なんで? だんなになる人には、イタズラしては行けないの? 一緒に遊んでも行けないの?」

「もちろんです」

 花は、いつも以上に高級な白い着物を持って来てそう言う。その着物は、たくさんの色の花模様があった。小物は、金色の物が多い、何より、動きづらそうだ。

「これ、着るの?」

 夏菜の頭の中では、動きづらい着物は、着物の中でも、最も嫌いな物で、いやだ、いやだ、と思っていた。

「夏菜様、逃げないで下さいね」

 花は、怖い笑顔を浮べ、夏菜の肩をがっちりつかんだ。

(怖い!)

 夏菜は、しぶしぶ着物を着せられた。

「今日は、城から出ては、いけませんよ」

「は~い」

 しばらく大人しくして、縁側で赤トンボが飛ぶのを見ていた。

(ここで、じっとしていたら、お琴や舞の稽古をさせられるんじゃないかな、こっそり逃げよう)

 庭には、逃げ道があった。それは、庭師の出入り口だ。夏菜は、こっそり、庭から出ることに成功した。しかし、花革国は、森ばかり、動きやすい恰好ならいくらでも楽しめる、だが、今日は、動きづらい着物だ。

(どうしよう)

 夏菜は、しばらく森を歩いた。今日の下駄は、特に歩きづらいと思っていた。

 そこで、チーチーと鳴く鳥がいた。

「鳥さん、こんにちは」

 よく見ると、木の上で、子供にエサをあげているようだ。茶色い羽の大きな母鳥と、まだ、羽の生えそろっていない雛鳥がいた。

「そうか、巣があったのね」

 喜んで、見つめていると、雛鳥が、落ちて来た。

(受け取らなくちゃ)

 体は反応した。けれど、着物が邪魔をして、動けなかった。

(雛が死んじゃう!)

 そう思って、目を開けると、チーチーと声が目の前でする。

「危なっかしいな」

 雛を受け取ったのは、金髪で黒い目をしていて、鼻筋がすっとしている。見たこともない位ステキな男の子だった。

「大丈夫? ちゃんと捕まえたから」

 ニコリと笑い、夏菜を見つめる。

「あっ、あの~」

「ん? ああ、今、巣に戻すから」

 美しい金髪の男の子は、何もなかったかのように笑い、迷わず木を登った。夏菜の様に素早く。

「はい、もう落ちないでね」

 雛を巣に戻すと、また、夏菜の前に戻ってきた。

「これでいいね」

「うん」

 夏菜は、頬が熱くなるのを感じた。心臓がドキドキ高鳴っていた。

(なんてきれいな髪なんだろう)

 みとれていると。

「どうしたの?」

「あの~、きれいな髪ね、私、とっても気に入ったわ」

 すると、金髪の男の子は、目を見開き。

「そう? そんなに良い物じゃないんだけど」

「そんなことない、ステキよ、今まで、私が見て来た人の髪の色で一番きれいな色をしているわ」

 夏菜は、いつの間にかムキになっている自分に驚いた。

「ありがとう、君は、いい子なんだね」

 金髪の男の子は、いつの間にか目の前からいなくなっていた。

(妖精って奴かな?)

 心がこんなに乱されるのは、初めての事なので、戸惑った。


    〇 ◎ 〇


 夕焼けが照るころ、城に着いた。

「夏菜様、また、逃げ出したのですか?」

「うん」

「今日は、えんだんがあったのに、絶対破談だ」

「そうなると、お父さんもお母さんも困るの?」

「ああ」

 父は不機嫌そうにそう言った。

「ごめんなさい」

 夏菜は、虚ろな表情でそう言うと、大人しく部屋に入って行った。

(今日あった事は、誰にも言わないの、私だけの秘密、そうしないとあの妖精さんは、二度と出てきてくれないわ)

 ワクワクした心でそう思った。

(あの森には、妖精がいるのよ)

 寝間着に着がえさせられ、お月さまに向かってこう言った。

「また、妖精さんに会わせてね」

 夏菜は、そのまま眠りについた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ