その24
敬太は歯を食いしばりながら、両手で受け詰めた力獣の右足を思い切り持ち上げようとします。さすがの力獣も自分の体が浮いていることに気づくと、今までと違う敬太の攻撃にあわてふためいています。
「おいっ、おいおいっ! い、いきなり持ち上げて何を……」
「んぐぐぐぐぐっ……。力獣め! これでどうだ!」
敬太は力いっぱい持ち上げると、その場で力獣を何度も地面に叩きつけました。そして、敬太は仰向けに倒れている力獣へ立て続けに攻撃を加えていきます。
「えいっ! えいっ! えいえいっ!」
「いてっ、いてててててっ……。このチビめ……」
敬太は、力獣の真上に乗ってピョンピョンと両足で飛び跳ねています。痛々しい表情で顔をゆがめる力獣を横目に、敬太はまだまだ攻撃の手を緩めません。
「これでどうだ!」
「うっ! 息が、息が苦しい……」
力獣は、敬太に首を強く絞められてとても苦しそうです。これを見た敬太は、両腕を使っての首絞めを続けます。
「苦しい……。こ、このチビめ……」
「力獣め! これだけ首を絞めてもまだしぶといとは」
敬太は、首絞めで一気にとどめを刺そうと試みようとします。しかし、力獣との戦いに集中するあまり、戦う相手があと2人いることに敬太は気づいていません。
「どうだ! これでまいった……。うっ、うぐぐぐぐっ……」
「おれたちを忘れてもらっちゃ困るぜ! ぐはははははは!」
双獣炎は、敬太の首をわしづかみにして持ち上げています。一気に劣勢に立たされることになった敬太の前には、先ほどまで倒れていた力獣の姿があります。
力獣は怒りに満ちた表情を見せながら、まるで猛獣のような目つきで敬太をにらみつけています。
「よくもこのおれを痛めつけやがって……。このままただで済むとは思うなよ……」
「獣人め、早く放してよ! 早く放してよ!」
敬太は両足をバタバタさせながら叫んでいますが、獣人たちはそれに耳を傾けるつもりはありません。その間、双獣炎は怒りに震えている力獣に声を掛けました。
「さてと、この敬太をどうするとしようかな」
「そうだなあ、まずはおれの手でこいつを叩きのめさないといけないなあ」
力獣の言葉を聞くと、双獣炎は敬太を真正面に放り投げました。すると、力獣は敬太を右足で回し蹴りを食らわせています。
「おりゃあ! おりゃあ! おりゃあ!」
「い。いててててて……。獣人め、よくも汚い手を使いやがって!」
力獣から続けざまに蹴りを食らった敬太ですが、このくらいのことでやられるわけにはいきません。敬太はすぐさまに立ち上がると、怒りにまかせて力獣の真正面へ体当たりしました。
「相変わらずバカだなあ、おれ以外にも戦う相手がいるのが分からないとは」
力獣がどんなに強くても、敬太は最後まで戦おうと体当たりを繰り返しています。その後方では、双獣炎と双獣雷が鎖を振り回しながら待ち構えています。
「えいっ! えいっ! えいっ!」
「あのガキが気づかない今のうちに行くぜ! そりゃあっ!」
双子の獣人は、敬太の両腕にからまるようにそろって鎖を投げ込みました。けれども、敬太はその動きにすばやく反応しました。
「同じような手に乗るようなぼくじゃないぞ!」
敬太は、双子の獣人が放った鎖をかわして真上へ飛び上がりました。そして、鎖のほうは力獣の両腕にそれぞれがんじがらめにしばられることになりました。
「きさまら、おれの体に鎖を巻きつけやがって!」
「す、すいません……。あのチビをこの鎖でしばろうとしたつもりが……」
そんな獣人たちを横目に、敬太は空に浮かびながら大の字になりました。すると、敬太の額がまぶしく光り出しました。それは、力獣や双子の獣人からもはっきりと見えるほどの強い光です。
「あ、あれって、もしかして……」
「空中で突然光り出したということは、まさか獣人の紋章が現れたとでも……」
双子の獣人は森の中で戦ったときに、獣人の紋章が現れた敬太の姿を見たことを思い出しました。しかし、空中に気を取られている間にその光は双子の獣人に向かって急降下してきました。
「わわわあああっ! ま、まぶしくて目が……」
「あんなに強い光を見たら……。目が開けられない……」
獣人たちは、敬太が包まれた強い光におののいています。敬太の額に現れたのは、獣人の子供であることを示す紋章です。
敬太の体を包んだ強い光が消えると、双子の獣人は不気味な脅し文句を2人そろって発しました。
「やっぱり、あの紋章が現れたか」
「ぐはははは! おめえみたいな裏切り者は、この場で死んでもらわないと……」
怪しげな笑い声を上げる双子の獣人ですが、そんなことで敬太が動じることはありません。敬太はその場ですかさず双獣炎を体当たりすると、胴体をつかんで一気に後方へ投げ飛ばしました。
「いててててて……。い、いきなり投げ飛ばしやがって……」
「ぼくの力はまだまだこんなものじゃないぞ! え~い! とりゃあああっ!」
敬太の攻撃はまだまだ止まりません。双獣雷に対しても、間髪入れずに体を持ち上げては双獣炎が仰向けに倒れているところへ叩きつけました。
「え~いっ! とりゃあっ! え~いっ! とりゃあっ!」
「頼むから上で飛び跳ねるのは……。いててっ! いててててててててっ……」
双子の獣人に対して優勢に戦いを進める敬太ですが、それを食い止めようと力獣が目の前に迫ってきます。しかし、その影にも敬太は全く動じることはありません。
「力獣め、これでも食らえ! とりゃあっ!」
「だから言っているだろ! おめえの攻撃なんぞ……」
「とりゃとりゃあっ! とりゃとりゃとりゃあっ!」
敬太は、力獣へ立て続けに強く殴ったり蹴ったりを繰り返しています。最初はビクともしなかった力獣ですが、敬太はさらなる攻撃を続けるうちに力獣の弱点らしきものを見つけました。
「えいえいっ! 力獣め、これでどうだ! とりゃあとりゃあっ!」
「うわわっ! おめえ、おれの足ばかり……。わっ! わわわわわわわわわあ~っ!」
敬太は、力獣の両ひざに対して集中的に攻撃を加えていきます。すると、力獣は自分のひざに強烈な蹴りを食らい続けてそのまま背中から地面へ倒れてしまいました。
これを見た敬太は、力獣の大きな体の上へ乗っては飛んだり跳ねたりの攻撃をし始めました。力獣の太ももの上でピョンピョン飛び跳ねるたびに、力獣の激しい痛みは頂点に達しています。
「えいっ! えいえいっ! えいえいっ!」
「このチビめ、よくも……。いてえええええっ! いてえええええええっ!」
これを阻止しようと、双子の獣人は敬太が飛び上がるのを見計らって挟み撃ちにしようと試みます。そして、敬太が再び空に浮いたそのときのことです。
「うりゃあっ! おめえの思い通りになると思ったら大間違いだぜ!」
「飛び道具がなくても、おれたちがどれくらいの力があるか思い知らせてやるわ!」
双獣炎と双獣雷が両側からそろって飛び上がると、敬太の頭を狙って強烈な蹴りを同時に食らわそうと試みます。
「これでも食らって地獄へ落ちやがれ!」
双子の獣人は、敬太の後ろから頭を目がけて蹴り上げようとしました。しかし、そのとき想像もできないことが起きました。
「おれたちの攻撃をどうして知っているんだ……」
「ま、まさか後ろに目があるのでは……」
双獣炎と双獣雷がそろって蹴り上げようとした足は、敬太が両腕を曲げてそれぞれの手で握りしめています。双子の獣人にとっては形勢逆転を図るはずが、かえって自分の首を絞める結果になるとは夢にも思ってみませんでした。
「獣人め! どんなことがあってもぼくは絶対に負けないぞ!」
敬太は、そのままの体勢で双子の獣人を空中から地面へ思い切り叩きつけました。双獣炎と双獣雷は、うつ伏せの状態で次々と折り重なったまま動くことができません。
これを見た敬太は、空中から一気に急降下して力獣の右膝に片足で着地しました。そして、目の前に折り重なった双子の獣人へ飛び移ろうとそのまま踏み込みました。
「い、い、いてえええええええええええええ~っ!」
力獣は、敬太に踏まれた右膝のあまりにも激しい痛みにのたうち回っています。それを横目に、敬太はうつ伏せで重なっている双子の獣人の背中をピョンピョン飛び跳ねています。
「えいっ! えいえいっ! えいえいっ!」
「頼むからやめて……。いてててっ、いててててててててっ!」
さすがの双子の獣人も、敬太による飛び跳ね攻撃の前になかなか反撃することができません。その間も、敬太の攻撃は緩めることはありません。
「ギュルギュル、ギュルギュルゴロゴロゴロゴロロっ……」
敬太は双獣雷の背中から高く飛び上がった瞬間、急にお腹が痛くなってきました。しかし、それは敬太が放つ必殺技を使う絶好の機会でもあります。
「よ~し! ここから一気にあの必殺技を放ってみせるぞ!」
敬太は、空に浮いた状態のままでお腹に思い切り力を入れました。そして、必殺技を食らわそうと一気に急降下していきます。
「プウウウウッ! プウウウウウウウウウッ! プウウウウウウウウウウウウ~ッ!」
「うっ! く、くさい……。本当にくさい……」
「お、おれたちの真上で……。こんなにくさいおならをしやがって……」
敬太が双子の獣人たちに放ったのは、元気いっぱいのおならである特大元気噴出砲の3連発です。敬太が大きなイモを食べたおかげで、特大元気噴出砲の凄まじい威力を発揮しています。
そして、折り重なった双子の獣人の上に尻餅をつくと、さらに元気なおならの音を2回も響かせました。
「プウウウウウウウウウウウウウッ! プププウウウウウウウウウウ~ッ!」
「こ、このチビめ……」
「死ぬほどくさいおならを漂わせるとは……」
特大元気噴出砲を立て続けに命中させると、敬太はいよいよとどめの一撃を食らわせようと再び高く飛び上がりました。




