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まぁ、ちゃんと戦う戦国軍記 ~めざせ!御屋形様と経済勝利~  作者: 東木茶々丸
第二章 女当主の信濃侵攻 1549年夏~
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2-12-2 第五十九話 いざ出陣!

天文十九年六月十日 午前 場所:甲斐国 甲府 躑躅ヶ崎館


「それでは~、これより~出陣の儀を~取り計らいまする~」


 小笠原領への出陣式を取り仕切るのは、陰陽師の源与斎げんよさい[1]である。


甘利信忠「(やっと、始まったか……。もう皆が揃ってから半刻も経っているのに……)」


 初陣である信忠から、つい本音が漏れる。


内藤「(あの人は信虎の代から、《《ああ》》なんだよ。慣れておけ)」


 内藤は、ボソッと甘利に助言をする。


源与斎「では次に~三献の品を~持ってまいれ~」


 智の前に差し出されたのは、縁起ものである勝栗・アワビ・昆布の三品である。

それに合わせて酒と盃も差し出される。


源与斎「では、御屋形様~。勝栗を~口になさいませ~」


 そのまま智は、盃に注がれた酒と縁起もの三品を交互に口に入れる。

杯と器を空にすると、智はそのまま立ち上がる。


智「いよいよ、小笠原を滅ぼす時が来た。古き時代に溺れ、村上の腰巾着に成り下がった者どもに居場所は無い!」

虎昌「おうよ!」


 智の言葉に対して、勇ましい声を飯富が上げる。

智は、そのまま軍配ぐんばい[2]を持って号令をかける。


智「えぇい!えぇい!」

家臣一同「「「「おおおおおおおおおおおおおーーーー!」」」」」

智「出陣!」


 甲府の街中に武田家のときの声が鳴り響き続ける。

いよいよ出陣の時が来たのだ。


▼▼▼▼


 視点:京四郎Position

同時刻 甲府 富士屋


富士屋にも店員一同が集まっていた。


京四郎「今回の小笠原との戦、我々富士屋も同行することと相成った。」

律「随行者は、アタシ・一刀さん・まささんの四人でお願いします」

一刀・まさ「承知!」


京四郎「まささんには、諏訪と甲府間の輸送の管理をお願いしようと思っています」

まさ「わかりました」


律「京乃介さんと伝蔵さん、平次と達三郎さんは留守をお願いします」

京乃介・平次・達三郎・伝蔵「はい!」


 細々とした指示を出し終えると、四人は小荷駄隊を率いる内藤様と合流した。


 小荷駄隊は武田本隊の中でも最後尾に位置する。

京四郎(こう言ってはなんだが、いまいち緊張感が無いんだよなぁ……)


 時代劇とかのイメージとは異なり、兵たちは甲冑を着けて行軍をするわけでは無い。

言われてみれば、甲冑は重いし戦場に着く前に疲弊してしまっては仕方が無いだろう。

ましてや、甲府から諏訪までは完全に武田の領地である。


 武装する必要は、最低限で問題は無い。

問題は無い……のだが、小荷駄隊は特に戦う気概が感じられないのである。


京四郎「内藤様、小荷駄隊って戦うことはあるのですか?」

律「ちょっ、アンタねぇ……」


 内藤様に気を使ってか、律が言及をやめるように諭してくる。


内藤「いや、基本的には非戦闘部隊だ。護衛の者以外は徴用された人足にんそくだし、その武装は短刀くらいだ。」


 まぁ、でも確かにそうだ。

輸送部隊より戦闘部隊に武具を回した方がいい。


武将A「だが、まったく戦わない訳ではない。兵糧が無ければ戦えないのは、敵も味方も同じだ。」


 内藤様の脇にいた武将が口を挟む。


内藤「兄上、いちいち人の言葉を否定しないでください……」


 内藤様に兄貴がいたのか!

いつも気だるげにしている人だと思っていたが、この人も苦労人なのかもしれない。


内藤兄[3]「でも、間違いではないだろう?」

内藤「………………」


 内藤様は苦々しい顔をして、そのまま口をつぐんでしまった。


律「やっぱり、最低限は鍛えないとダメね?」

京四郎「うるさい。誰もが筋トレ好きではないんだぞ!」


 博士や矢神先輩が戦国時代に来たら、一年持たないと思う。

いや……一か月持たないかもしれない。


▲▲▲▲

六月十二日 信濃国 諏訪

 

二日かけて、諏訪に武田本隊は諏訪に入った。

馬場様の別動隊は既に塩崎辺りの砦に入り、林城南方の埴原はいばら城攻撃に取り掛かっているとのことだ。


 諏訪と言えば、諏訪の御寮人様が滞在している場所であるが、智様は特に会いに行くつもりは無いらしい。

その理由を内藤様に聞いてみた。

内藤「合戦が近くなると、女断ちをする男が多いのさぁ……。それに智様も習ったのだろう。あの方も律儀だからそういうことをなさる。」


 女性を穢れと考える人が普通にいるのがこの時代の常識らしい。

女人禁制の寺社とかのルーツに関わってくるのだろう。


律「アタシ、普通に一緒にいますけど……大丈夫ですか?」

内藤「律殿は男っぽいから大丈夫ですよ」

律(令和ならセクハラよ!今の言葉!)


 何も言葉を発しないが、アイツの怒りをひしひしと感じる。


内藤「ま、まぁ……甘利殿とか高坂殿とか、男がむしろ負けそうな女武者の面々もいる。気にすることは無い」

律「そういうものですかね……」


 どうやら少しは合点がいったようだ。


その後の話し合いで律とまささんは諏訪に残って、一刀さんとオレで馬場様への小荷駄隊に同行することになった。



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[1]源与斎:正式な名前は小笠原源与斎。名前がややこしくなるので意図的に名前のみにしています。武田家についての歴史書『甲陽軍鑑』に記録のある人物。

[2]軍配:戦の指揮に用いたうちわ形の道具のこと。今でも相撲の行司が用いる道具として知られている。

[3]内藤兄:工藤昌祐のこと。1522年生まれ。そろそろ登場人物紹介がパンパンになりそうなので、意図的にボカシています。


お読みいただきありがとうございます。


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