閑話 逃げられない諏訪家解説
例によって解説回です。
本編には関係ありませんので、ご了承ください。
令和XX年 西暦20XX年 場所:埼玉県さいたま市坂本宅
侑「さぁさ、寄ってらっしゃい!見てらっしゃい!紙芝居の時間だよ!」
坂本(また始まった……)
この解説大好き娘は、定期的に説明しないと気が済まないのだ……。
付き合いの長い坂本は、嫌な慣れ方をしている。
侑「ちゃんと今日のおやつも用意してありますから」
坂本の前に出されたのは……ショートケーキである。
坂本「ついに、埼玉ネタも尽きたのか?」
もうお菓子名とかじゃなくて、ケーキというくくりだからね。
雑すぎない!?
侑「おや、知らないのですか?ショートケーキの消費額が一番多い市町村は、さいたま市ですよ【2023年度のデータによる】」
坂本(名産とかじゃなくてもいいの!?)
侑「さて、今日のお題は諏訪氏です」
坂本「その名の通り、諏訪湖の辺りを治めてたんじゃないの?」
侑「ええ、諏訪氏は元々諏訪大社の大祝の家柄です」
坂本「大祝って?」
侑「神職の一つだと思ってください」
坂本「ふ~ん」
真田は、紙芝居をスライドしながら説明をする。
坂本(というか、段々とローテクになって行ってないか??)
坂本は、ツッコミをしようかと思ったが、解説がより長くなりそうなのでやめた。
坂本「でも、神官の家柄が領主として力を持つって珍しいんじゃない?」
侑「他にも例はありますよ。有名なのは阿蘇神社[1]の阿蘇氏ですね」
坂本(言われてもピンと来ない気もするけれど……)
侑「諏訪氏のルーツの中で、一番最初に上がるのが諏訪 盛澄[1]です。彼は京で平家に従事していましたが、流鏑馬の腕前に優れていたので助命されたと伝わります」
坂本「騎馬の技術に(モグ)長けていた(モグモグ)という点では武田に似ているな(モグモグモグ)」
坂本はケーキを食べつつ、話を続ける。
さすがにケーキは、聞きながら食べるのには不向きだったかも、と真田は後悔した。
侑「諏訪明神は武士から信仰の対象であったこともあり、鎌倉幕府では内管領[2]として幕府の要職に就きました」
坂本「ほうほう」
侑「やがて鎌倉幕府が滅びると、これに諏訪氏もその多くが殉じます。そして北条氏の遺児である時行[3]が諏訪家の頼重[4]の下に逃れて、その後に中先代の乱[5]を起こすのです」
坂本「あ、某週刊マンガのヤツじゃん!」
侑「そうです。あのマンガの話につながってくるのです。そして信濃に諏訪に対抗するために派遣されてきたのが小笠原氏なのです」
坂本「そこも室町の頃からの因縁なのね……」
侑「そして時は戦国時代、諏訪氏は北条早雲の甲斐侵攻に乗じて挟撃に加わります」
坂本「出た出た、ソウウン出た!」
侑「小競り合いを繰り返していたようですが、信玄の父、武田信虎により攻め込まれてしまいます。時の当主頼重[6]は信虎の娘を嫁に迎えることで和平を結ばされます」
坂本「信虎パッパ、こういうところでも出てくるね~」
侑「そして頼重と信虎の娘の間に産まれたのが、諏訪御寮人。後の信玄の側室にして武田家最後の当主の勝頼の母となる人物なのです」
坂本「諏訪頼重って当主の時に限って、諏訪家ピンチじゃない。呪われた名前なんじゃないの!?」
坂本は興奮して立ち上がる。
侑「そこまでヒートアップしなくていいですよ!」
坂本「いや……、座って聞くのに疲れて……《《すわ》》だけに」
侑「………………」
坂本「せめてリアクションして!寒いっ!とかでいいから!」
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[1]阿蘇神社:熊本県阿蘇市にある神社。阿蘇山の北の麓にある。
[2]諏訪盛澄:平安末期の諏訪神社の神官・武士。金刺盛澄とも。
[3]内管領:執権北条氏に仕えた武士の筆頭。
[4]北条時行:執権北条氏の遺児。逃げるのが得意……かもしれない。
[5]諏訪頼重:南北朝時代の武将。たぶん未来は見ることが出来ない……はず。
[6]中先代の乱:諏訪頼重が起こした反乱。一時は鎌倉を占領することに成功した。
[7]諏訪頼重:戦国時代の武将。諏訪氏の第19代当主。信虎を追放した武田晴信に攻め込まれ、1542年自害を命じられた。
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