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まぁ、ちゃんと戦う戦国軍記 ~めざせ!御屋形様と経済勝利~  作者: 東木茶々丸
第二章 女当主の信濃侵攻 1549年夏~
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2-12-1 第五十八話 陣ぶれ

いよいよ武田五名臣最後の一人が登場です!

天文十九年六月上旬某日 午前 場所:甲斐国 甲府 躑躅ヶ崎館

視点:高坂昌信Position


智様「いよいよ、小笠原攻略の機が来た」

家臣一同「「「「おおーっ!」」」」


 智様の言葉に対して、部屋に集まった家臣たちから言葉が漏れる。


智様「すでに馬場率いる手勢が諏訪に入っている。長雨が止み次第、先に小笠原領に攻め込んでもらう」

信繁「板垣の一党には、そのまま諏訪で鈴岡の小笠原に備えてもらうことになる」


 板垣様も馬場様も武田家の序列では、上位の家柄である。


勘助「軍の編成は、これに記してある」


 勘助様は、陣ぶれが記された紙を中心に置き、その周りに円状に家臣が群がる。


内藤「今回の戦では俺は小荷駄こにだ奉行か。承知承知」


 小荷駄隊とは兵糧や軍事物資の運搬部隊のことである。

非戦闘部隊ではあるが、運搬量の計算などもしなければならず、重要な役目である。

京四……富士屋など商人との関わり合いが多いのも特色である。

う……うらやましい。


家臣A「なるほど……それがしは留守居役でございますか」


 今、声を上げたのは小畠おばた虎盛とらもり[1]様。

虎の字が示しているように武田信虎様の代からの家臣で、【鬼虎】として恐れられている。


 他にも穴山様や駒井様も留守居役となっている。

これは病の恵様との連絡など、今川との調整業務も担うのだろう。


小山田信有「お、俺も留守居役ではないか!久々の戦でひと暴れできると思っていたのだがなぁ!ガハハハッ!」


 小山田様……普段は北条への備えを担当しているせいか、あまりその姿を見ていなかったが少しやつれた様に見受けられる。


信繫「此度こたびが備えの戦力というだけだ。そなたの力は村上との戦いの場で振るってもらいたい」

信有「う、うむ。それならば仕方あるまい」


 それっぽい理由を信繫様が述べているが、戦列から外したのも理解できる。


家臣B「いよいよ……せ、拙者も初陣ですな……っ!」

浅利「おやおや、なんだか震えていませんか?合戦前から大丈夫ですか??」

家臣B「む、武者震いでございます!」


 浅利様に反応をからかわれていたのは甘利あまり 信忠のぶただ[2]様。

信忠さまの父は上田原の戦いで戦死されており、武田家の中でも由緒ある家柄だ。


 武田家の本隊として出陣するのは、

・一門衆 智様・信繫様・信廉様

譜代ふだい[3]衆 飯富虎昌様・飯富昌景様・甘利様・浅利様

・小荷駄奉行 内藤様

・足軽衆 多田様・勘助様・横田様・私(高坂) 等々……。


これに馬場様の部隊

・馬場様 秋山様・原虎胤様・諸角様・小山田虎満様 等々。


 そして留守を預かる方々

・穴山様 駒井様・小山田信有様 板垣様(諏訪)といった感じだ。


飯富虎昌「では、我らの出陣は……いつになりましょうや?」

智様「六月の十日じゃ。家中の者にしかと伝えよ!」

家臣一同「「「ははーっ!」」」


▼▼▼▼

午後 富士屋店内


智様「と、いうことで……よろしく頼む!」

京四郎「そういうことは、もっと早く言ってくださいよ……」

律「米や矢銭の徴収があったの、二・三ヶ月ほど前の話ですよ!てっきり戦わないつもりなのかと」


 予期した通り、二人からは非難ごうごうである。

そうだ!もっと言ってやってください、二人とも!


智様「だって……店に来たら、二人とも留守だって言うし~」

京四郎「あれは……諏訪の馬借衆との協議に行っていたのです!」

律「温泉施設の整備の進言は却下されるし……」


 恨めし気な顔で、律さんは智様の顔を見る。

それを受けて智様は、つい目をそらしてしまう。

ここは……私が助け舟を出してあげるか、


高坂「まあまあ、合戦にも向き不向きの時がございます。今は合戦の場において富士屋の力を必要としているのです」

智様「そーだ、そーだ!」

高坂(智様、ちょっと黙っててください)


律「アタシらの店が必要とされてるってのは、悪くないわね」

京四郎「烈風のごとき富士屋~、お呼びとあらば即参上!……ってね」


 二人がおだてに弱くて助かった。


京四郎「でも、俺たちが戦場に同行する必要はあるんですか?」

高坂「軍で抱えている分で足りるとは限らないので、そこは小荷駄奉行の内藤様との兼ね合いになると思います」

律(げーっ、また内藤様か……)


智様「分捕り品や捕虜の売買などもある。戦いが長期戦になれば陣での商売も欠かせぬ」


 京四郎殿と律さんは顔を見合わせてしばらく考え込んだ。

そして京四郎殿が口を開く、


京四郎「わかりました。この富士屋……

京四郎・律「「喜んで、ご助力させていただきます!」」


 二人は深々と頭を下げる。


智様「良かった良かった」


 智様も二人の言葉に満足げである。


早速、京四郎殿は手配のためか奥に入ってしまった。

智様もいそいそと帰り支度を始める。


智様「ああ、そうだ。アワビ、ちゃんと用意しておくのだぞ」

律「あ、アワビ!?」


 律さんは、紅葉のように顔を赤らめる。


高坂「ナニを想像しているのか知りませんが、縁起物の話ですよ?」



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[1]小畠虎盛:武田家家臣。武田五名臣・二十四将の一人。1491年生まれ。遠江の出身で父と共に武田家に仕官した。

[2]甘利信忠:武田家家臣。武田二十四将の一人。1534年生まれ。本来はこの頃の名乗りは昌忠ですが、後年の信忠に統一しています。

[3]譜代:代々大名に仕えている家柄の家臣のこと。


お読みいただきありがとうございます。

武者震いと聞いて、ピンとくる読者の方がいたら嬉しいです。

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