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あるところに、花革国と言う、自然が豊富で、ほとんどが、森で出来た国がありました。そこには、小さな城があり、毎日農民が城主に会いに来ていた。
その農民は、主に林業を主として働いており、動きやすいように筒袖を着ている物が多かった。
そんな、花革国の城には、六才になる一人娘がいた。国中の人のうわさによると、とても、やんちゃな女の子だったようだ。
城の外では、一本の木を切ろうとした農民が、木を指差して固まっていた。
「な、夏菜さま」
花革国のやんちゃ姫は、夏菜と言う少女だった。黒い髪の毛を結い上げていて、目はきらきら輝いている。着物は、高価な布で作られているのに、立派に見えず、泥だらけであった。
農民がなぜ大声を出したかというと、夏菜が木に登っていたからだ。
「今、降りる」
夏菜は何事もなかった様に、木を降りてくる。その動きは、猿かムササビかと言うぐらい、速かった。
「夏菜さま、着物が破れてしまいます。また怒られてしまいますよ」
「ぎゃっ! 本当! 破れているわ」
夏菜は急に困ったような顔をして、立ち止まってしまった。
「夏菜ちゃん、しっかり叱られたら、もうしないだよ」
「ええ~、やだ! 登りたい」
夏菜は、二カッと笑った。その姿は陽だまりの様だった。
〇 ◎ 〇
夏菜は、こっそり城へ戻った。
「夏菜!」
母がドスの効いたこわい声を出して、夏菜の名を呼ぶ、こういう時は、怒られるしかないのだ。
「また、着物を泥だらけにして」
「ごめんなさい」
一度謝ることにした。だが、心の中では、反省などしてはいなかった。
「夏菜、どうせ、また、やるのでしょう?」
夏菜は、図星を付かれギクッと、体が動いてしまった。
「そうなんでしょう?」
「やりません」
夏菜は、母の言葉に負けるつもりは無かった。女の子として、姫として、良い事ではない事位、自分でも知っていた。だけど、木に登ることは楽しい事、だから、やめられないのだ。
「まあ、夏菜がそこまで言うのなら、今回は、許しましょう、次は無いと思った方がよろしくてよ」
「はい」
母の迫力に押されて、つい、返事をしてしまった。
(どうしよう、しばらく、木に登れないわ)
夏菜は、絶望的な気持ちで部屋に戻ろうとした。その時。
「夏菜に縁談?」
父がそう言っているのを聞いた。
「そうなの、まだ六才で、運命が決まるなんて、なんだか、夏菜が、かわいそうじゃないかしら?」
「いずれにしても二日後、相手が様子を見に来るようだよ」
「そう」
母の着物は、青い生地に、白い花のような丸が描かれている物で、布は高級品だ。父は、袴をはいていて、武士なのだと思わせる、家紋が付いている。
(えんだんって何かしら?)
夏菜は、良い事ではない事は分かったが、それ以上に思う事はなかった。
(いつも、城の決まりは、嫌な事ばかりだもの、お琴か舞の稽古の事じゃないかな?)
ふと、そう思うと、二日後が来なければいいと思った。夏菜は逃げる計画をこっそり企てていた。
「夏菜様、捕まえました」
そう言って、夏菜を取り押さえたのは、侍女の花であった。花は、美人で、お琴も舞も上手だ。そして、何より真面目なのである。
「今日こそ、稽古をしましょうね」
「やだ!」
「まあ、着物が汚れているわ、今すぐ着替えましょう、話は、それからですね」
花は、夏菜の手を取り、一緒に部屋まで歩いてくれた。
実は、夏菜は、この、花にいたずらをする事が大好きで、カエルやネズミを連れて来ては、花に見せていた。その時の、花の甲高い悲鳴は、何度聞いても飽きないものであった。
〇 ◎ 〇
部屋に着き、着物を着替える、夏菜は、花が後ろに座ったのを見た瞬間。
「わっ!」
大声を出して、松ぼっくりを投げた。
「きゃー」
花の甲高い声が城中に響きわたった。
「どうしたのですか?」
刀を持った男の人が、花を見て、心配そうにしている。
「夏菜様がまたいたずらをしてきたのですわ、嫌になっちゃう」
花は、乱れた着物を直して、立ち上がった。
「夏菜様~」
花の怒りは、頂点に達していた。花は怒ると、容赦もなく、こめかみをぐりぐりしてくるのだ。
(あれ、痛いのよね、嫌だな~)
夏菜が、心の中で、そう思っていると、案の定、ぐりぐりされてしまった。
「反省しましたか?」
「はい」
夏菜は、はっきりと返事した。しかし、心の中では、反省など全くしていなかった。
「夏菜様って、返事だけは、一人前ですね」
花はそう言って、深いため息をついた。花も夏菜が反省していない事など、丸わかりの様だった。
きれいな着物に着替えた夏菜は、帯が気に入らず、少し不機嫌だった。でも、また、着替えさせられるのは、ごめんだ。着物を着ると言う行為は、めんどうくさいから。
縁側で、庭の柿をみつめていた。赤トンボが飛んでいて、秋桜は風に揺れている。それを見ているだけで心が安らいだ。
「今日は、きれいなお月様が出るかな?」
空を見上げてそうつぶやいた。
その夜、お月様は、満月で、きれいな丸型だ。光が、窓辺から差し込む。
「明日も明後日もいい日になる!」
そうお月様に話しかけた。




