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まぁ、ちゃんと戦う戦国軍記 ~めざせ!御屋形様と経済勝利~  作者: 東木茶々丸
第一章 甲斐と合戦と御用商人 
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1-2-3 第十七話 どんな時代にも女好きはいる。

天文十八年四月中旬 昼  場所:甲斐国東部 都留つる郡[1] 谷村やむら城[2]


小山田信有「聞いたか、小林屋~?竹屋改め富士屋とやらが、そちの店に対して競馬きそいうまの勝負を願い出ておるとか」

小林刑部左衛門こばやしぎょうぶざえもん[3]「ええ、聞きました。急な申し出で驚きましたが……」


 この小林刑部左衛門、商人として伝馬役を担う一方で、小山田家との付き合いも長く、その権勢の下で勢力を伸ばしつつある人物だった。


小山田「どうだ、勝てそうか?」

小林「あっしどもの店が、急にどこからとやって来た素人に負けるはずはありませぬ」

小山田「その言葉を待っておったぞ!」


 信有はグイっと、盃を飲み干す。


信有「だが、念には念を入れておいた方がいいな。よしっ、うちの家中で預かっている馬を一旦返そう」

小林「えっ、よろしいのですか?」

信有「そうだ。あの白駿はくしゅん号で蹴散らしてしまえ」

「殿~、今日はご機嫌よろしゅうございますなぁ~」


 女がおかわりの酒を持ってきた。

どうやら密談は、お開きのようだ。

小林は立ち去ろうとして、ふと口を開く。


小林「そういえば、最近素性の知れぬ者が辺りを嗅ぎまわっているようです」

小山田「富士屋の連中か?」

小林「いえ、連中がそれほどの人員を抱えているとは思えませぬが、お気を付けを……」

小山田「ふん!」


 信有は、それ以上考えるのはやめて、今は女と夜を明かしたいようだ。


▼▼▼▼

天文十八年四月下旬某日 午後 甲斐国 甲府 富士屋

視点:京四郎 Position


 こちらの世界に来てからは、筋トレをしている。


 律と一緒に走り込みと、腹筋、スクワット。

物の販売は定期市の時だけなので、手隙の時間の有効活用である。

そしてなにせ、修羅の時代だ。いざ逃げないといけない時に、足をつってしまったら話にならない。


 もっとも、律はご不満らしい。

真剣を振り回すわけにもいかないし、竹刀もない。

木刀なら用意できなくも無いが、通信販売も無いご時世では、物一つ手に入れるのも楽ではないのだ。


 辺りをひとっ走りして店に戻ってきた。

履物を見る限りどうやら律は先に戻っているらしい。


京四郎「おっ、先に戻ってたのか……って、ウオッ……!」

律「き、キャー!いきなり入ってこないでよ!」


 どうやら水浴びした後の着替えをしていたらしい。

衝立ついたての裏に律は慌てて隠れる。

その後を、まささんが追いかける。


京四郎「いや、これは事故だからなっ……事故!」

まさ「律さんは、ふんどしを着けることに慣れてないみたいで……少し手伝っているんですよ」


 ふ、ふんどし……!いくら何でもニッチすぎないか!

令和ではお祭りくらいでしか着ける人はいないぞ。

まぁ、かくいう俺も達五郎さんに聞いて着けているわけだが……

とにかく慣れない。


律「海女さんは普通に着けるでしょ、それと同じ!」

まさ「人によっては着けない人もいますよ。」


 つ、着けない……何も!?

……うん、考えないようにしよう。思春期真っ盛りモードになってしまう。


「富士屋のご主人は、おられるか!」


 原さんからの使者が到着したのは、その時である。


使者「こちら、原様からの書状にございます」


 頭を切り替えて、使者から書状を受け取った。

そのまま使者は立ち去った。

書状には横田さんが用意した乗り手が、秋山信友あきやまのぶとも[4]という人に決まったとのことだ。


律「秋山信友!?うそっ!会いたい~」


 着替え終えていた律が、書状をひったくってラブレターを貰ったかのように浮かれている。


京四郎「有名なのか?」

律「ええ、武田の猛牛と恐れられた武田二十四将の一人よ。落城させた城主の奥方を自分の妻にしてしまった人なの」


 なにそれ、[5]の曹丕そうひ[6]かな?

どこの時代にも女好きっているもんだな。


京四郎「さて、これで作れそうだな」

まさ「作るって何をです?」

京四郎「興行主と場所と敵、あとは何が足りないと思う?」


律「え、えーっと……」

京四郎「ブブーッ✕。不正解!」

律「まだ何も答えていないじゃない!」


京四郎「正解は観客だ。この競馬には目的が三つある。

一、武田の家中に富士屋の実力と名を知らしめること。

二、小林屋の実力を見せ、小山田の買いたたきが不当だと知らしめること。

三、富士屋の存在を甲斐の人々にアピールすることだ。」


まさ「あ、あぴいる?」

京四郎「そうだ。富士屋の魅力であの店に依頼しようと思わせるんだ」


▼▼▼▼

 数日後、甲府をはじめとする甲斐の町に看板が建てられた。

富士屋と小林屋が競馬にて勝負を行なうこと。

そして馬の名前とその乗り手が記されていた。


 韮崎馬場 直線1500m 甲州杯の開催まで、あと二十日あまり……

皐月の祭典はそう遠くない。



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[1]都留郡:甲斐の東部の地区。今の都留市や大月市、富士吉田市など。

[2]谷村城:小山田氏の居城。例によって城といっているが、館である。

[3]小林刑部左衛門:今の富士吉田市辺りを支配していた土豪。実在人物。

[4]秋山信友:武田家家臣。最近では虎繁の方が正しいとされるが、作者が信友の方が馴染み深いので、こちらで表記しています。

[5]魏:中国、三国時代の最大勢力。卑弥呼が金印を送った王朝。

[6]曹丕:魏の初代皇帝。曹操の息子。やたら性格の悪い逸話ばかり残っている。




お読みいただきありがとうございます。

相変わらず、話の時間経過がまったく進んでいない気がする?

が、頑張ります……

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