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車に轢かれてお嬢様になっちゃった  作者: 藤村 託時


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1.お嬢様になっちゃった

車に轢かれたっぽくてマジ最悪

「いやいや、そんな男と会いたくないんだけど」

「あなた変ですよ。言葉遣いも急にそんな汚くなってしまってどうしてしまったの」

「まぁ、いろいろあったの。とりあえずしばらくほっといてくれねーかな」

「今日はあなたの婚約者と顔合わせをすることが前から決まっているのよ。あなたのワガママで相手を追い返すわけにはいかないの」

「マジで知らねー」


 アタシは今どこかの令嬢らしい。

 なんでこんなことになったのかは正直アタシ自身よく分かんない。

 とりあえず昨日からの記憶を遡ってこうと思う。


~回想~


 昨日、いつも通り学校でめんどくさい授業を受け終わって、友達と一緒に帰っていた。


「いや、ミリムさすがにヤバすぎだって」

「フミこそだいぶヤバいからねそれ」

「どっちもヤバいってことでいんじゃない?」

「そんなこと言ってるユリも大概だからね」


 アタシはフミとユリと一緒にバカなこと話しながら帰り道を歩いていた。


「じゃあ、また明日―」

「ミリムの次の髪型楽しみにしてんねー」


 昨日は学校終わってから髪切る予約をしてたから、一旦家に帰った後美容室に行く予定だった。

 家までの帰り道、信号を何個か通らなければダメだった。

 信号を待ってる間、スマホでSNSを見て時間を潰した。

 信号が青になったのを見て再び歩き始めた。ただ、見ていた動画の続きが気になったからスマホを見ながら歩いてた。

 そしたら車が突っ込んできた。

 マジで不意打ちを食らった感じでそのままぶつかっちゃった。

 痛みを感じたのも一瞬、記憶はそこで途切れた。

 そこから、何時間経ったのか分かんないけどアタシは目を覚ました。

 見えたのはすっごい広い部屋、デカいベッド、知らないメイドさん。

 どういうことか全然分かんないに決まってるよねそんなん。

 でも、なんにも分かってない状態のアタシにメイドさんが話しかけてきた。


「お嬢様、早く朝の準備を済ませてくださいね。お着替えはこちらに用意してあります」

「アンタ誰? ってかここどこなの?」

「あなたはフィアナ・ルクレシア様でございます。ここはあなたのお部屋でございます。そんなことを聞いて急にどうしたのですか?」


 どんな冗談なんだって思った。

 フィアナルクなんとかっていう名前も聞いたことないし、アタシの部屋はこんな広くない。

 でも違和感があった。

 アタシの声が違う、あと胸がデカくなってる。


「ねぇ鏡ってどこにある?」

「姿見でしたらあちらにございます」


 姿見の前に立つ。

 そこには知らない水色の長い髪をした美人が映っていた。

 いや誰だよ。水色ってコスプレかよ、ヤバすぎるでしょ。

 うーんでも鏡に映ってるってことはアタシか⋯⋯、なわけなくない?


「今日のお嬢様はどこかおかしいですね。お身体の調子が悪かったりするのでしょうか?」

「身体の調子が悪いどころか全然別人になってるって話なんだけど」

「はぁ⋯⋯」


 全くついていけないけど、話が進みそうもないから朝の準備をメイドに促されるまま進めた。

 そして、着替えなどを済ませて別の部屋へ案内された。


~回想終わり~


 部屋へ入ると母親と名乗る女から今日は婚約者に会う日だとか言われて、今に至る。


「その婚約者、とは会って何するわけ?」

「今日はお茶会でもして仲を深めてください。お互いのことを理解することが大切なんですよ」

「なんか喋ればいいわけね。まぁそれくらいならいいけど」

「私、あなたのその話し方を聞いていたら頭が痛くなってきました。悪い霊でも憑いているのかしら。霊能力者でも探して見てもらおうかしらね」

「アタシも除霊でこの身体から出れるなら出たいところだけど」


 母親を名乗る女は頭を抑えながらアタシと会話をするのを辞めたみたいだ。

 アタシもこんな自分の母親を名乗る知らない女と話すこともないので、無言で用意されていた朝食を食べる。

 鶏肉っぽいのが普通に美味い。

 ご飯が美味しいのはとっても良いことなんだけど、味覚があるってことはやっぱり夢じゃないみたい。

 もしかしたら、アタシは車に轢かれて死んじゃった後、この身体で転生したみたいなことなのかな。いや、信じられるわけない。だけど信じなきゃどうにもならない現実がここにあるんだよね。

 ご飯を食べた後、すごい暇になった。

 なぜならここにはスマホがないから。

 いつもなら朝はスマホでSNSチェックして友達やインフルエンサーのアカウント見に行くんだけど、今のアタシはスマホを持ってないみたい。

 メイドさんにまずスマホの確認したけど、「スマホ?」と困惑した様子でスマホの存在がわかってないみたいだった。

 ってかスマホないと暇すぎるんだけど!

 やることないから広い家の中をうろうろ探索して時間を潰すことにした。

 室内を歩き回っても別に面白いことはなさそうだから、庭に出ることにした。

 玄関の扉を開けると、見える景色はまるでヨーロッパの豪邸かってくらい広い庭だった。とりあえず庭を一周しようと歩き出そうとした瞬間、後ろから息切らしてるメイドさんがアタシの肩を掴んできた。


「お嬢様、フェルベルト様がそろそろいらっしゃるので部屋にお戻りください」

「誰それ。さっき言ってた婚約者ってやつ? そんな早く来んの?」

「本当にどうしてしまったんですかお嬢様、言葉遣いが昨日までと全然違います。体調が良くないのであればお医者さんのところへお連れしますよ」

「いや、全然元気だからいいよ。じゃあ、家の中に戻ればいいのね」


 仕方ないから、家の中にまた戻ることになった。

 この世界にはショート動画もなさそうだから、何もすることない。

 ぼーっと天井や壁を眺めながら時間が経つのを待っていると、玄関から鐘の音が聞こえる。多分、婚約者とやらが来たみたい。

 何人かのメイドが玄関へ向かう。そして、母親がアタシの方を見ながらため息を付いた後、アタシに玄関へ一緒に行くよう声をかけてくる。

 もう今は流れに身を任せるしかないってことで母親に付いて玄関へと向かう。

 玄関の扉が開くと、メイドとともに茶髪のイケメンが中に入ってきた。

 イケメンに対して母親が挨拶をし、アタシも一応頭を下げて軽い挨拶をする。

 そしてまた部屋に戻り、ソファーに腰掛ける。


「フィアナと会うのは一ヶ月ぶりかな。こうやって話ができる時間は僕にとってとても貴重な時間だよ」

「あー⋯⋯、だよねー。アタシも嬉しー」

「フィアナ、その喋り方はどうしたんだい? 今までそんな話し方じゃなかったと思うんだけれど」

「なんかマイブームってやつ? こういう喋り方も悪くないかなーって」

「マイブーム? 合わない間に珍しい本でも読んだのかな。僕は前みたいな丁寧な話し方の方が君に合っていたと思うよ。君は上品で可憐な女性なのだから」

「うーん、見た目はめっちゃイケメンで彼氏にしたい感じなんだけどなぁ。全然話し合わなそーだし、つまんなそうかなー」

「フィアナ、口を慎みなさい! フェルベルト様に失礼ですよ!」

「はは⋯⋯、今日のフィアナはもしかしたら体調が悪いのかもしれないですね。これ以上会話したら身体に負担をかけてしまうかもしれないので、また体調が良くなったらお会いするということでいいですかね」

「そ、そうですね。一旦、この場はおしまいにしましょう。それでいいわねフィアナ」

「まー特に話すことないしそれでいいよ」


 母親とイケメンの婚約者はアタシから逃げるようにエントランスへ去っていった。なんだか分からないけど、アタシには全然合わない環境に来ちゃったみたいだ。

 生まれ変わりだとしたら、普通赤ちゃんから始まるはずだし今はアタシの霊がこの身体に入ったって感じなのかな。

 それだったら、入る身体くらい選ばせて欲しいなと思う。庶民のアタシがこんな貴族のとこに来ても無理に決まってるって話だ。

 婚約者の見送りが終わったのか母親がアタシのもとに戻ってきた。

 なんかいろいろと怒ってきたけど、聞き流して話が終わるのをただ待ち続けた。長い説教が終わった後、アタシは自分の部屋に戻された。

 部屋に戻った所でやっぱりやることはないから、ベッドに転がり込んで寝ることにした。

 メイドが稽古の時間がどうとか言ってきたが、無視して寝続けた。

 起きると夜になっていたので、ご飯を食べるためにリビングへと向かう。

 リビングにはテーブルに料理が置かれていて、険しい顔の母親が既に座っていた。めちゃくちゃ重い空気だったけど、お腹は空いていたので席に着きご飯を食べる。

 母親がアタシに向かってまた説教を始めたので適当な相槌を返しながら食事を続ける。

 せっかくの美味しい料理も説教を受けながらだと美味しさも半減してしまった。

 ご飯を食べ終わった後、テンションがだだ下がりの中歯磨きしてでっかい風呂に入ってまた寝る準備をする。


「お嬢様、明日は学校があります。さすがに学校へは行ってくださいね」

「あー、行く行く。じゃあおやすみー」


 どうせ家にいても暇だし、試しに学校へ行ってみるのも悪くない。

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