その9
今日の朝も、お寺の庫裏の中ではいつものように元気な声が聞こえてきました。
「おっかあ! 今日もお布団に元気いっぱいのおねしょをしちゃったよ!」
「敬太くん、すごいねえ! 敬太くんらしいでっかくて見事なおねしょをお布団にやっちゃったね」
敬太の朝は、自分のおねしょ布団をおせいに見せることから始まります。
敬太は、毎日のようにやってしまうお布団への元気なおねしょを元気な笑顔でおせいに見せています。おせいも、敬太のおねしょ布団をみて今日も元気であることに安心した顔つきを見せています。
すると、他の男の子たちもお布団から起き上がる度に、自分のお布団を敬太やおせいに見せようと駆け寄ってきました。
「ぼくのも見て! 敬太くんみたいに元気なおねしょをお布団にしちゃったよ!」
「ぼ、ぼくも…。お布団に今日もおねしょしちゃったの」
敬太の目の前には、紺次郎と峰七がそばへやってきました。敬太と同じようにいつもおねしょをする峰七は、相変わらずモジモジしながら恥ずかしそうな表情をしています。一方、週に2~3回おねしょをする紺次郎は、自分のお布団に描かれたおねしょが敬太みたいに元気いっぱいなので、照れながらもちょっぴりうれしそうです。
よくよく見ると、普段あまりおねしょしない菜八と居六も、珍しくお布団の上におねしょをしています。それでも、おせいは男の子たちがおねしょしちゃっても、いつもと動揺にやさしい笑顔で接しています。
「ふふふ、お布団におねしょをこんなにいっぱいしちゃったね。元気な子供だったら、お布団や腹掛けに元気なおねしょするのは当たり前のことだよ」
「でへへ、これからもおねしょをしたら、必ずおっかあに見せてあげるよ!」
でっかいおねしょは、元気な子供である立派な証拠です。敬太たちも、やってしまったおねしょを決して隠すことなくおせいに堂々と見せています。
男の子たちは、いつもやさしいおせいのことが大好きです。おねしょしちゃっても、おせいが頭をなでなでしてくれるのでうれしそうです。
お寺のお庭には、敬太をはじめとする男の子たちのおねしょ布団がずらりと並んでいます。その中でも、敬太のお布団に描かれたでっかいおねしょには、他の男の子もかないません。
そうは言っても、これだけおねしょ布団を干していると他の洗濯物を干せる余裕はほとんどありません。すると、おせいはある妙案を思いつきました。
「敬太くんは昨日、大きな木を切り倒しに山の中へ入ったよね」
「うん! でっかい木をまさかりで切り倒したのを丸太にしてここまで持って帰ったよ! でも、どうしてこんなことを聞くの?」
敬太は、おせいが昨日の出来事を自分に聞いてきたので、どうしてかなとちょっと戸惑っています。すると、おせいはみんなに何かを伝えるために口を開きました。
「敬太くんが木を切り倒しに行った山奥に、温泉が湧き出ているのを見つけたの」
「温泉って、どういうものかなあ?」「温泉? う~ん…」
「みんなも、いっしょにそこへ行ったら分かるわ」
おせいは自分で木を切り倒しに行ったときに、温泉らしきものを偶然発見しました。その温泉の水に手をつけると、自分の手がすべすべになってきました。その効能を知ったおせいは、いつか男の子たちを温泉まで連れて行きたいと考えていました。
しかし、敬太も他の男の子たちも、温泉という言葉を聞くのは今回が初めてです。そのため、敬太たちは温泉というものがどんなものなのか全く分かりません。
そこで、おせいは敬太たちを温泉がある場所まで連れて行くことにしました。敬太たちは、温泉がどんなのものか今から楽しみにしています。
「おっかあ、温泉に入ると何かいいことがあるの?」
「温泉に入ったら、体がすべすべになるわよ。敬太くんもいつも畑仕事をしたり、いろんなお手伝いを一生懸命してくれるからね。温泉に入って、汚れたところをちゃんと洗わないといけないよ」
おせいは、自分が木を切り倒しに行ったときと同じ道を歩き続けています。敬太たちもおせいの案内に従いながら、後ろからついて行くようにして歩いています。
お寺からしばらく歩くと、上り坂から下り坂へ差し掛かるところへやってきました。そこは、おせいや敬太が木を切り倒しに行った山の入口です。
「これから山へ入るけど、ちゃんと私や敬太くんの後をついてきてね」
「みんな、ぼくの後を離れないでついてきてね!」
男の子たちは、先に山へ入ったおせいと敬太の後をついて行きました。山の中は、普段ここに立ち入らない男の子たちにとって薄暗くて不気味に感じられます。
「もしかして、ここにはお化けが出るかも…」「恐いよ、恐いよ…」
「そんなに恐がらなくても大丈夫だよ! お化けが出たら、ぼくがみんなを守ってあげるからね」
あまりの不気味な雰囲気に、男の子たちは次々と敬太のそばへ寄ってきました。男の子たちが恐がっている様子に、敬太はみんなを守ろうと自ら前に出ました。
おせいが見つけた温泉まで行くには、まだまだかなりの距離があります。おせいは、案内役として先頭を歩きながらこうつぶやきました。
「どうか、子供たちがこれからも無事に過ごせますように…」
おせいは、獣人たちによって村人たちが皆殺しにされたときのことを忘れていません。いっしょにお寺まで苦しい道のりを歩いてきた男の子たちは、おせいにとって大切な宝物といえるものです。だからこそ、おせいはこれからも男の子たちが何ごともなく無事に過ごしてほしいと願っているのです。
しかし、そんなおせいの願いを砕こうと、目の前には図体の大きい獣人たちがいきなり現れました。
「ふはははは! 敬太め、よくぞあのマムシの毒から見事に生還したようだな。だが、今度はそうはいかないぞ」
「こんなところに、あの村の生き残りがいたとは…。こりゃあ探す手間が省けたわ!」
獣人たちは、おせいや敬太たちの進路を阻むように立ち塞がっています。ここを通るためには、獣人たちを倒さないことにはどうにもなりません。
すると、獣人たちは敬太の赤い腹掛けの下を見た途端、不気味な笑みを浮かべながらこう言い出しました。
「そういえば、おめえの腹掛けの下がぬれているのはどうしてかなあ? もしかして、今日もおねしょしちゃったとか」
「おねしょぐらい、ぼくみたいな小さい子供だったらいつも当たり前のことだい!」
獣人がおねしょのことを追及すると、敬太は小さい子供のおねしょは当たり前と元気な声で言い返しました。
「ここを通さないなら、こっちから行くぞ! とりゃあっ!」
「ふはははは! おめえの動きなんかお見通し…」
敬太は獣人を倒そうと、右足を踏み込んで飛び上がりました。これを見た獣人は、すかさず敬太の攻撃を食い止めて反撃に転じようとします。
しかし、獣人が考えていた目論見は大きく外れることになります。
「えいえ~いっ、とりゃあっ! とりゃあっ! とりゃああっ!」
「うげっ! うげげげげっ、うげげげげげっ…」
敬太が飛び上がった先は、獣人の近くにある大きな木です。その木の幹に左足で踏み込んで角度を変えると、獣人の真横から右手の強烈な拳で何度も殴りつけました。不意を突かれた獣人は、敬太の拳が何度も自分の頭に命中するとそのまま地面に倒れ込みました。
この様子を見たもう1人の獣人は、自分の仲間を痛めつけた敬太への怒りをあらわにしています。
「よくもおれの仲間を痛めつけて…。このままただで済むとは思うなよ」
「それはぼくのセリフだぞ! え~いっ、とりゃあっ!」
「うわっ、何をするんだ! 前が、前が見えないぞ…」
敬太は、獣人に反撃を与える暇を与える前に攻撃を仕掛けようとジャンプしました。敬太は獣人の顔面にそのまま飛びつくと、獣人は突然前が真っ暗になったのであたふたしています。
「獣人め、これでも食らえ! プウウッ! ププウウウッ! ププウウウウウ~ッ!」
「うっ! よくもでっかいおならをおれの顔の前で…。本当にくさい…」
敬太は、獣人の顔面へでっかいおならを3回続けて命中させました。すると、獣人は敬太のくさいおならが直接命中したので、思わず足がよろけてしまいました。
これを見た敬太は、すぐさま飛び降りて地面に着地しました。そして、敬太は獣人に向かってさらなる攻撃を加えていきます。
「これでどうだ! えいえ~いっ! えいえ~いっ! えいえ~いっ!」
「うわっ! グエッ、グエエッ、グエグエッ…」
敬太は、獣人の胴体に強烈な拳を何度も食らわせました。すると、獣人は敬太の拳がお腹に思い切り命中したこともあり、その勢いで真後ろの大きな木に叩きつけられました。
「みんな、獣人はぼくがやっつけるから先に行って!」
「敬太くん、獣人たちを相手に1人だけで大丈夫なの?」
「大丈夫だって! 心配しないで温泉のほうへ早く行ってね」
敬太は、おせいたちに温泉のほうへ早く行くように言いました。しかし、おせいは敬太だけを残して先に行くことをためらっているようです。ほかの男の子と同様に、おせいはかわいくて元気な男の子である敬太をここへ残すのが心配でなりません。
それでも、敬太の意思が変わることはありません。獣人たちによって村人たちが皆殺しにされたことをおせいから聞いているからこそ、敬太はおせいたちをこれ以上危険な目に遭わせたくないとの思いがあります。
敬太のあまりにも強い意思に、おせいは他の男の子たちとともに温泉のあるところへ向かうことにしました。
「敬太くん、大丈夫かな。ここには恐ろしいマムシがいるみたいだし…」
おせいは、敬太がひん死の状態でお寺に運ばれたときのことを脳裏に浮かべています。おせいは山奥を進みながらも、敬太を1人残してこのまま歩き続けることに複雑な思いを見せています。
そのころ、敬太に真横からの攻撃で地面に倒れていた獣人が、痛々しい表情を見せながら立ち上がりました。獣人の顔つきは、正面にいる敬太を見るたびに怒りを充満させています。
「よくもこんなに痛めつけやがって…。もう絶対に許さないからな!」
「こっちからも行くぞ! えいえ~いっ!」
獣人は、敬太を自らの力技で倒そうと突進してきました。しかし、敬太は両腕に力こぶを入れると、突進してきた獣人をそのまま食い止めました。
「獣人め、今度はぼくの凄い力を見せてやるぞ! んぐぐぐっ! んぐぐぐぐっ!」
「いきなり何をするつもりだ! 今すぐここから下ろせ! 下ろせ!」
獣人を食い止めた敬太は、凄まじい腕力で獣人をそのまま真上まで持ち上げました。これには、獣人も手足をバタバタさせながら大声でわめくように叫んでいます。
そのとき、気を失っていたもう1人の獣人が再び立ち上がると、両手をポキポキと鳴らしながら敬太の後方へやってきました。
「うぐぐぐっ…。あのチビめ、このままただで済むとは思うなよ。この手で首を強く絞めれば…」
もう1人の獣人は、敬太の後ろから首を絞めようとタイミングを見計らっています。しかし、その動きを敬太はうすうすと感じているようです。
「敬太め、早くここから下ろしてくれ! 早く下ろしてくれ!」
「それじゃあ、獣人の言う通りに下ろしてやるぞ! え~いっ、それっ!」
「うわわっ! おれはこうやって下ろせといったわけでは…。わわわわっ!」
「こっちにくるな! こっちに…。うわわわああっ!」
敬太は、両手で真上に持ち上げている獣人を軽く空に浮かせるとその場からすぐに離れました。すると、誰の支えも無くなって落下した獣人は、真下にいるもう1人の獣人をも巻き添えにすると、2人もろともそのまま地面に倒れ込みました。
「よ~し! これでとどめを刺してやるぞ!」
敬太は獣人2人が倒れているのをみると、そばにある大きな木に手足を使いながらよじ登っています。そして、敬太は太い枝のところへ移ると、獣人2人が地面に横たわっているところへ目がけて飛び降りました。
「え~いっ! とりゃああっ!」
大きな木から飛び降りた敬太は、横たわって倒れている獣人たちに上から乗っかりながら押しつぶそうとします。しかし、これを見た獣人たちは痛みをこらえながら、何とかその場から身をかわしました。
一方、そのまま地面に着地した敬太ですが、さっきまでいた獣人たちはどこにも見当たりません。普通なら、獣人が鋭い目つきで敬太に襲いかかってくるはずです。
「あれっ? 獣人はここに倒れていたはずなのに、いったいどこに行ったんだ?」
敬太は、獣人が急に姿をくらましたことに戸惑っている様子です。しかし、獣人たちが姿を見せないのは、高く生い茂った草むらに潜むように隠れているからです。
その草むらに隠れている獣人たちは、すかさず何かを草むらの外へ放ちました。それは、敬太の命を脅かすあの猛毒の生物です。
「ふはははは! 敬太はあのマムシで一度ひん死の状態になったそうからなあ。次にもう一度マムシに噛まれたら、その場で命絶えることになるのは確実になるぞ」
「そうすれば、大権官におれたちの前に立ち塞がるあのチビを始末したという知らせを伝えることができるぞ」
獣人たちが放ったマムシ3匹は、敬太の両足に噛みついてひん死の状態にさせたあのマムシたちです。毒牙をむき出しにするマムシたちは、いずれも敬太の血のにおいがどういうものかすでに知り尽くしています。
「うわっ! 草むらから出てきたマムシがこっちにきたぞ!」
草むらから出てきたマムシは、敬太の足元を狙おうと地面を這いながら進んでいます。これを見た敬太は、すぐさま後ろにある大きな木を再びよじ登っていきました。しかし、マムシたちは狙った獲物を見逃すはずはありません。
そこへ、草むらに潜んでいた獣人たちが再び現れると、マムシたちに追われて木に登った敬太を見ながら不気味な笑い声を上げました。
「ふはははは! このマムシはおめえを噛みついたのをちゃんと覚えているからなあ。おめえがいるところだったら、大きな木にだって這いながら上ることができるぜ」
「もう1回噛まれれば、この場で命を落とすのは間違いないからなあ。ふはははは!」
獣人たちの手下として放ったマムシたちは、敬太がいる大きな木を登るように這い続けています。このまま大きな木の太い枝で敬太がとどまっても、いずれマムシの毒牙が襲ってくることは間違いありません。
しかし、敬太が倒すべき相手は真下にいる獣人たち2人です。その間にもマムシたちが迫ってくる中で、敬太は獣人たちの後方にある大きな木に目をつけました。
敬太は真正面から攻撃を仕掛けないで、獣人たちの後方から効果的な攻撃を食らわす方法を思いつきました。
「まずは、あの獣人たちをこの手でやっつけてやるぞ! とりゃああっ!」
「ふはははは! おれたちに攻撃してくるかと思ったけど、さすがの敬太もあのマムシにおじけついて…」
敬太は、獣人たちの後方にある大きな木に向かって飛び上がりました。これを見た獣人たちは、マムシが恐くて逃げようとしたのではと高らかに大笑いしました。しかし、その思い込みが後に大間違いであることを思い知ることになります。
その間に、敬太は獣人の後ろにある木の太い枝をつかむことができました。そこから、敬太は木の枝にぶら下がっている状態のままで持ち手の位置を変えると、そのまま自分の体を反転させました。
「獣人め、ぼくの強烈な蹴りがどんなものか見せてやるぞ! 行くぞ、そりゃあっ!」
敬太は両手で太い木の枝を握ると、勢いをつけながら自分の体を振り続けました。そして、敬太は木の枝から手を離すと、勢いの増した振り子のように強烈な蹴りが獣人たち2人の後頭部に直撃しました。
「ぐえっ! 後ろからいきなり攻撃しやがって…。ぐええええっ…」
「いきなり後ろ頭を思い切り蹴りおって…。いてててっ! いてええええっ!」
獣人たちは、いきなり敬太から後頭部を思い切り蹴られると、そのまま顔から地面に倒れ込んでしまいました。地面に倒れた獣人たちは、後頭部を蹴られたときのあまりの痛さに立ち上がることができません。
敬太は、うつ伏せで倒れ込んだ獣人の1人を仰向けに向きを変えると、獣人の両脇に足を挟むようにお尻から座り込みました。そして、敬太は獣人の後頭部に自分の左手を回して土台にしながら奥襟をつかむと、右手を使って獣人の首を強く絞めつける袖車絞めをかけ始めました。
「え~い! んぐぐぐぐぐっ! 獣人め、これでどうだ!」
「グエエッ…。息ができなくて苦しい…」
獣人は、敬太によって強く絞められて息をすることができません。これを見た敬太は、獣人に袖車絞めでとどめを刺そうとします。
「グエエエエッ、グエエエエエエエッ…」
「どうだ、ぼくの袖車絞めの威力はすごいだろ!」
敬太に首を強く絞められた獣人は、そのまま口から泡を吹いて気絶してしまいました。これを見たもう1人の獣人は、敬太のあまりの力強さにうろたえています。
すると、敬太は振り向きざまにもう1人の獣人を持ち上げると、後方へ思い切り投げ飛ばしました。獣人は敬太に投げ飛ばされると、なすすべもなくそのまま地面に叩きつけられました。
敬太は、獣人たちを立て続けに倒したのを見ながら堂々とした表情で立っています。
「獣人め、これでもまだぼくと戦うつもりか!」
「いててててっ…。このままただで済むとは思うなよ…」
「お、おぼえてろよ…。次に会ったときには、おめえをこの場で殺してマムシのエサにしてやるからな…」
獣人たちはこれ以上敬太と戦うのは不可能と判断すると、痛々しい体を引きずりながら恨みつらみを言い残して去って行きました。
獣人たちが去るのを見た敬太は、再び温泉のある所へむかって歩き始めました。
「おっかあ、ぼくがいないからかなり心配しているなあ…。急いでこの山を上らないといけないぞ」
「敬太くん、1人で獣人たちと戦っているみたいだけど本当に大丈夫かしら」
おせいは、岩場に座って津根吉におっぱいを飲ませながら、山の中で1人残した敬太のことをずっと心配しています。
すると、おせいの耳元に小さい男の子たちの歓声が上がりました。
「おっかあ、ぼくたちを温泉に連れて行ってくれてありがとう!」
「それっ、パシャパシャパシャ!」「パシャパシャパシャン!」
「やったな、今度はこっちからだ! パシャパシャパシャ!」
男の子たちは、温泉に入りながらお湯のかけあいっこをしています。この山奥には、岩場の大きな窪みの中に温泉が湧き出ているところが2か所あります。桑吉と津根吉を除く小さな男の子たち6人は、3人ずつに分かれて温泉の中に入っています。
温泉の中は、貫吉や扇助みたいな小さい子供でも両膝までの深さしかないので、男の子たちの様子を見るおせいにとっても安心です。男の子たちは、腹掛け1枚の格好のままでそのまま温泉に入っては楽しそうに遊んでいます。
「ふふふ、みんながこの温泉を喜んでくれるからうれしいわ」
おせいは、初めての温泉に男の子たちが無邪気に遊ぶ姿を見ながら目を細めています。そのとき、この山奥の温泉に向かって駆け上がってくる音が聞こえてきました。
「おっかあ、獣人たちはぼくがこの手でやっつけたよ!」
「無事にここへきてくれて、私もうれしいわ。さあ、敬太くんも早く温泉の中に入ってごらん」
敬太はおせいの顔を見ると、すぐに両腕の力こぶを見せながら獣人たちを撃退させたことを報告しました。これを見たおせいは、敬太がケガをしないで無事にここまでやってきたことにうれしさを隠せません。
しかし、敬太は急に両手でお尻を押さえると、そのまま岩場の手前にある草むらに入りました。草むらの中に入った敬太は、すぐさまその場でしゃがみ込みました。
すると、敬太らしい元気な音が草むらの中から聞こえてきました。
「プウッ! プウウウウッ! ププウウウウ~ッ!」
「敬太くん、もしかしてうんちがガマンできないのかな?」
「おっかあ、今からでっかいのがいっぱい出るようにがんばるよ! うう~んっ! うう~んっ! ううう~んんっ! うんっ! うううう~んんっ!」
草むらからは、敬太のでっかいおならの3連発が響き渡りました。おせいが声をかけると、敬太はでっかいうんちが出るようにがんばると元気な声で言いました。
そして、敬太はお尻に力を入れていきみ始めました。敬太は額に汗をにじませながら、ガマンしていたうんちが出るようにいきみ声を上げ続けています。
「みんな、草むらのほうへ早くきて! こんなにでっかいうんちがいっぱい出たぞ!」
敬太はうんちをし終えて立ち上がると、みんなを呼んで自分の出たばかりのうんちを見せようとします。敬太の声を聞いた男の子たちは、温泉から出るとすぐに敬太のいる草むらへやってきました。おせいも、津根吉を抱いて桑吉をおんぶしながらゆっくりとした足取りで歩いてきました。
「うわあっ! 敬太くん、こんなにでっかいうんちが出たの?」
「わ~い! 敬太くんのうんちだ! うんちだ!」「うんち! うんち!」
「でへへ、でっかい親イモをたくさん食べたおかげで、こんなに元気なうんちがいっぱい出たよ!」
草むらの中をのぞいてみると、敬太の足元にはでっかいとぐろ巻きの黄色いうんちがあります。どうやら、大きな親イモを昨日の晩ご飯と今日の朝ご飯にたくさん食べたおかげで、敬太はいつものように元気なうんちがたくさん出ました。
うんちが出て元気な笑顔を見せる敬太の姿に、男の子たちも大喜びです。おせいも、敬太のでっかいうんちを見ながら目を細めています。
「これだけでっかいうんちが出るのは、敬太くんがいつもお腹の調子がいい証拠だね」
「これからも大きなイモをたくさん食べて、元気なうんちが出るようにがんばるよ!」
大きな親イモは、敬太にとって毎日欠かさず食べる一番の大好物といえるものです。でっかいうんちを出すためにも、敬太は元気な声で大好物のイモをたくさん食べるとおせいの前で言いました。
すると、敬太はおせいの前で自分のお尻を見せました。敬太はいつも赤い腹掛け1枚だけなので、お尻が丸見えとなっています。
「ふふふ、敬太くんのお尻には元気なうんちがべっとりとついているわね。今から温泉のお湯でお尻を洗わないといけないわね」
「でへへ、温泉のお湯でお尻をちゃんと洗うからね!」
敬太は、温泉の手前にある岩場のところへ行きました。そして、敬太は温泉のお湯を左手ですくいながら、うんちで汚れたお尻をきれいに洗いました。
「おっかあ、お尻をちゃんと洗ったよ! これから温泉に入ってもいいかな?」
「みんなといっしょに温泉に入れば楽しいものね。敬太くん、早く温泉に入ってごらん」
敬太は、菜八たちがいる温泉の中へさっそく入りました。他の男の子たちと同様に、敬太は温泉に入るときも腹掛けをつけたままです。
「敬太くん、体のほうは温もったかな?」
「おっかあ、こんなに体がぽっかぽかに温もったよ! 温泉を探してくれて本当にありがとう!」
おせいは温泉に入っている敬太に声をかけると、敬太はその場で立ち上がって感謝の言葉を述べました。すると、敬太の後ろからお湯がパシャパシャかけられています。
「なっぱくん、よくもかけてくれたな! 今度はこっちからだ、パシャパシャ!」
「わわっ! 敬太くん、よくもやったな! それっ、パシャパシャパシャ!」
敬太は、男の子たちとお湯のかけあいっこをしながらはしゃいでします。そのときに見せる明るい笑顔は、農村で見かけるごく普通の男の子と変わりません。
獣人に対して凄まじい力を持つ敬太ですが、温泉に入りながら遊ぶその姿は7歳児らしい無邪気さそのものです。




